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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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447.罪人 part1

447.罪人 part1






シレア団長が現れて騒ぎが収まったのは良いが、オレはいきなり逮捕されてしまった。

小声で「悪いようにはしない」と囁かれなければ、逃げ出していた事だろう。そうなれば、恐らく独立待ったなしになったはずだ。


折角、王子との交渉を問題無く終えられたと言うのに……これは全部アイツ、近衛隊長のフリードのせいだ。

何時かお前の枕に、スライムを入れてやるからな。覚えとけよ!


こうして、オレ、アシェラ、ライラの3人は、騎士団 詰め所の地下の牢獄に放り込まれてしまったのである。


「ごめん……フリードって近衛隊長が、お前達を騎士に襲わせたって聞いて、我慢出来なかったんだ」

「大丈夫。それより、アルドに怪我が無くて良かった」

「うんうん。あんなヤツ等、何人来ようと、私とアシェラで返り討ちに出来る」


取り敢えずは、お互いの安否が確認できて安堵したのだか、ここは牢の中だ……牢屋で安心とか意味が分からない。

しかし、これだけの騒ぎになって、事態はどう転がるのか……


話は当然、上役にまで上がるだろうし、王子の判断次第では、何らかの罰を受けるかもしれない。

どうしたものか……この程度の牢、逃げるのは簡単に出来るのだが、これ以上やらかせば、本当に指名手配されてしまう。


既に手遅れのような気がしないでも無いが……


「アシェラ、因みに、誰も殺してないよな?」

「うん。殆ど睡眠の状態異常を撃っただけ。2~3人、抱き付こうとしてきたから、ぶん殴った」


「お前に抱き付こうとしたのか……顔は覚えてるか? オレがキッチリ息の根を……」

「アルド君、これ以上はダメ。本当にフォスタークを敵に回す事になる」


あふん……ライラに怒られてしまった。

しかし、グレートフェンリルでも牢に放り込まれたし、ここで2回目だ。その内、牢屋マイスターにでもなれるんじゃないか?


そんな、くだらない事を考えていると、複数の足音が徐々に近づいて来る。


「アルド君、気分はどうかな?」


やってきたのは、シレア団長だった。マリク副団長と騎士2人と共に牢の前に立ち、苦笑いを浮かべながら話しかけてきた。


「……最悪です。聞いてください。最初に手を出したのはフリードって近衛隊長です。オレに言う事を聞かすために、アシェラ達を攫おうとしたんです」

「なるほど……私への報告では、いきなり暴れ始めたから取り押さえようとして、騒ぎが起きたと聞いている」


「そんな事する意味なんて無いじゃないですか! 新たに殿下との約定を交わし、何も問題が無かった所で、アイツがいきなり「迷宮へ潜れ」って言い始めたんです。それを断ったら、今度はアシェラ達を攫おうとしてきた。だから脅しを込めて、アイツの指を叩き落としてやったんです」


シレア団長は少しの間、何かを考えてから口を開いた。


「私もアルド君が、意味も無くチカラを振るったりしないのは知っている。ただ、今回は場所が最悪だった。王城の中で帯剣したと言う事は、どこかに武器を隠し持っていたと言う事になる。事実、あの時 持っていた短剣はアルド君の物で、何処かに隠し持っていた。違うかい?」

「そ、それは……」


収納の能力を隠している以上、シレア団長の言を否定する事など出来ないわけで……


「しかし、アルド君が殿下から半ば強引に招かれ、フリードに理不尽な扱いをされた事も事実のようだ。私も精一杯、減刑を願い出てみるよ。だから、くれぐれも軽はずみな行動は控えてほしい」

「……僕はどれほどの罪になるんですか?」


シレア団長は一転、悲痛な顔になり一息に言い放つ。


「……平民が、王城で帯剣し騎士を害したとなれば、普通、極刑は免れない」

「きょ、極刑……つまり死刑って事ですか……」


「但し、それは普通の平民の場合だ。アルド君のこれまでの王家への功績と私の嘆願。それに、その類まれな武。恐らく飼い殺しにはなるだろうが、極刑は免れるはずだよ」

「飼い殺しって……どういう……」


「以前のような依頼という形では無く、王直轄の暗部として生きていく事になるだろう」

「直轄の暗部……それじゃ、自由は……」


シレア団長は寂しそうに、ゆっくりと首を振った。


「ちょ、ちょっと待ってください! 僕はここへ殿下に呼ばれてきたんですよ? しかも先に手を出してきたのは、あのフリードだ! 騎士だって誰も殺して無いし、怪我も回復魔法で治る程度に手加減しました。それでも僕だけが悪いって言うんですか!」

「アルド君が貴族なら、また違った形になったんだと思う……精一杯 減刑を願い出てみる……ただ、騎士団長とは言え、平民である私に これ以上 出来る事は無いんだ……すまない」


呆然と立ち尽くすオレへ、一度だけ敬礼をしてシレア団長は去っていった。

おい……ふざけるなよ……何だこれは……こんな理不尽があって良いのか? 少し本気を出せば、あそこにいた騎士程度 皆殺しにだって出来たんだ……


情けをかけたオレが悪いのか? あの場の全員を殺し尽くせば良かったって言うのかよ!

アシェラもライラも、何も言葉を発さず悲痛な顔でオレを見つめている。


「……エルへ手紙を書く……2人共、オレの姿が見えないように隠してくれないか」

「……分かった」

「アルド君、私は何処へでも付いて行く。アルド君のいる場所が私の居場所!」


アシェラの焦燥に染まった顔とは対照的に、ライラは鼻息荒く決意を秘めている。

恐らくアシェラは、シャロンの事を考えているのだろう。こうなった以上、逃げるにしてもブルーリングへは帰れない。


最悪の場合、アシェラは、独立するまでシャロンに会えなくなるかもしれないのだ。

くそっ、平民にこうも人権が無いとは……かつて自分から捨てた「貴族」と言う地位に、少しだけ未練を感じながら手紙を書いていった。






エルに収納経由で手紙を送り、数時間が経った。いつもなら、1時間もすれば返事が返ってくるのに……

きっと向こうは、これからの対応にてんやわんやなんだろう。


そして、事態に進展は無く、既に陽は沈み、時間は19:00になろうとしていた。


「腹減ったな……」

「うん……」

「……お腹空いた」


これはオレ達へ食事が出されていないわけでは無い。既に1時間ほど前、質素ではあるが、スープとパンの支給はされている。

では何故? それは、毒の疑いを払拭できない以上、とてもじゃないが手を付けられないからだ。


しかも、逮捕される際、着ている装備以外の全てを没収されており、いつもなら常備している悪魔のメニューすら持っていない。

こんな事なら強行突破して逃げておくべきだったか?


そんな事を考えていると、耳の奥から声が聞こえてくる。


「アルド、エルファスが収納を見ろだってさ。確かに伝えたからね」


子声で「ありがとな、アオ」と告げて、収納から手紙と食料を取り出した。


「アシェラ、ライラ、エルからの差し入れだ。見られるとマズイ。交代で隠れながら食べよう」

「うん!」

「美味しそうなサンドイッチ!」


先ずはオレとライラの影に隠れながら、アシェラがサンドイッチを食べている。

オレはと言うと、お腹を鳴らしながらも、エルからの手紙に目を通していく。


エルからの手紙の内容はこうだ。

既に、ブルーリング騎士団と魔法師団の上層部へは根回しがしてあった事から、1ヶ月ほどの時間があれば、独立へと動けるらしい。


勿論、完全では無いにしても、オレ、エル、アシェラの修羅三人衆、それに魔王を名乗る母さんが本気を出せば、王国軍にさえ負ける事は無いだろうと書いてあった。

それに、最悪の場合、ブルーリングのマナスポットを地上へ移動させれば、地竜のチビに来てもらう事もできるそうだ……マナスポットを移動?


これは、エルがアオから聞いた話になる。他のマナスポットは、岩やら泉やらで動かす事は出来ないが、ブルーリングのマナスポットだけは少し特殊なのだとか。

過去、精霊王が直接、マナスポットを指輪の形に変えた事から、地上への移動だけなら不可能では無いらしい。


勿論、マナスポットにかなりの負荷をかけるため、数年は休ませる必要は出てくるらしいが。

サンドイッチを食べ終わったアシェラへ手紙を渡し、オレの考えを話していく。


「アシェラ、ライラ、そのまま聞いてほしい。手紙に書いてあったが、どうやらブルーリングでは、最低限の独立準備は出来ているそうだ。後はオレ達 次第……これからの行動で、どうなるかが決まる……このまま独立まで逃げ続けるか、若しくは直ぐにでも独立するのか……」


アシェラもライラも、何も言葉を発しない。そんな中、オレは意を決したように口を開いた。


「でもオレは、最後まで会話での解決の道を探りたい。意味は無いかもしれないけど、もう一度、殿下と話したいんだ。最悪は夜中に忍び込んで、寝室へ押し入ってでも……」

「ボクはアルドの意見を尊重する」

「分かった」


2人は反対する事も無く、賛成の意を示してくれる。


「じゃあ、どっちにしても、ここを逃げ出さないとな。アシェラ、頼めるか?」

「任せて!」


アシェラは嬉しそうに一度だけ手をわきわきして、鉄格子へゆっくりと構えを取った。左手が徐々に光り出しているのはワザと魔力を見せているのだろう。


「行く!」


アシェラが叫んだ瞬間、建物を揺るがす爆音と共に鉄格子がはじけ飛ぶ!

土煙が収まると、そこには鉄格子があったなどとは思えない、完全に開けた部屋が広がっていた。


「お、おま……こんな威力……おかしいだろ……」

「シャロンがお腹にいる間、ずっと魔力操作の修行をしてた。これはシャロンに貰ったチカラ!」


「シャロンの……そうか、「石」のチカラで魔力枯渇もしなかったからか……何ヶ月もずっと魔力操作の修行を……」

「うん!」


アシェラは溜まっていた鬱憤を晴らすように、飛び切りの笑顔で答えたのである。

魔法拳の恐るべき威力を話している間にも、辺りでは徐々に騒ぎが大きくなっていく。


さっきのは、建物を揺るがす規模の爆発だった。直に、ここへも騎士がやってくるだろう。


「アシェラ、ライラ、逃げるぞ。但し、絶対に殺しは無しだ。良いな?」

「分かった」

「うん」


こうしてオレ達は、結局 力尽くで脱獄を果たしたのである。





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― 新着の感想 ―
王子の有能な近衛隊長(笑) シレア団長も駄目だな 平民でも貴族の子どもなんだけどね、それを盾にした場合、何が起きるか理解できていないのかな? 騎士だからそこまでの思考はないのか 話し合いねぇ 脱獄…
最悪この国はエルフ族と獣人族から国交断絶されてしまうな。
色々、まわり回って発端の奴にたどり着いた時のセリフは そ、そんなの知らなかったんだー だろうかー 国の人材、大掃除するいい機会だよね 王太子の踏ん張り所
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