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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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448.罪人 part2

448.罪人 part2






騎士団の地下から逃げ出して、今は夜の闇の中、空を駆けている。

あの後、牢を吹き飛ばしてからは、真っ直ぐに外を目指し、途中 出会った騎士はアシェラに睡眠を撃ち込んでもらった。


あまりにもあっけない脱獄に拍子抜けしたほどだ。


「直ぐにオレ達が逃げ出したのは知れ渡るはずだ。このまま王子の下へ向かおう」


2人は大きく頷いて、了解の意思を示す。

そうと決まれば、先ずは王子の居場所を突き止めないと。


何度も使ってこちらの位置を知られたくない。最大である1000メードの範囲ソナーを一度だけ打ってみる……いた。

反応があったのは、さっきの執務室からではないので、どうやら今日の執務は終了らしい。今いる場所が王子の寝所なのだろう。


「王子を見つけた。騎士が2人、部屋の前で見張りに立ってる。たぶん、寝所だ」

「分かった」「うん」


空を駆けると、ものの数分で辿り着いてしまった。


「部屋の中は王子1人だ。大勢で押し掛けて警戒させたくない。オレだけで行ってくるから、2人は待っててくれ」


微妙な顔はするものの、2人は頷いてくれた。

寝所に押し入るむような真似をする以上、出来るだけ穏便に向かって少しでも会話をしたい。


なるべく刺激しないよう、ゆっくりと王子の部屋のベランダへと降りていく。

気配を感じたのか、王子は座っていた椅子から立ち上がり、警戒の声を上げた。


「誰だ? 誰かいるのか?」


人は素早く動く物に恐怖を覚えると聞いた事がある……オレは出来るだけゆっくりと動き、王子の前まで躍り出て跪いてから口を開いた。


「殿下、アルド=ブルーリングです。先触れも無く、いきなり寝所へ現れるような真似をし、誠に申し訳ありません。ですが、聞いて頂きたい事があるのです!」


王子は驚きと怯えが混ざった目でオレを見つめながら、その場で固まってしまっている。

であれば、こちらの言い分を一方的にはなるが、言わせてもらう。


「殿下。殿下が私と妻の件をどのようにお聞きしているかは存じません。しかし、私は誓って王家に反旗を翻すような真似はしておりません。あの後、殿下が退室した途端、フリードが私の妻を攫おうとしたのです。その際に少しだけ戦闘になりましたが、フリードの指を落としただけで、他の騎士へは一切の怪我はさせておりません。しかし、私は王城での帯剣と騎士への暴行で捕らえられました。帯剣の非はあるとしても、事の発端はフリードであるのは明白です。申し訳ありませんが、どうか寛大な処置をお願いしたく」


かなり端折っているものの、オレは昼間にあった一連を一息に言い切った。


「け、卿はどうやって……ここへ来たのだ……ろ、牢に入れられたと聞いているのに……」

「あの程度の牢、ドラゴンスレイヤーたる私には、さして大した労力も無く抜けられます。その際、道中の騎士は全て眠らせました。誓って怪我などさせておりません。更に、私は空を歩く事ができます故、そのまま空を駆け この場に参った次第です」


王子は目を見開いて固まり、終いには震えて崩れるように座り込んでしまった。


「殿下、大丈夫ですか?」


オレが体を支えようと、立ち上がる素振りを見せた途端、小さく悲鳴を上げて床を後ずさりしている。


「ひ、ヒィッ……だ、大丈夫だ……よ、寄るな……寄らないでくれ!」

「……はい」


王子は動揺して、まともに判断出来ているのかも分からない。

沈黙がこの場を支配し、暫くの時間が過ぎた頃、少しだけ目に理性の光を灯しながら王子は口を開いた。


「け、卿は……そ、それを伝えに来たのか?」

「その通りです。どうか、真実を明らかにし、公正な沙汰を……お願いします」


「わ、分かった……分かったから……ご、後日 改めてブルーリング邸へ遣いを送る……それで良いか?」

「はい、寛大な措置、誠に感謝いたします」


怯えさせないよう極力ゆっくり動き、オレはそのままベランダから空へ駆け上がっていった。

取り敢えず、今出来る事はやったはずだ。


しかし、王子のあの怯えよう……オレの事を猛獣か何かとでも思っているのだろうか。 

考えてみれば、空を自由に駆け、ドラゴンすら屠る者と敵対しかかっているのだ。怖がるのはしょうがないのかも知れない……


「アシェラ、ライラ、ブルーリング邸へ帰ろう」

「分かった」

「……アルド君、ブルーリング邸に帰って良いの? もしかして、襲撃があるかも……」


「王子からの連絡を待たないといけないし、お祖父様も心配だ。それに、屋敷なら最悪はブルーリング領へ飛べるからな」

「屋敷なら、夜の見張りは前みたいにドライアドへ頼めば良い。アルドはドライアドと一緒に寝る」


「あれか……オレ、丸太と一緒に寝たく無いんだけど……」

「ダメ、相手は王家。ドライアドに見張ってもらうのが、一番安全」


こうしてオレは、丸太と寝る悪夢を思い出しながら、ブルーリング邸へ帰っていったのである。






アルド達がブルーリング邸への帰路についている頃、王城ではハチの巣をつついたような騒ぎになっていた。


「フリード!! フリードはどこだ! 直ぐに呼び出せ!!」


いつも冷静で、何処か人を食ったようなカムル王子の怒声が響き渡る中、騎士団の詰め所では全ての発端であるフリード近衛隊長が、牢の前で立ち尽くしていた。






私はフリード=フォン=トールマン。リュート伯爵家に仕えるトールマン騎士爵家の次男だ。

幼少の頃、リュート伯爵に剣の才を見出されて以来、数々の支援を頂いて王国騎士団 近衛隊長の座まで上り詰める事が出来た。


私にとってリュート家は、主家と言うだけでは無く、恩人とも言える存在である。

そんなリュート家の次代を担うお世継ぎ、ラーハルト様が病に伏せられたと聞いた時には、私の全てを差し出してでも必ずお救いする事を心に固く誓ったのだ。


しかし、現実は非情である。ラーハルト様の病は、何と「石化病」と知れた。

「石化病」……極稀に患う者はいると聞くが、ほぼ忘れ去られた病である。更に恐ろしい事は、その致死率の高さ。ほぼ100%の難病なのだ。


直ぐに殿下へ願い出て、必死に治療法を探したものの、その治療の困難さが現になるばかりであった。

そんな、幾つもの文献を読み漁る中に、1つの治療法を見つける事が出来たのは、幸運以外 何者でもないのだろう。


近衛隊長である私だから立ち入れる場所。王城の書庫に、エルフの「全ての病を癒す薬:万能薬」と記された文献を見つける事が出来たのだ。

私は嫌な予感を隠しきれなかった。エルフで薬と聞けば、誰でも思いつく物がある。恐らく門外不出の秘薬の類だろう……国交が戻った今であれば、手に入れる事も可能だろうか?


そんな淡い期待を抱きながら、更に「石化病」について調べていくと、新たな治療法を発見するに至った。

それはエルフに伝わる「完全回復薬」の存在だ。何でもその薬を使えば、腕でも足でも瞬時に再生させるエルフの秘宝なのだとか。


その効果は怪我や欠損に留まらず、毒や病、果ては死者すら蘇らせたと文献には記されていた。

馬鹿馬鹿しい……死者を生き返らせるなど、精霊ですら出来るわけもない。


しかし、「完全回復薬」は現存し、エルフの国宝として大切に保管されていると言う。

国宝として認められるほどの薬……死者の蘇生は眉唾としても、「石化病」程度なら治せるのでは?


そう考えた私は、更にエルフの文献を調べさせ、とうとう過去に「石化病」を「完全回復薬」で治療した書物を見つけるに至った。

何世代か前のエルフの王族が「石化病」を患い、国宝の「完全回復薬」を使って完治したのだとか。


暗い闇から、一気に目の前が晴れていく感覚の中、私の心に一抹の不安がよぎる。

エルフ……元々エルフは排他的な種族だ。秘薬の類は国が厳重に管理し、どれだけ金を積んでもヤツ等が売る事は無い。


しかも、今回は国宝……国の宝に定められると言う事は、材料を得る術が無いか製法自体が失われている……そのどちらかに違いない。

簡単に作れるのであれば、国宝にして厳重に管理する必要など無いのだから。


再び、出口の無い闇のような感覚が私を襲う。しかし、大恩あるリュート家。ラーハルト様個人にも随分 可愛がってもらった……それに妹君であられるライラ様にも……私には諦めると言う選択肢を、どうしても取る事が出来なかった。

そんな中、実家の父と兄にも事情を説明し、極秘で調べてもらっていた情報の中に、「迷宮で手に入れた回復薬で指の欠損が治った」と記された文献を見つけるに至ったのである。


その文献の出所は、リュート領リュートの街にある冒険者ギルドであった。

灯台下暗し……あれだけ調べて、尤も欲しい情報が足元にあったとは……いや、ここまで調べたからこそ、この情報の価値に気が付けたのだ。


頭を振って、大きな前進に感謝したのである。






その後、幾ら調べても新しい情報は出て来なかった。


何処の迷宮で「薬」が出たのか、誰が「薬」を得たのか、それは何時の話なのか……更に言えば、そもそも その「薬」はエルフの「完全回復薬」なのか……


全てが謎に包まれ真偽不明ではあるものの、私にはその希望に縋るしか道は残されていなかった。






ドラゴンスレイヤー、竜種を屠った者に与えられる称号である。


天災と同義に語られる竜種を屠るなど、個人で出来るはずも無い。

しかし、今 この国には数人のドラゴンスレイヤーが存在する。しかも、その内の1人は殿下の紐付きなのだとか……


3年前に殿下と個人的な約定を交わし、その後 出奔して最近 帰ってきたと言う。

私は、これこそが天啓だと感じた。本当に個人で竜種を倒すなど信じてはいないが、煙の無い所に火は立たないと言う。


竜種を倒した方法は、特別な毒か習性を利用した罠であろうが、腐ってもドラゴンスレイヤー。個人で相当な「武」を誇るのは間違い無いはずだ。

しかも、貴族であるのに幼少の頃から迷宮に潜り、実際に幾つもの迷宮を踏破している猛者なのだとか。


今は出奔して平民だと言うのも、都合が良い。私にとって理想の手駒に成り得る。

渋る殿下へ願い出て、「くれぐれも穏便にな。決して怒らせるな」との言葉と共に、ドラゴンスレイヤーを呼び寄せる事に成功した。


そして……私は決して踏んではいけない虎の尾を踏む事になる……





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― 新着の感想 ―
それだけの気概があるなら職を辞して自分で探しに行けば良いものを安易な手段に走った結果がこれですね。ヤルゴとの対比になりそう。
渋る殿下が…… 殿下、学習しましょうよ どっちを選ぶかを……
さらっと微妙に関係者だったー
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