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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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489.コボルト part3

489.コボルト part3






エルと相談してコボルトの巣を攻めると決めてから、もう1発コンデンスレイを叩き込んでやった。

今回の脅威は主では無く、上位種の数の暴力。一番の懸念である上位種を減らすため、巣の中心を円で囲うように撃ち込んだ。


その後は直ぐに巣から距離を取り、魔力の回復と体力の温存のために休息を取ったのである。

そして夜が明け、いよいよマナスポットを解放するべく、今は朝食を摂りながら最後の作戦会議を行っている所だ。


「最後の確認をするぞ」

「はい」「うん」


「先ずは昨日もコンデンスレイを撃った丘に、魔瘴石を使って領域を作る。そしたら直ぐにオレとエルで再度 狙撃だ。ここまでは良いか?」

「はい。僕が巣の左側で、兄さまが右側ですよね?」


「ああ、そうだ。オレ達はコンデンスレイ4発で魔力酔いになる……3発撃てば兆候が出てくるはずだ。念のため、撃つのは2発。残りの魔力は全て、コボルトとの戦闘に注ぐ」

「分かりました。最初の1発で外縁部を。次の2発目で内部をジグザグに撃とうと思います。たぶん、それが一番効果的じゃないかと」


確かにエルの言う通り、最初に外縁部にコンデンスレイを撃って逃げられなくして、内部にトドメの一撃。

きっとコボルトの蒸し焼きが嫌になるほど出来上がるだろう。


その炎の海の中で生き残るには、単純なタフさ。恐らく上位種でもより強い者が生き残るはずだ。


「後は火の勢いが落ち着いてから改めて突っ込もう。そうじゃないとオレ達まで蒸し焼きだ」

「でも領域は1時間しか持たないんですよね? そんな余裕があるんですか?」


「うーん……そうか……でも安全マージンは確実に欲しいし……じゃあコンデンスレイを撃って10分だけ待とう。ここは草原で風もあるからな。コンデンスレイの直接の余波だけは絶対に避けたいんだ。ヘタすると、何千度もある空気をまともに食らう事になる。その後、「守りの壁」を張って突っ込もう」

「分かりました。僕達の許される時間は50……いえ、逃げる時間も合わせれば40分ですか」


「ああ。40分以内に主を倒せないようなら撤退する。最悪は領域を使ってブルーリングまで逃げるぞ」

「はい!」


「カズイさんは申し訳ありませんが、魔瘴石がある場所を守ってもらって良いですか? 魔力を回復するにも逃げ帰るにしても、あの領域が僕達の命綱ですから」

「わ、分かったよ。ぼ、僕の命に代えても魔瘴石は守ってみせる!」


「いえ……流石に命の危険を感じるようなら逃げてください……約束ですよ?」 


そこからもお互いに、細かい作戦を詰めていった。


「あんまり細かく決めても身動きが取れなくなる。後は臨機応変にいこう」

「はい」「が、頑張るよ」


こうしてオレ達はコボルトの巣を本気で攻めるべく、空へ駆け上がっていったのである。



◇◇◇



巣を攻めるに当たって、先ずは領域を作らないと話にならない。早速、狙撃の恒例となっている丘へ向かうと、何故か無数のコボルトの姿が見える。


「あー、同じ場所から2回も狙撃したからなぁ……流石に見つかったかぁ……」

「コンデンスレイの光は極細でも強く光りますから、狙撃場所が分かったんですね」

「あれだけの数のコボルトがいれば、どれかに見られてるのはしょうがなくない?」


「ちょっと局所ソナーで群れの規模を調べてみます」


そう話して、コボルトの群れへ局所ソナーを打ってみる……5、10……30匹って所か……ただ上位種が2匹いるな。


「コボルトは全部で30。ただ上位種が2匹いる。オレが倒してくるから待っててくれ」


そう言って、群れに吶喊しようとした所でカズイが声をあげた。


「ちょっ、ちょっと待って! ぼ、僕がやるよ……僕だって昔とは違うんだ。コボルトの10匹や20匹、何とかしてみせる! これからアルドやエルファス君は主との戦闘が控えてるんだから、露払いぐらい僕が何とかしてみせないと!」


こう話すカズイの顔には覚悟が見える。男が真剣に啖呵を切ったのだ。であれば、この場はカズイに任せても良いんじゃないだろうか。

エルを見ると小さく頷いているので、同じ気持ちのようだ。


「分かりました。今回はカズイさんに甘えます」

「ま、任せてよ。僕だって使徒の従者なんだ。いつまでもお荷物のつもりは無いよ」


そう言ってカズイはオレ達の前に出たのだが……カズイさん、足が震えてますよ? 本当に大丈夫なんですか?


「あのー、カズイさん……無理はしなくても大丈夫ですよ?」

「や、やれる! やってみせるよ!」


「うーん……せめて空間蹴りで空から戦ってください。それと「守りの壁」は発動しておいてくださいね」

「うん、分かったよ。じゃあ、行ってくるね」


恐怖に震えつつも何処か緩い空気を出しながら、カズイは1人コボルトの群れの上空へと駆けていった。


ワォーーーン! ガゥガゥ! ウーッ! ガウッ! グルゥゥゥ!


1匹のコボルトがカズイを見つけ、遠吠えを上げると同時に、群れが一斉に怒りの唸り声を上げた。

カズイを見れば、顔を引きつらせ怯んでいるように見える。


マズイか? やっぱり助太刀した方が良いかも……そう思い、足にチカラを入れた所で、数匹のコボルトの頭が爆ぜた。

これは……ウィンドバレット……


カズイは8個のウィンドバレットを、待機状態にして自分の周りに漂わせ、コボルト共を容赦なく撃ち抜いている。

徐々にその様子が七面鳥撃ちを呈し始めた頃、2匹いる上位種の片割れが怒りの声をあげた。


次の瞬間、無数の石礫がカズイへ向かって飛んで行く。

カズイは一瞬 驚いた様子を見せたが、直ぐにコボルトを睨みつけて、更にウィンドバレットを苛烈に撃ちこんでいる。


「守りの壁か……」


そう。オレが零した通り、カズイは守りの壁を張って投石の全てを跳ね返していた。

やはり守りの壁は別格の性能だ。魔力盾が使えれば同じような事が出来るとしても、発動の速度に魔力消費、使い易さに圧倒的な差がある。


こう言うと、魔力盾が劣っているように感じるが、そんな事は全く無い。

なぜなら魔力盾は、形状から強度まで使い手のイメージ次第で自由に形を変える事ができるからだ。


要は使い方。魔力を込めれば発動できる守りの壁は、発動が早く消費魔力が小さい。

反面 魔力盾は、術者が一から盾を作り上げる事から、反応は遅くなるものの、必要な形を自由に作る事が出来るのだ。


結果、応用は効かないが瞬時に使える守りの壁に対して、汎用性がある代わりに若干のタイムラグがある魔力盾と言う図式が出来上がる。

更に言えば、両方を同時に使う事で、防御力は単純に2倍になると言う事だ。


思考が逸れた。

カズイは上位種であっても、投石 程度では守りの壁を抜けないと踏んだのだろう。


今は投んでくる石を避ける素振りすら無く、コボルトを倒す事だけに注力している。


「凄いな……いつの間に8個もウィンドバレットを纏えるようになったんだ?」

「毎日 寝る前、僕達と一緒に魔力操作の修行をしてましたから。成長してるのは、僕達だけじゃ無いって事ですね」


「そうだな。でも魔力共鳴のあるオレ達と違って、1人であそこまで魔力操作を磨き上げたんだろ? やっぱり凄い人だよ、カズイさんは……」

「そうですね。とても頼りになる仲間です」


結局、オレ達が一切 手を出す事無く、コボルトは上位種も含めてカズイ1人に殲滅されてしまった。

しかも驚く事に、最後の上位種を倒す際 1発だけではあるが、カズイはウィンドバレット(マシマシ)まで使っていたのだ。


マシマシ……そよ風バージョンと威力マシマシは、繊細な魔力操作が必要な事から、ウィンドバレットを開発した当初はオレでも使えなかった。

今のカズイさんは、当時のオレより魔力操作の腕前は上なのか……


カズイの成長に驚いていると、当の本人はオレ達へ向き直りやりきった顔で口を開いた。


「ふぅ……何とかコボルトは始末出来たよ。ここからはアルド達に任せる事になっちゃうけど、魔瘴石は僕が絶対に守るから」

「はい。オレ達の命綱、カズイさんへ任せます」


巣から見て、今のこの場所は風上だ。同族の血の匂いを嗅ぎ、直ぐに他のコボルト達がやってくるだろう。

ここからは時間との戦いになる。オレは収納から魔瘴石を取り出すと、直ぐにアオを呼び出した。


「アオ、ここに領域を作ってほしい」

「は? いきなり呼び出して何を言うのさ。そもそも僕は、ここのマナスポットを解放するのには反対だって言っただろ。エルファスからも何とか言ってやってよ」

「アオ、兄さまと相談して決めたんだ。ちゃんと勝算もある。だから領域を……早く」


アオはオレとエルの顔を見返し、小さく溜息を吐いている。


「アオ、早く! 時間が無いんだ。匂いで直ぐにコボルトがやってくる」

「もぅ! 2人して……アルドはいつもこれだ。分かったよ! その代わり、絶対 無事に戻って来てよ。怪我とかしたら怒るからね!」

「分かったよ、アオ。いつも無理をさせてごめん。兄さまと一緒に無傷で戻ってくる、約束するよ」


アオは最後にとびきり大きな溜息を吐き、オレ達が頼んだ通り領域を作ってくれた。


「ただ2人共、分かってるよね? ここはマナスポットの領域の中だ。魔瘴石で無理矢理 僕の領域を作ってるけど、そんな無茶は長い事 持たない。タイムリミットは1時間だよ」

「分かってる! ありがとな、アオ」

「大丈夫。ここからは僕達の仕事だから、アオは下がってて」


こう話す間にも、オレ達はコンデンスレイの準備で、魔力を集め凝縮している。

そんなオレ達に呆れたように、アオは肩を落として消えていった。


「エル、コンデンスレイは2発ずつだ。失敗は出来ないぞ」

「はい。最初は予定通り外縁を狙ってコボルトを閉じ込めます!」


話している間にも魔力は指先に凝縮され、最後に全ての準備が終えた事を告げるように瞬いた。


「行く!」

「行きます!」


オレは巣の右側を、エルは左側の外縁分を光の剣で叩き切る。


---赤---


巣は瞬時に赤く染まり、炎の赤が全てを燃やし尽さんとコボルト共を蹂躙している。


「エル、もう1発、次は本番だ。なるべくコボルド共を焼き尽くすぞ!」

「はい!」


眼下に地獄のような光景が浮かぶ中、更なる深みに落とすため、オレとエルは再び指先へ魔力を集めていく。

集め、凝縮……更に集め、凝縮……


最初と同じように、一瞬だけ光が一際輝いた瞬間、オレとエルは同時に声を上げる。


「2射目、行く!」

「これで……終われ!!」


オレは右側、エルは左側を光の剣で縦横無尽に振り回した……おい! エル、お前! マナスポットスレスレだっただろ、今……

エルはマナスポットが無事だったかを、食い入るように見つめている。


お前……たまに凄く剛毅って言うか……大胆だよな。兄ちゃん、今、ちょっとだけ〇玉が縮み上がったよ。

気を取り直して懐中時計を見ると10:30を指していた。


10分だけ待って突入する。エルの攻撃で主……いや、上位種の数が少しでも減っていれば良いんだが……

誰も声を上げず、3人で燃え上げる巣を見つめながら、突入までの時間を待ち続けたのであった。





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― 新着の感想 ―
事前にアオに説明しておくべきだったね。緊急脱出の場合もアオに頼むのだし、事情を説明して脱出の際はすみやかに実行できるように。
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