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102話

 それを言われると、たしかにやり過ぎた感はあったため、今回はアニーは自分から折れることにした。


「じゃあヒントだけです。『優しいコーヒー』!」


「優しい? テイラーズコーヒーとかですか?」


「……」


 ユリアーネに即答され、アニーは不貞腐れる。そしてそのままベッドにダイブ。顔を見られたくない。


「……明日もあるので寝るっス」


 うつ伏せで目を瞑る。ユリアーネさんなんか知らない、とジタバタと手足が暴れる。


「拗ねないでください」


 冷静にユリアーネはアニーを嗜める。自分でもまさか一発で当たるとは、と少し驚き。まぁ、優しいと言えば胃だし、そんなコーヒーといえばテイラーズコーヒー。遅かれ早かれたどり着いていた。


「みんな厳しいっス。ディアンドルもなんか胸元スカスカだし、結び目もよくわからないし」


 その不満の捌け口をどうしたらいいのか迷ったアニーは、とりあえずディアンドルのせいにしてみた。本当のことを言うと、予想ではもっとセクシーになるはずだったが、なんか自分が着ると違った。さらに結び目にも騙された。今日は厄日。


 そこで出た単語にユリアーネは興味を持つ。ベッドでアニーの傍らに座り、話を聞く。なにやら珍しいことになっているようだ。


「ディアンドル、ですか。オクトバーフェストみたいですね。でも、なんで着ることに?」


 たしかに元は給仕係の女性が着ていたものなので、おかしくはないが、最近はイベントくらいでしか見ない。少し興味がある。


 その質問にアニーは、まだ機嫌が治らないまま答えた。

 

「なんでも、ディアンドルを新しく作ったので、ついでにいくつか新調したそうです。みなさん、なにかニヤニヤしてましたけど、誰も教えてくれないんです」


 ひどいっス、とレモンでも口の中に放り込まれたかのような厳しい表情を浮かべる。


 しかし、ユリアーネのほうはなにか思い当たるものがあるのか、思案に耽る。


「ディアンドルを新調……」


 そして今回のヘルプ。もしや、とひとつの答えに、仮にだがたどり着く。


「たしか、スタッフの方が体調不良で今回アニーさんが呼ばれたんですよね?」


 一度、理由を確認。少しずつ見えてきた全貌。


 表情は崩さず、アニーは肯定する。

 

「そうっス。みなさんいい人達でしたよ。チップも多くくれましたし」


「チップ……」


 やはりそういうことか、とユリアーネは確信を得た。むしろ、ここまでやってその場にいたアニーはなぜ気づかない、と不思議に思うほど。


「……なるほど。明日は私も行ったほうがよさそうですね」


「!」


 おそらくこの答えが合っていれば、小さな村ならばある程度広まっているはず。そしてそうなると、人手が足りないかもしれない。そうユリアーネは考えた。


「明日は忙しくなるかもしれません。いや、たぶん集落の連絡網ですから、間違いないでしょう」


 ぽてっ、とアニーの横に仰向けで寝転ぶ。うつ伏せで横を向いたアニーと目が合う。すると、その目が輝いていることに気づいた。

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