表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

450/526

450.バルザ part1

450.バルザ part1






王都のブルーリング邸へ逃げ帰って3日が過ぎた。

王子から何かアクションがあると身構えていたものの、襲撃はおろか使者の来訪すら無く、完全に肩透かしを食らっている状態である。


「どうなってるんだ? まさか全部 夢だったとか?」


オレの言葉に反応したのはアシェラであった。鼻息荒く、脳筋の理論をぶつけてくる。


「向こうは今、戦力を集めてるはず。整ったら絶対に攻めてくる!」


えー、話し合いすら無しでいきなり戦いとか……それじゃ、この世は修羅の国になっちゃうじゃないですかー

言い放った本人は、既に庭へ出て格闘の修行を初めている。


アシェラさん、前より動きが鋭くなってませんかね?

妊娠、出産を経て体が鈍っているはずなのに、動きのキレが凄い事になっているんですが……


最近のアシェラは、長い期間 自由に動けなかった反動からか、暇さえあれば体を動かして感覚を取り戻そうとしている。

このキレは、動けない間 全てを魔力操作の修行に当てていた事から、身体強化が一段階上がっているのが原因だろう。


お前は一体どこまで強くなるのか……もう模擬戦をしてもフルボッコにされる未来しか見えない。

父ちゃん、シャロンに格好良い所、見せたいんだけど……ワンパンで倒されそうな気がする。


そんなアシェラの成長に驚愕していると、来訪を知らせるノッカーの音が響いた。

玄関ではセーリエが、他家の執事と何事かを話している。


恐らく先触れなのだろうが、問題は何処の家の者かと言う事だ。

数分が過ぎ、男が帰ったと同時にセーリエへ話しかけた。


「セーリエ、今のは何処の者だ?」

「はい、ルード家の執事でした。1時間ほど後にルード卿が訪ねて来るそうです」


「ルード卿……王家の遣いか……」

「はい。バルザ様に用があると……」


「お祖父様に? オレじゃなくてか?」

「はい。どうやら今回の件について、ブルーリング家としての見解を聞かせて欲しいそうです」


そうきたか……表向き、ブルーリング家はオレを庇えるはずが無い。

兵糧攻め……オレを孤立させ、徐々に疲弊させたいのだろう。


あわよくば、もう一人のドラゴンスレイヤーであるエルに、オレを捕らえさせたいのかもしれない。


「なるほどな。今回の件に、ブルーリング家を巻き込んで、共倒れを狙いたいって所か……」

「ドラゴンスレイヤーに対抗出来るのは、ドラゴンスレイヤーだけですから」


「こうなると……表立っては攻めて来ないんだろうな。あのフリードって騎士の入れ知恵か?」

「それは分かり兼ねます。ただ、ここで対応を間違えますと、後で手痛いしっぺ返しを食らうかと」


「そうだな。分かった、オレも一緒に執務室へ向かう」

「はい」


こうして、セーリエと爺さんがいる執務室へ向かったのである。






「お祖父様、アルドです。よろしいでしょうか?」

「入れ」


執務室では爺さんが1人で何かを書いていた。


「セーリエも一緒か……何があった」

「はい。先ほどルード卿から先触れがありました。1時間ほど後に、ルード卿が参られるそうです」


「……用件は?」

「ブルーリング家として、アルド様の今回の件に対する見解を聞きたいと……」


爺さんは目を閉じて、黙り込んでしまった。

きっとオレと同じように、相手の目論見を推察したのだろう。


そして数分が経った頃、オレを真っ直ぐに見つめ話し始めた。


「恐らく目的は、ブルーリング家とお前の対立だ。お前が王子の寝所に忍び込んだ事で、直接的に武力を行使する事を恐れたのだろう。確かに空を飛べる相手に対し、守りを固めるにも限界があるからな。アルド、お前はどうしたい? 事ここに至っては、穏便に済ますのは難しいだろう。それを踏まえて、お前の意見を聞かせてくれ」

「僕は……最後まで対話での解決を願っています……それでも、どうしようも無いのなら……僕が矢面に立ちます。今回の件は、僕が発端ですから」


爺さんは大きなため息を吐き、更に口を開く。


「お前は優しい男だな。それほどの武を持ちながらも、チカラに溺れる事も無い。更に相手の立場や命への配慮もできる……尤も、それだけのチカラを持つ故の余裕かも知れんが」


爺さんはそれだけを言うと、再び何かを考え始めた。そして、驚くべき言葉を口にする。


「分かった。ワシはルード卿と共に王城へ向かう。王へ今回の1件を直接話し、減刑を頼み出る事にする」

「待ってください! それじゃあ、ブルーリング家は、僕に付くと言う事ですか? それでは、お祖父様の身が危険になります」


「ワシは今日、この日を持って、ブルーリング男爵家、当主を引退する。王城へはワシ個人として向かう。ワシの当主としての首で事態が収まるかは分からんが、これでも30年はフォスタークへ尽くしてきたのだ。多少の無理は聞いてくれるだろう」

「当主を引退って……本気なんですか?」


「この老体でも少しは役に立つと思って今日までやってきたが、ワシはここまでのようだ。残りの余生は、ブルーリングでサナリスやシャロンを撫でて過ごすとしよう」


そう話す爺さんの顔は、寂しそうであり、重い荷物を下ろしてホッとしてるようでもあった。






先触れのあった通り、1時間ほどしてルード卿がやってきた。

少し思う所があったオレは、ホールの隅でその姿を眺めていると、気付いたルード卿は軽く悲鳴を上げて転んでしまった。


そんなつもりじゃ無かったのに……


「大丈夫ですか? ルード卿」

「ひっ、だ、だ、大丈夫! 大丈夫だから!!」


あまりの怯えように、オレは出した手を納める事しか出来なかった。


「すみません……怖がらせてしまい、申し訳ありません……お祖父様は執務室です……」


そう言って下がるオレを、ルード卿は恐れと驚愕、そして少しの哀れみを含んだ目で見つめている。

思えば13歳の頃、サンドラへ「王家の影」として向かうよう、「王家の遣い」を務めたのはこの人だった。


更に次のミルドの件でも同じ。我が家へ王家の言葉を伝えたのは、いつもこの人である。

そんな旧知の知り合いとも呼べる人から、こんなにも怖がられるなんて……


改めて今回の件が、フォスターク王国として如何に大きな問題だと分かる。


「参った……これじゃ、昔の冒険者ギルドと同じじゃないか……」


オレから喧嘩を売った事など、数える程度しか無いのに……何でこうなった。






ルード卿がやってきて1時間ほどが経った頃、爺さんはルード卿と共に執務室から出て来た。

何時の間にか貴族の正装を着ており、本当にルード卿と一緒に王城へ向かうつもりのようだ。


やっぱり爺さん1人で行かせるのはマズイ気がする。万が一、人質にでもされたら……


「お祖父様、僕も護衛として同行します」

「必要ない。お前はここで待て。王城へは、ワシとルード卿だけで向かう」


「しかし! お祖父さまに何かあったら……」


爺さんはオレを、眩しい物でも見るように目を細め、一息に言い切った。


「そんな顔をするな。大丈夫、直ぐに戻る」

「では、せめて護衛の騎士を付けてください。でないと僕は心配で……」


「いらん。ワシの事などより妻を労ってやれ。お前の体だけでなく、心も支えてくれる者達だ。大事にしろ。ワシには終ぞ出来ん事だったからな……」


そう言って爺さんは怯えたルード卿と行ってしまった……何だ、今のは……あれじゃあ、今生の別れみたいじゃないか!

どうする? このまま行かせて本当に大丈夫なのか?


ただ1人残されたオレは、答えの無い難問を解くかのように、思考がぐるぐると回るだけだ。

あーー、もう! オレはどうしたいんだ? 務めて冷静に自分の心へ問いかけてみる。


答えは驚くほど簡単に出た。絶対に爺さんを死なせたく無いし、人質にもなってほしくない。

だったら……答えは1つしかない。オレは動く。


例え爺さんが、それを望んでいなくてもだ……オレ自身がそうしたいんだ。

方針は決まった。先ずは頼りになる嫁達へ報告をせねば。


直ぐにアシェラとライラを呼び、今朝からの一連を話していく。


「………………って事なんだ。オレはお祖父様の護衛に出る。2人は屋敷で待っててくれ」

「ダメ。ボクも行く。御当主様にはボクも沢山お世話になった。力尽くでも付いていく!」

「私も行く。アルド君を1人に出来ない。どんなに強くても人である以上、薬や不意打ちで簡単に倒される事もある。絶対に私がアルド君を守る!」


やっぱりこうなったか……どうしよ……当身で気絶させようにも、今のアシェラなら返り討ちにあうだろうしなぁ。

しかも3倍になって返ってきそうだ。


悩んだ結果、オレが出した答えは……


「ハァ、分かったよ。一緒に行こう。但し、お祖父様にも見つかるわけにはいかない。道中は空から尾行して、王城の中は……その時に考える……」

「分かった」「分かった……」


「じゃあ、追いつけなくなる。ドラゴンアーマーへ着替えて直ぐにでるぞ」


オレ達は慌ただしく準備を整えたのであった。






爺さんから遅れる事10分ほど。最速で準備を済まし空を駆けていると、ルード卿の馬車が見えて来た。


「あの馬車だ。見つかるとマズイ。高度をあげるぞ」


馬車が豆粒ほどの大きさになるまで高度を上げると流石にかなり寒い。隣のライラが小さなかわいらしいくしゃみをしている。


「くちゅん!」

「この高度は流石に寒いな。しょうがない、エアコン魔法を使おう」


本当は、このまま全面対決になる可能性もある事から、魔力は極力 温存しておきたいのだが……

恐らく今の気温は0℃を下回っている。寒さは気力も体力も奪う。ここは必要経費として割り切ろう。


眼下に見える馬車は、真っ直ぐ王城へと向かっている。

爺さんが王城へ向かっている事を知っている者は、同乗しているルード卿だけだ。きっと行きでは襲われる事は無いだろう。


王城の中でも、ブルーリング家当主を表立って襲う可能性は高く無いはずだ。来るなら帰り……どんな話し合いになるか次第だが、特大の不安を胸に、オレは馬車を追っていった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
減刑ねぇ、そんな話になったら、王家に対する不敬が罪であっても、平民の家臣の親族の嫁を手籠めにする、人質にする時点で、汚点でしかないだろうに…… 力に溺れないのは分かるけど でも、それって、こっちが悪…
「優しい」と「どっちつかずの優柔不断」を一緒にするのはちょっとね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ