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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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483.ハク 弐 part2

483.ハク 弐 part2






ディアの丸焼きを作っていると、唐突にカズイが口を開いた。


「アルド、白蛇さんの鼻がヒクヒクしてるよ。これ起きるんじゃない?」


確かにカズイの言うように、ハクさんの鼻の穴が大きくなってる……これ絶対、腹が減ってるヤツだ。

そんなオレとカズイの予想通り、ハクさんはゆっくり目を開け、匂いの元であるディアの肉へ顔を近づけてくる。


『クンクン……何とも美味そうな匂いであるのぅ。ん? お主は確か……アルド様の従者では無かったか?』

「お、お久しぶりです。白蛇様……」


『おお、やはりアルド様の従者であったか。そう言えば夢でもアルド様が出て来たのだ。従者よ、アルド様は息災であるか?』

「あー、そうですね……でもアルドだったら白蛇様の後ろに……」


『むぅ、後ろだと?』


カズイの言葉にハクさんが振り返ると、オレとエルが目の前にいる形になるわけで……


『あ、アルド様が2人……ま、まさか使徒様は分裂できるのか? であれば我にも1人 頂けるよう話してみねば……」


おい、ヘビ野郎、オレは分裂なんて出来ないからな。しかも一家に1台みたいなノリで言わないでもらえますかね?


「ハクさん、お久しぶりです。以前は本当にありがとうございました。こっちは弟のエルファスです」

「ご紹介にあずかりました、弟のエルファスです。兄を助けて頂いたそうで、本当に感謝致します」


ハクさんは目をシパシパとしつつエルを凝視し、放心しながらも口を開いた。


『お、弟殿でありますか……こ、これはまた……瓜二つで……』

「因みに、僕と同じで弟のエルファスも使徒ですので、よろしくお願いしますね」


オレの言葉を聞いた瞬間、『し、使徒様が2人!!! えらいこっちゃ! えらいこっちゃやで!』と辺りを這いず回っていたのはご愛敬だろう。



◇◇◇



ハクさんにエルを紹介して少しの時間が過ぎた頃。今はディアの肉を囲んで、和やかに談笑中である。


『いやぁ、アルド様も人が悪い。使徒様が2人などと、以前に教えて頂ければ我も二度寝などしなかったものを』

「あー、まぁ……以前は証も持っていませんでしたから。更に「今代の使徒は2人いる」なんて言えば、また信じてくれなくなるかと思ってですね」


『あ……そ、そんな事はありませんぞ……わ、我がアルド様を疑うなど……はは……ハハハ……』


ハクさんは、何故か急に挙動不審になってしまった。その態度……アナタ、やっぱりオレの事を疑ってましたね?


『し、しかし、その指輪がアルド様の証ですか……温かく優しい光が漏れ出ていますなぁ……なるほど、使徒様と上位精霊様の証……初めて見ましたが、美しいモノですなぁ……』


どうやら主のハクには、指輪から漏れ出る光が見えているらしい。もしかして魔物の主にも見えるのだろうか?

だとしたら鎧を脱いだ瞬間、誰が使徒なのかが分かってしまう事になるのだが……


うーん……悩んだオレはアオを呼び出す事にした。


「ん? ここは領域の中だね。しかもかなり大きいマナスポットだ」

「ああ。ここにいるハクさんがこの森の主だ。以前、世話になったから礼を言いに立ち寄ってみた」


「ふーん……白蛇の主ねぇ……僕はアオ、アルドとエルファスの精霊だよ。アルドを助けてくれたんだってね。僕からもお礼を言うよ。ありがとう」


アオを見たハクさんは、目を見開いて固まってしまった。


「ん? 君、大丈夫? ちゃんと息してるよね?」

「ぷはぁーーー! じょ、上位精霊様でありますか! わ、我はハクと申します。この森を遥か昔、水の上位精霊様より授かった者であります」


「水? あー、アイツか。じゃあ、きっとアルジャナの民をドゥオ大陸に導いた時だね。次に会ったら、白蛇君は立派にマナスポットを守ってるって伝えておくよ」

「あ、ありがとうございます……」


え? 何この上下関係……主と上位精霊って、そーゆー関係なの? てっきり動物の主って、もっと自由な存在かと思ってました。

オレだけじゃなく、エルとカズイも同じように驚いている。


「アオ、お前……何でそんなに偉そうなんだ?」

「偉そうって何だよ。上位精霊は世界にマナを行き渡らせるって言ったじゃないか。その行き渡らせたマナを使うんだから、主が上位精霊に敬意を払うのは当たり前だろ」


うーん……わからん。そもそもオレにマナは知覚できないわけで……オレなりに解釈すると、マナを供給するのが上位精霊で使うのが主って事?

要は元請けと下請けみたいなモンなのか? うーん……やっぱり、わからん。


「スマン、アオ。オレには理解できないみたいだ」

「まぁ、しょうがないね。僕もアルドには難しいかなって思ったんだよ」


この野郎……相変わらずナチュラルに毒を吐きやがる。


「で、僕を呼んだのは何か用事があったんじゃないの? もしかして、この白蛇の主と会わせるためじゃないよね?」

「え? あ、いや、違う。ハクさんが、この証からマナの光が漏れてるって言うから……もしかして魔物の主にも見えるのか、教えてほしかったんだ」


「証からマナの光? なるほどね。この主は目だけで見てるんじゃ無いと思うよ。たぶん特殊な器官を持ってるんじゃない?」


そう言えば聞いた事がある。蛇は人には無い器官を持っており、赤外線センサのように温度を「視る」事が出来るって。

もしかしてハクさんは、視覚では無く第3の目でマナを見てるのか?


「ハクさんは目で見てない……じゃあ、魔物の主はマナが見えないのか?」

「そんな事、僕が知ってるわけないじゃないか。主になる元の生物が、そんな能力を持っていれば見えるようになるかもね」


「要は動物であれ魔物であれ、主になる前の能力次第って事か……」

「その通りだよ。アルドは最近、少し賢くなったね。この調子で色々な事を学んでよ」


これは褒められてるのだろうか……微妙に煽られてる感じがしないでも無いんだが……

まぁ良い。聞きたい事は聞けたんだ。アオには帰ってもらって、ハクさんとの会話を再開しよう。


「アオ、ありがとう。帰ってもらって大丈夫だ」

「何だよ……勝手に呼び出して帰れって……ハァ、まぁアルドだしね……分かったよ、僕は帰る事にする。また夜にはアシェラ達やマールに伝言があるんでしょ? なるべく短くしてくれると助かるかな」


それだけ話すと、アオは肩を竦めて消えていった。

ふぅ……気を取り直して、平伏しているのだろう、頭を地面に擦りつけているハクさんへ口を開く。


「ハクさん、頭を上げてください。アオは帰りましたから」

『は、はい……しかそ驚きましたぞ……まさか上位精霊様が来られるとは……うむ、今宵は良き日です! ハッハッハッハ……』


何だろう……そんなに上位精霊とは、動物の主にとって重要な存在なのだろうか?


「ハクさん、少し聞いても良いですか?」

『アルド様の頼みであればなんなりと。我に分かる事であれば答えます故、何なりとお聞きくだされ』


「であれば……ハクさんは何故、そうもアオに下でに出てるんですか? 水の上位精霊に恩があるのは何となく分かりましたが、アオに……他の上位精霊にまで畏まる必要は無いんじゃないですか?」


ハクさんは、少し驚いた様子でオレを見て、何かを考えてから話し始めた。


『アルド様は上位精霊様の事を知らぬのですなぁ。良いでしょう、我が知っている事をお話しましょう。そもそも上位精霊様とは、漂っているだけの下級精霊とは違い………………』


ハクさんの話は、思っていた通りでありつつ、違う物でもあった。

上位精霊も下級精霊も世界を守る役割については変わらない。しかし、その在り方は全く違うのだとか。


聞いた話をそのまま言うと、上位精霊とはチカラそのもの。火であれ水であれ、全ての物に元としての上位精霊があり、その眷属として下級精霊がいるらしい。

うーん……意味が分からない


元としてって、どういう意味だ? 


「ハクさん、元としてってどういう意味なんですか? 正直、ハクさんの言ってる事が全く分かりません」

『そう言えば、アルド様はマナが見えなかったのでしたな。そうなると、どう言ったら良いのか……例えば火の上位精霊様であるアグニ様。アルド様はアグニ様をどう思われますかな?』


「火の精霊のアグニ……うーん、火を司る一番 上級の精霊ですかね?」

『それでも間違いではありませんが、もっと端的に申しますと、アグニ様は火そのものなのです』


「火そのもの? 要は火が意思を持った存在がアグニと言う事ですか?」

『おお、流石はアルド様。呑み込みが早い。その通りです。アグニ様は、世界中の火の意思と言っても良いでしょうな』


「世界中の火が意思を持った存在……すみません、やっぱり良く分かりません。世界中の火がアグニなら、下級精霊とは何なんですか?」

『下級精霊はアグニ様の分体。火と言う物の意思、その残滓といった所ですかな。勿論、下級精霊にも各々意思はあるますが、その在り方はアグニ様へ還るのです』


「すみません、やっぱり僕には分からないみたいです……」

『そうですか……やはりマナを感じられないと難しいのかもしれませぬな』


マナが見れないと分からない……ん? マナを見れる存在? あ! 妖精族! サナリスやシャロンは精霊が見えて話せるじゃないか!


「は、ハクさん、そう言えば大事な事を忘れていました」

『大事な事? はて、何かありましたかな?』


「以前、海を渡る際、僕の子供はどんな能力を持って生まれてくるかを、話したじゃないですか」

『おー、確かに話しましたなぁ。マナの上位精霊の加護を受け、どんな種族が産まれてくるのかを。もしや、アルド様、お子が生まれたのですか?』


「はい。僕には娘が1人。弟のエルファスには息子が1人生まれました」

『おお、それは目出度い。して、お子等の能力は一体?』


「それがですね。2人共、額に小さな青い石を持って産まれてきたんです。アオの話では、その青い石で下級精霊を見て話せるみたいなんです」

『何と! 人が精霊を見て意思を通じ合えるのですか?』


「はい。ハクさんのさっきの話だと、僕達の子供は上位精霊と下級精霊の在り方を肌で感じる事が出来るって事ですかね?」

『それは我では分かり兼ねます。どこまでマナと精霊を感じられるのか……しかし可能性はあるように感じますぞ』


目が見えない者へ、どんなに口で説明しても景色を思い描けないように、オレには精霊達の在り方を理解する事は出来ないのかもしれない。

もし分かれば、もう少しアオやドライアド、フェンリル達との距離が縮まると思ったのだが、難しそうだ。


まぁ、これは良い。興味以上に関心が無いのも事実なのだから。

それよりサナリスやシャロンの事。ハクさんは、人や精霊より妖精族の在り方に近いように感じる。


ずっと聞きたかった事でもあるし、下級精霊にどれぐらいのチカラを貸してもらえるのかを、是非 聞いてみたい。

居住まいを正し、オレの知っている唯一の動物の主であるハクさんへ、口を開いたのである。






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