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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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482.ハク 弐 part1

482.ハク 弐 part1






ウーヌス大陸を離れドゥオ大陸に到着したのは、昼をだいぶ過ぎた頃合いだった。


「ハァハァ……つ、疲れた……。ふぅ……今って何時なの?」


こう話すのはカズイである。オレ達とは違い純粋な魔法使いのカズイは、軽くとは言え海を越えるほどの距離を走り続けるのは相当 堪えたようだ。


「えーと……15:00を少し過ぎたくらいです。大体6~7時間走り続けた事になりますね」

「うわ……そんな長い時間 走ったのは初めてだ。そりゃ疲れるよね……」


「そうですね。流石に僕もこの距離は初めてです。だいぶ疲れました。ハクさんに会いに行くのは明日にして、今日はここで野営にしましょうか」

「そうしてもらえると助かるかな。僕はちょっと動けそうに無いよ……」


カズイは砂浜で倒れ込んで、そのまま大の字に転がってしまった。余程 疲れたのだろう。

流石に今回は、オレもかなり疲れてしまった。申し訳ないが今日の夕飯は悪魔のメニューにさせてもらうつもりだ。


「カズイさんはそのまま休んでてください。エル、野営の準備をしよう」

「分かりました」

「僕だけ休んでごめん……でも今日だけはお願いするよ……」


枯れ木を集めて焚き火の準備をし、休む場所には小石をどかしてからマントを敷いて行く。

外敵に対して、樹上の方が安全ではあるのだが、ここまで疲れていると寝ている間に落ちそうな気がする……まぁ、これだけ見晴らしが良ければ野営をしても問題無いだろう。


こうして何とも締まらない話ではあるものの、オレ達は無事ドゥオ大陸に到着したのである。



◇◇◇



海を越えた次の日の朝。昨晩は波の音をBGMに、気持ち良く眠る事が出来た。

そのお陰か、あれだけ疲れていたのに一晩眠っただけで元気100%だ。これが若さなのだろうか。若さって素晴らしい!


隣で寝ていたエルも同じらしく、欠伸をしながらも昨日の疲れを引きずっている様子は無い。


「おはようございます、カズイさん、エル。2人共、調子はどうですか?」

「おはよう、アルド……僕は体中が筋肉痛かな……あちこちギシギシ音がしそうだよ……」


前言撤回! 若さでも越えられない壁はあったようだ。


「おはようございます、兄さま。僕は問題ありません。何時でも出れます」


エルはオレと同じで元気100%か。流石は双子、もしかして体調もシンクロするのだろうか?


「今日は予定通りハクさんに会いに行こうと思うんですが、カズイさん大丈夫ですか?」

「たぶん大丈夫。所詮、筋肉痛だしね。動いてれば直に良くなると思うよ」


「分かりました。ハクさんがいる森は、そんなに遠く無かったはずなので、最初は地上をゆっくり歩きましょうか」

「そうしてくれると助かるかな……」


朝食を摂り終え、野営の後片付けを終えた後、言葉の通り歩き始めたのだが……うーん、カズイさん、ヨボヨボのお爺ちゃんみたいですよ?

見かねたオレとエルで回復魔法をかけ、やっと出発 出来たのであった。


「やっぱりアルドとエルファス君の回復魔法は凄いね。僕じゃあ、こんなに上手くかけられないよ」

「それはソナーで体の中を調べてから、筋肉へ直接 回復魔法をかけたからです。僕達でもソナーが無いと、無理ですよ」


「ソナーって体の中を調べる魔法だったよね? そんな魔法、聞いた事無いかも……それも「使徒の叡智」なの?」

「いいえ。この魔法は僕が10歳の頃、敵の弱点を調べるために開発したんです。ただ実際に開発してみると、治療にも使えたので、こうして使っているんです」


「え? じゃあ、このソナーを回復に使ってるのって偶然なんだ……なんか……アルドって子供の頃から規格外だったんだねぇ」


むむむ……何故かカズイに呆れられてしまったぞ。

確かにソナーは、一見 地味ではあるものの、敵の弱点から味方の治療まで幅広く使える汎用性の高い魔法だ。


更にソナーの応用で、探索魔法である範囲ソナーも開発している。

オレの開発した物の中で、空間蹴りに匹敵するほど有用な魔法と言えるだろう。


それからもカズイはソナーの事を知りたがった。軽く教えてみたのだが、やはり使えるようにはならなかった。

どうも魔力の反射と言う物が、良く分からないのだとか。


うーん……ソナーはアシェラや母さんも使えないからなぁ……まぁ、あの2人は戦闘に直接関係が無い魔法へ、興味を示さなかったのではあるが。

こうしてカズイの筋肉痛は収まり、オレ達はハクさんの下へ向かったのである。



◇◇◇



歩き始めて3時間。途中、早目の昼食を摂り、とうとうハクさんの治める森へ到着した。


「ふぅ、やっと着いたな。エル、お前はハクさんを見るのが初めてだろ? きっと大きくてビックリするぞ」

「そうなんですか? ハクさんと言うのは、白蛇の主でしたよね? 動物の主……どんな存在なのか見当もつきません」


「ハハハ、そりゃそうだろうな。とっても気の良い人?だ。お前も気に入ると思うぞ」

「兄さまが言うなら……少し楽しみになってきました」


エルの嬉しそうな顔を見ながら、意気揚々と森へ足を踏み入れたのである。

森を進み始めて4時間が過ぎた。記憶では、そろそろマナスポットが見えてもおかしく無いのに……


そんな思いを抱えつつ尚も進み続けると、急に森が開けて大きな広場に行きついた。

あれはマナスポット……更に隣には巨大な白蛇がとぐろを巻いて眠っている。


「ハクさん……」


久しぶりに見る白蛇の主は、以前と変わらず巨大な体を晒し、威厳のようなものを放っていた。

先ずは久しぶりの挨拶をしないとな……次に以前のお礼か……


オレを先頭に、エル、カズイが付いて来る形でハクさんの前まで進み出た。


「ハクさん、お久しぶりです。アルドです。お元気でしたか?」


声をかけると、ハクさんは片目をゆっくりと開け、何やら独り言を呟いている。


『むぅ……何やら懐かしい声が聞こえた気がしたが……むむむ……アルド様が2人? うーむ、これは夢であるな……ではもう少し微睡を楽しむとするか……すやぁ』


そう言って再び目を閉じてしまう。

おぃぃぃぃ、今のってオレとエルを見て言ったよな? そこまで意識がハッキリしてるのに、また寝るの?


正直、無理矢理 起こす事に躊躇いもあるのが、そろそろ陽が落ちるわけで……野営場所を作る前に、軽く挨拶だけでもしておきたい……しかし、ぶっちゃけ、このままでは埒が明かない。

ここは涙をのんでハクさんを叩き起こそうと思う……決して「いつまで寝てやがる、もう夕方だぞ。早く起きやがれ、このヘビ野郎」なんて思ってもいない。


「エル、カズイさん、ちょっと手荒な方法にはなるが、ハクさんを起こそうと思う」


オレの言葉に2人露骨に眉をひそめている。


「兄さま、無理矢理 起こさなくても良いのでは無いですか? 挨拶なら起きてからでも十分では?」

「そうだね。白蛇さんも気持ちよさそうに眠ってるし、後で良いんじゃないかな?」


どうやら2人はハクさんを起こすのは反対のようだ。

うーん……言われてみれば、自宅で気持ちよく眠っているだけだしな……オレだって意味も無く、自室で寝てる所をいきなり叩き起こされたら怒るかもしれない。


「……そうだな、分かったよ。ハクさんが起きてから挨拶する事にする」


2人は少しホッとした顔で頷いている。


「じゃあ、野営の準備をしよう。この森は動物が豊富みたいだからな。適当に何かハクさんの分も狩ってくる」

「分かりました。じゃあ、僕とカズイさんはここで野営の準備をしていますね」


「頼む」


そう言ってオレは空へ駆け上がっていった。

さてさてハクさんの分もとなると、それなりの大きさがいるなぁ。どうせなら美味い方が良いし……


結果、最大の範囲ソナーを1つ打つ事にした……うーん、流石にハクさんにはボアじゃ小さいよな。お、これはまさかアルジャナのシルバー試験の時に狩ったドレッドディアか? もしかしてドゥオ大陸なら、どこにでもにいるのかもしれない。

まぁ、良い。ディアの生態は不明だが、この反応から恐らく200キロはあると思われる。


これならハクさんも満腹……には無理か? いや、元々、ヘビは週に1~2回しか食事を摂らなかったはずだ。

主と普通のヘビが同じかは分からないが、これ以上の重さはオレが運べない。


気を取り直して、ドレッドディアの反応を追ったのである。


「おーい、晩飯を狩って来たぞー」


あれから直ぐにディアを見つけた後、首を落とし、近くの小川で内臓を取って肉を冷やしてきた。

ディアは想定より大物で、頭と内臓が無くても200キロはありそうだ。


当然ながらオレ1人で持てるはずも無く、ロープで縛って引きずりながら運んできた。


「うわっ、これディアだよね? こんな大きいの初めて見たよ」

「ディア? すみません、僕は初めて見ました。兄さまは知っているんですか?」

「ああ。これはドレッドディアって鹿の魔物だ。オレもアルジャナでしか見た事 無いからなぁ。もしかしてドゥオ大陸にしかいないのかもしれん」


「ドゥオ大陸にしかいない……兄さま、僕は今、初めて違う土地に来たのだと実感しています。ここは違う大陸なんですね……あの海を越えないと、絶対に帰れない場所……」

「そうだな。今はマナスポットを使えるオレ達にしか、行き来は出来ない。でも遠い未来なら、人はあの距離すら何とかするんだろうな……」


「兄さまは、将来、ドゥオ大陸の民とウーヌス大陸の者が交流するようになると考えているのですか?」

「ああ。船……ミルドの村で見た小さな漁船じゃなく、いつかは見上げるくらい大きな船が絶対に出来る。その時にはお互いの交流が始まるはずだ……尤もその交流が、平和的な物かは分からないけどな」


「平和的か分からない……戦いになると? 遠い昔なら兎も角、今は国同士の戦いなど起こってはいません。それが遠い未来でそんな事が起こるなんて……僕は信じられません……」


エルはアルジャナという存在が、将来どんな火種になるかを考えて青い顔をしている。

そんなエルへ務めて優しく話しかけた。


「エル、戦争って何だと思う?」


オレの何の前触れも無い質問に、エルはキョトンとしつつも返してくれた。


「……せ、戦争ですか? お互いを憎しみあって殺し合う事ですか?」

「まぁ、そうだな。でもそれは戦争の一面を見ただけの話しでもある。じゃあ、分かり易いように個人の話にしよう。人はな、自分と違う存在、所謂 他人を前にした時、どうすると思う?」


「他人ですか……僕なら先ずは話をします……」

「お前らしいな。でもいきなり殴りかかる者や殺しにいく者だっているよな?」


「盗賊や、その人に恨みのある人ならそうかもしれません」

「そうだな。お前はさっき「先ず話し合う」って言った。そこから気が合えば友人になって更に話をするんだろう。笑い合って酒を飲み、時にはケンカだってするかもしれない。そして仲直りして話し合って……そうやって関係を続けていく。違うか?」


「そうです。現にルイスやネロとはそうやって関係を続けてきました」

「そのケンカが国にとっての戦争だ。ドライアディーネやグレートフェンリル、ゲヘナフレアやティリシア。過去には戦争をしても今はお互いに最低限の配慮をして付き合ってるだろ?」


「兄さまの言う事は、何となく分かります。でも国となると大きすぎて簡単にはイメージ出来ません……」

「まぁ、そうだろうな。こうは言ってるが、オレだってしっかりしたイメージなんて無いしな。ただ遠い将来、ウーヌス大陸の者とドゥオ大陸の者が出会った際、財産を奪おうとか支配しよう……果ては「怖いから先に攻撃する」なんて事が無いように、何かオレ達に出来る事があれば良いんだけどな……」


「そんな事、可能なんですか?」

「分からん……オレに出来る事って言ったら、伝承に残すだとか、子孫に言い聞かせる程度だ。使徒だ、始祖だって言っても寿命が来れば、ポックリ逝くわけだしな」


「伝承……使徒である僕達が、2つの世界の事を書き記しておけば、争いは起きないんでしょうか?」

「それはオレ達のこれから次第って所か……歴史に大きく名前が残せれば、その分だけ文献を見てくれる者も多くなる。そうすれば争いになる可能性は低くなるかもな」


エルは何かを考え、黙り込んでしまった。こうは言ったが、オレは未来にまで責任を持つつもりなど毛頭無い。

ただ、オレの言葉で遠い未来、誰かが争わなくて済むのなら……ディアの丸焼きを作りながら、詮無い事を考えるのであった。





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