470.ダカート村 part3
470.ダカート村 part3
「エル、そっちに行った! 上にも2匹!」
「はい! 兄さま、後ろ!」
エルの言葉を受け、バーニアを吹かして移動しつつ、後ろからオレを狙っていたグリフォンの首を刎ねてやった。
今が一体どう言った状況なのか……先ほど主の翼を叩き切ってやった後の事。
追撃するため森の中へ突っ込んだのだが、辺りは驚くほど静寂に包まれていた。
音と言えば、カズイのウィンドバレットの音が遠くに聞こえるのみである……どうなってる?
慎重に辺りを探るも、何の気配も感じられ無い。
「エル、範囲ソナーを使う……いきなり襲ってくるかもしれないからな。気を付けろよ」
「分かりました」
そして範囲ソナーを打った瞬間、オレ達を中心に無数のグリフォンの反応が……しまった嵌められた。
「エル、マズイ、囲まれてる! 取り敢えず逃げるぞ!」
「え? は、はい!」
しかし向こうからすれば、折角 籠の中に誘いだした獲物を逃がすはずも無く……グリフォンの声が響くと同時に、一斉に風魔法を撃ち込まれてしまった。
咄嗟に魔力盾を球状に展開するも、数が多すぎる……
「エル、数が多過ぎる……魔力盾がもたない……」
つい先ほどまでは楽勝だと思っていたのに……考えてみれば、当たり前の話だ。
七面鳥撃ちしたのは翼を狙っての事だった。
単体でBランクもあるグリフォンなら、墜落死などしなかったのだろう。
怒り心頭で殺意を漲らせている中、オレ達はノコノコと敵のど真ん中へやってきたと言うわけだ。
「エル、多少の被弾はしょうがない! チビさんのドラゴンアーマーを信じよう。「守りの壁」を張って突っ込むぞ!」
「はい!」
こうして冒頭の場面となったのである。
先ずはこの状況を脱しないと……しかし、上空からは、カズイの奮闘のお陰でグリフォンのおかわりが続々と落ちてくるわけで……
結果、オレとエルは終わりの見えない戦いを強いられてしまっていた。
「クッ、コイツ等、空よりも動きが早い……しかもこの挙動……」
グリフォンは体の上半分が鷲で下半分は獅子の魔物である。空を飛んでいた際には、下半身がデッドウェイトになって素早く動けなかったのか。
地上では、ネコ科のしなやかな動きに鳥特有の軽やかさがプラスされ、異質な動きで非常に動きを読みにくい。
更に厄介なのは、群れの生き物故、当然のように連携してくるのだ。
後衛は風魔法を、前衛は独特な動きで爪と嘴を使って襲い掛かってくる。
前衛と後衛を器用に入れ替えながら迫ってくる様は、獲物を追い込む狩人のそれだ。
唯一の救いは主がいない事か……恐らく雷撃のダメージをどこかで癒しているのだろうが……
「エル、これじゃあ分が悪い。それに魔力の残りが半分を切った……」
「あ、最初のウィンドバレットと雷撃で……僕の魔力を渡します!」
「いや、ここは一旦 引いて体制を立て直した方が良い。カズイさんの下まで突っ切るぞ」
「分かりました」
結局、グリフォンの数と連携の前に、オレ達は尻尾を巻いて逃げ出したのであった。
◇◇◇
オレとエル、カズイがダカート村まで逃げてくると、足早にパーガスがやってきて口を開いた。
『大丈夫だったか? グリフォンは?』
パーガスはオレ達の渋い顔を見て、眉根を下げながら更に口を開く。
『まぁ、しょうがねぇ。幾らドラゴンスレイヤーと言っても、相手はBランクのグリフォンだ。しかもかなりの群れを作ってやがる。先ずはゆっくりと休んでくれ。見張りはオレ達でやる』
『すみません。思ったよりグリフォンの連携に手古摺りました。魔力もだいぶ減ってしまったので、少し休ませてもらいます』
『任せろ。こんな事しか出来なくて悪いと思ってるんだ。しっかりと休んでくれ』
『いえ、助かりますよ。ありがとうございます』
羽を潰してある以上、グリフォン達も直ぐに反撃してくる事は無いだろう。
オレ達は貸し出された家へ入り、ひと時の休息を取らせてもらう事にした。
先ず最初にやった事は魔力の回復である。オレの残りの魔力をエルへ渡し、カズイと一緒に4時間の睡眠をとる事にした。
「ふぁー……おはよう、エル……オレ、どれぐらい眠ってた?」
「今は14:00頃ですね。だいぶ前にウィズさんが食事を持って来てくれました」
「そうか……腹が減っては戦は出来ぬって言うからな。魔力も回復したし、食べながら作戦を練ろう。良いですよね? カズイさん」
「うん」
そこからはグリフォンの特性から、実際に戦ってみた感想、どう攻めれば良いかなど、話は多岐に渡った。
「空と地上であんなに動きが違うとは思いませんでした……」
「ああ、そうだな。ネコの俊敏さに鳥の身軽さが合わさって、想定してたよりずっと厄介な魔物だった」
「しかも連携まで……最初に感じたより、かなり面倒な敵です」
「こうなってみると、ヘタに翼を奪ったのは悪手だったかもな……いっそ空で仕留めた方が確実だったかもしれん」
「そうですね。流石はBランクの魔物って所ですか……」
「ああ。あの動きに魔法、それに連携……エル、言い難い事を言うぞ……グリフォンにはお前の戦闘スタイルでは戦い難いかもしれない」
「……それは薄々感じてました。後衛からは魔法を撃たれて、直接攻撃してくる個体も全て一撃離脱でしたから……一か所に留まって、後の先を狙う僕の戦いとは相性が悪いと思います」
「やっぱり絶えず動いて狙いを定めさせず、各個撃破するのが良いんだろうな……でも悪い事ばかりじゃないぞ。チビさんのドラゴンアーマー。守りの壁は思ったより使い易かった。コレがあれば雑魚グリフォンの魔法程度、ほぼ無視できる。流石に主には通じないだろうけどな」
「主……恐らく次に戦う際には、雷撃の傷は癒えてますよね?」
「多分な。後はお前が叩き切った翼がどうなってるかだが……こればっかりはヤツの回復能力次第だからな。やってみないと分からない」
オレとエルの会話が途切れたタイミングでカズイが口を挟んでくる。
「ちょっと良いかな?」
「はい、何でしょう?」
「グリフォンって上半身が鷲で下半身が獅子の魔物なんだよね?」
「そうですね。それが何か?」
「いや、少し思っただけなんだけど……もしかして、目は鳥と一緒なんじゃないかな?」
むむむ。カズイが何を言いたいのか……オレが理解に苦しんでいると、エルが口を開く。
「あ、なるほど。上半身が鳥なら、弱点も鳥と同じじゃないかって事ですよね?」
「うん。鶏みたいに夜目が全く効かない事は無いんだろうけど、やっぱり鳥である以上、暗いと視力がだいぶ落ちると思うんだけど……どう思う?」
「なるほど……目ですか……夜ならフラッシュの効果も高そうですし……本当にグリフォンが鳥目なら……ちょっとダカートの風の皆さんに聞いてきます」
早速ダカートの風に聞いてみた所、やはりグリフォンは暗い場所では、かなり視力が落ちるらしい。
『全く見えないなんて事は無いみたいだが、かなり制限されるみたいだ。代わりに明るい間はオレ達なんかよりずっと目は良いらしい。尤も、オレはグリフォンと戦った事が無いからな。全部、受付嬢の受け売りだ』
『凄くありがたい情報です。なるほど……グリフォンはやっぱり夜目が利かないんだな……だったら夜に奇襲をかけるのが正解か? いや、でもこっちの視界も制限される……闇に紛れて森の中から魔法を撃たれたら対処出来ない……うーん』
『ドラゴンスレイヤーと言えども、グリフォンの群れは簡単じゃ無さそうだな』
『はい……1匹ならどうとでもなるんですが、向こうは40匹以上いました。あれだけの群れで連携してこられては、どうしても後手に回ってしまって……』
『は? ちょっと待て……グリフォンが40匹だと? 本当なのか、それは?』
『え? あ、はい。それに上位種が1匹。流石にキツくて逃げ帰ってきました』
『マジか……多くても精々10匹だと思ってたんだが……』
パーガスと話していたのだが、ウィズを始めザザイとソーイも口を開けて呆けた顔を晒している。
『アルド君……グリフォンが40匹とか……私は何を言って良いか分からないわ』
『流石はドラゴンスレイヤーと言った所だな……オレ達だけ……いや、上位種もいるなら、カナリスギルドの総力でも、勝てるかどうか分からない……』
ダカートの風の面々は、グリフォンの想像以上の数に、このままオレ達へ討伐を頼んで良いのか判断がつかないのだろう。
渋い顔をするだけで、誰も声を発しようとはしない。
そんな空気の中、口を開いたのはカズイだった。
『大丈夫ですよ。アルドやエルファス君は、何て言ってもドラゴンスレイヤーなんですから。今回は初めての魔物で、少し驚いただけです。対策を考えた次は、ちゃんと良い報告が出来ますよ』
むぅ、何かハードルが上がったような……確実に勝てる算段があるわけでも無いのに……
カズイを見ると、少しバツが悪そうにしつつも、今の言葉を撤回する様子は無い、。
そうして暫くグリフォンの習性を聞きつつ、話し合いは終了したのであった。




