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108話

 更衣室へ入り、着替えを済ませたユリアーネは、一歩退いて眺めるアニーに問いかける。

  

「どう、ですか?」


 緑やグレーを基調としたアニーとは違い、赤いボディスや、花柄のロングスカートと黒いエプロン。そしてピンクの紐など、より華やかなもの。もっと落ち着いた色がよかった、と着ている最中から思っていた。


 全体像を目に焼き付け、想像以上という喜びの笑顔を見せたアニーだが、次第に表情が曇っていく。


 その仕草に、ユリアーネは戸惑う。


「?」

 

「……やっぱりテオさんに見せたくないっス……!」


 とてもどうでもいいことで悩んでいた。もう着てしまったからには、これでいくしかない。吹っ切れてはいないが、ユリアーネはアニーの手を取る。


「もうなんでもいいです。行きましょう」


 自分から勧めておいて、やっぱりやめましょうと言えないし、でもやっぱり可愛いし、の間で揺れるアニーは、


「あ、あ……」


 と、声を絞り出すだけで精一杯になる。力無く、ユリアーネに引っ張られる。


 そしてそのまま二人はホールで接客へ。


「こんにちは。ご注文をどうぞ」


 明るく接客をするユリアーネを見て、アニーは複雑な気持ちになる。自分だけに留めておきたい、でもみんなに見てもらいたいという二律背反。


「アニーちゃん、これよろしく。あっちのテーブルね」


「……はいっス」


 キッチンカウンターに、テオが次々と料理を置く。昼食が一番忙しいため、ここが踏ん張りどころだ。


 それを魂の抜けたアニーが運んでいく。少し歩き方もフラフラとしている。


 そんなアニーを尻目に、ユリアーネは常連客達と会話。今日も初めて見る子ということもあってか、珍しげに声をかけられた。

 

「お嬢ちゃんもヘルプで来たのかい? あっちの子と一緒?」


 あっち、とはアニーのこと。


「はい、今日は混むと思ったので。みなさん、お優しいんですね」


 ユリアーネは全体を見回しながら、この場にいる、むしろこの村全体を範囲として会話をする。


 六〇代くらいの常連客の男性も、全てわかっている。少し、涙ぐむ。


「まぁ、この店には色々と助けられてるからね。料理もそうだし、憩いの場として。ケンカした兄弟の逃げ場所、宿題をやる勉強部屋、仮眠場。ないと成り立たないね」


 この店ができる前は、もう少し色んな店があったが、時代とともに廃れていった。それゆえに、生活に不便を感じていた。ここが最後の砦。生まれ育った村を、彼は出て行きたくない。

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