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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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500.リベンジ

500.リベンジ






ジョーと別れて、直ぐに自宅へ帰ってきた。


「ただいまー」

「おかえり。ジョーに勝った?」「おかえりなさい、アルド」「アルド君、怪我は無い?」


「何とか11戦7勝で勝ち越しだったよ」

「勝ったなら良い。もし負けてたら、ボクがリベンジに行くつもりだった」


何言ってるんですか、アシェラさん。今回の事は修行の成果を確認するためで……アナタがリベンジしても意味なんか無いですよね?


「ハハ……リベンジは大丈夫だよ、アシェラ」


笑いながら話すオレを、3人は驚きと嬉しさが混ざったような顔で見つめている。


「どうした? 3人共」

「ううん、アルドが楽しそうで嬉しくなっただけ」「吹っ切れたようですね。私には戦いの事は分かりませんが、その顔を見れば何かに折り合いを付けられたのは分かります」「アルド君……私はアルド君が幸せなら、それだけで良い……」


どうやらオレの顔は、出かける前と随分 違うらしい。

あまり実感は無いものの、ジョーとの会話を経て心が軽くなったのは確かだ。


改めて心配をかけた事を謝り、何があったかを話していった。


「模擬戦の後、ジョーから言われたのは………………」


一通り説明を終えた後、3人へ少し無茶なお願いをしてみた。


「3人共、頼みがあるんだ。今日から少しの間、1人で寝かせてくれないかな?」

「何で?」


「ジョーとの話で、一応 心の整理は付けられたと思う……ただ、アイツはそれでも夢の中に出てくるはずだ。オレはもう一度、アイツと向き合う必要がある……例え夢の中だとしても、真正面から対峙したい……出来れば倒したいんだ!」


夢の中でもう一度 主と戦って倒す……傍から見れば全く意味の無い行為に見えるだろう。

現に話しているオレですら、「アホの子?」と思っているのだから。


これは完全にオレの独りよがり。考えが迷走しているのも自覚している。

しかし、勝てないとしても、アイツに一矢でも……そうしないと、オレの心は前に進めないように思えるのだ。


「ごめん……自分でも意味が分からないと思ってる……ただ、このままやられっぱなしじゃオレは真っ直ぐ立てない気がするんだ……」


3人はお互いに顔を見合わせてから、何かに納得したように頷いた。


「分かった。ボクはアルドの気持ちが何となく分かる。でもやるからには絶対に勝つ!」「無理はしないと約束してくれますか? であれば私は何も言いません」「アルド君……」


「無理はしない。ありがとな、オリビア。絶対とは言えないが、勝てるように頑張ってみるよ」


こうして3人の嫁から了承をもらい、今日から暫くの間、1人で眠る事に決まったのであった。


寝る準備を整え、いざ勝負! と意気込んではみたものの、やはり恐怖が心の底から滲むように沸き出してくる。


「自分で言った事だろう……しっかりしろよ、オレ」


そうして震える体を気合で押さえつけ、ベッドに潜り込んだのだった。



◇◇◇



「グルルルゥゥゥ……」


最近 寝不足だったためか、眠りは驚くほど早くやってきた。気が付けば1人 見知らぬ草原の真ん中に立っている。

そして遠くに1匹のコボルトの姿が……主。これは夢なんだろう。これだけハッキリ意識あるのは明晰夢ってヤツか……


改めて見るヤツに対する感情は「怖い」である……アシェラ達に啖呵を切ったものの、オレの足は震え恐怖で体が上手く動かない。


「それでも……」


一言呟き、先輩の言葉を思い出す……ジョーは言った。どんなにみっともなくても、前に歩き出す事だけが事態を乗り越える鍵だと。

だったら……


逃げ出したくなる心を殴りつけ、震える足で1歩を踏み出した。


「オレは……負けたくない……自分の心にだけは絶対に負けられない!」


気合を声に出し、ゆっくりと腰の短剣に手を伸ばす……ん? あれ?

慌てて自分の恰好を見てみれば、何故か寝間着のままであり、短剣はおろかドラゴンアーマーさえ身に付けていなかった。


「え? マジ? もしかして、これってそーゆールールなの?」


間の抜けた声と同時に、コボルトの主は嫌らしい笑みを浮かべてゆっくりとと近づいてくる。


「ちょっ、ちょっと待って! これは間違いって言うか……やり直したいって言うか……」


しかし、夢の中であっても、ヤツに言葉など通じるはずも無く……


「あー、詰んだわ、コレ……」


憐れオレは、あっけなくコボルトの主の拳に沈んだのであった。



◇◇◇



「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


夜中に叫び声と共に飛び起きれば、アシェラ、オリビア、ライラが心配そうな顔で抱き締めてくる。


「アルド! 大丈夫……もう大丈夫だから……」

「ハァハァ……アシェラ……」


オレはあれだけ大口を叩き、あまりにもアッサリやられた事へ、言い訳を始めた。


「ち、違うんだ……夢の中でのオレは丸腰で………………」


夢の中での出来事を話していく内に、アシェラ達の顔から徐々に表情が消えていく。


「………………って事で主に手も足も出なかった」


寝間着姿で主と対峙した……想像すらしなかったアホな話に、3人はどう反応して良いのか分からないようだ。

確かにオレの症状はPTSDに近く、深刻な状況にあるのだろう。


しかし主に丸腰……まるで高尚な物語の中、唐突にギャグが入り込んだような不真面目さが漂っている。


「アシェラ、オリビア、ライラ、もう一回行ってくる! 今度はちゃんとフル装備で! 絶対に勝って来る! 安心してくれ!」

「うん……」「はい……」「アルド君……」


オレの熱の籠った言葉に、3人の微妙な返事が返ってくるのであった。



◇◇◇



背中の部分は未だに壊れたままではあるが、ドラゴンアーマーを着こみフル装備でベッドに潜り込んだ。

先ずはアイツの動きに慣れないと……どう戦うかと考えていると、何時の間にか意識は闇の中に落ちていた。


ここは……今度は森の中か……言葉の通り、気が付けば木が鬱蒼と茂る森の中で主と対峙している。

この状況を考えれば、無事に夢の中へ入れたのだろう。


であれば先ずは装備を……良かった。今度はドラゴンアーマーも短剣もある……これなら!


「テメェ、さっきはよくもやってくれたな……アシェラ達にアホの子と思われただろうが! キッチリ、その礼も返してやる!」


大口を叩くがオレの足は震えており、正直 悪態でも吐かなければ逃げ出しそうである。

しかし、目の前には主が憎しみの籠った目で立っているわけで……オレは震える体に鞭を入れ、短剣を抜いたのであった。


先ずはコイツの動きに付いていかないと……勝つどころか勝負にすらならない。

何があっても直ぐに反応できるよう猫足で立ちつつ、程よい緊張感で主の動きに集中する。


コイツは間違い無くオレより速い……バーニアを使うタイミングが一瞬でも遅れれば、即 終わりだ。

ヤツはワザと焦らすように歩いて来る……あの時も、この速度差に騙された。コイツは意識してやってるわけじゃないはずだ。


しかし、天性の物か偶然か。動きの緩急が絶妙にやりにくい。

そんなオレの葛藤を無視するように、ヤツは更に近づいてくる……そして10メードを切った瞬間、ヤツの姿がブレた。


咄嗟にバーニアを吹かして左へ避けると、ヤツは数舜前までオレがいた場所を殴りつけ、手応えの無さに驚いている。

仕切り直し……そこからは、主の動きを見切る事だけに全力を傾ける事にした。


全ての攻撃を必死に躱し、短剣で受け流す。疲れのため、徐々に被弾が増え始めると同時に、オレの中にある1つの考えが浮かんでくる。

コイツ、真っ直ぐに突っ込んでくるだけなのか? 何の駆け引きも無く、全力の拳を振るうだけじゃないか……


付け入る隙は数え切れないほどある……しかし速さに膂力、全てが格上の相手に、立ち回りだけで勝てるほど甘くは無かった。

徐々に追い込まれて、最終的には主の拳の前に屈したのである。


「くぅっ!」


ベッドから飛び起きたオレの前には、まだ暗い闇が広がっていた。アシェラ達がいない事から、今回はうなされなかったのか……


「アイツは力任せで動いているだけだった。あれなら何度か挑めば隙を付けるはずだ」


今、オレの胸に湧いてくるのは、「以前の戦いでも、落ち着けば逃げるだけなら何とかなったんじゃ?」と言う思いだ。

魔瘴石の寿命に上位種の脅威があって、焦っていたのは間違いない。ただ、あと少し冷静に対処していれば……あそこまで追い込まれる事は無かったように思う。


「この辺りも課題だな……いっそ全ての魔力を使った技を封印して、依頼でも受けてみるか。そうすれば追い詰められた際の訓練になるかもな……結局、色々な技を開発して ここまで来たが、取り落としてきた物も沢山あるって事なんだよな……また頼りになる先輩……ジョーに頼んでみるかな」


こうしてオレは、都度 立ち回りを修正しつつ、コボルトの主と夢の中で戦い続けたのであった。



◇◇◇



夢の中での戦いを始めて3日が経っ頃。今も、もう何度戦ったか分からない主と向かい合っている。


「お前の動きは、この3日間で見切らせてもらった……今日こそ勝たせてもらうぞ!」


最初に感じた通り、主の動きは至って単純……真っ直ぐに動くだけ。全ての攻撃を全力で行い、闇雲に拳を振るう非常に拙い戦い方である。


「流し!」


真っ直ぐに振り抜かれる拳へ短剣術の「流し」を使い、流れる体を捌きながら脇腹へ左手の短剣を突き入れてやった。


ガァァァ!


コイツは痛みにも慣れてない……今のお前に、傷口を見てる余裕があるのか?

更に追撃するべく右の短剣を振り切ると、驚くほど簡単にヤツの右腕が宙を舞った。


ガァァ! ガァァァ!!


今のコイツの右腕は肩から下10センドほどしか残っておらず、真っ赤な血を滴らせながら叫び声を上げている。

その姿は初めての痛みに、子供が母親を探して泣き叫んでいるのかのようだ。


幾ら魔物とは言えこれは……例え殺される寸前まで追い詰められたとは言え、これ以上はリンチと変わらない。


「結果的にだが、お前には世話になったよ……心の持ちようから技の重要性、オレに足りない物を沢山教えてもらった」


右手に魔力武器(片手剣)を出し、左手には魔力武器(短剣:超振動)を起動していく。

ヒィィィィィィィィンと短剣が鳴き出したと同時に、片手剣を振り上げ主目掛けてバーニアを吹かした。


主は目に恐怖を浮かべて、逃げようとしている……行かせるわけが無いだろ! これで決めさせてもらう!

更に追加のバーニアを吹かし、片手剣を上段から振り下ろす。


しかし流石は主。圧倒的な運動能力を発揮し、残った左腕で片手剣を受け止めるつもりのようだ。

恐らく魔力を纏って防御を上げているんだろう……惜しかったな、それは「騙し」だ。


振り下ろす片手剣を途中で消すと同時に、主目掛けてバーニアを一瞬だけ吹かす。


ガ、ァァァ…………


絞り出すような声を上げる主の胸には、超振動を発動した短剣が深々と刺さっている。


「これで、終わりだ!」


そのまま一気に短剣を振り抜くと、内臓がビチャビチャと酷く有機的な音を立て零れ落ちていく。

うぷっ……オレ、グロ耐性無いのに……直ぐに口を押えて距離をとった。


ヒュー、ヒュー。


蚊の鳴くような息を吐いていたヤツの目から徐々に光が消えていく……完全に光が消えたと同時に、オレの意識は現実の世界へ帰還したのであった。





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