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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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438.シャロン

438.シャロン







ルーシェさんから、「後産があるから」と言われ、オレ、オリビア、ライラは部屋から追い出されてしまった。

本来なら、このタイミングで産湯などを用意するため、忙しく走り回る事になるのだが、ここは我が家だ。


オレの部屋には、エアコンと水洗式のトイレ、更にシャワーが完備されている。

結果、現代日本のように、蛇口を捻れば手軽にお湯を用意 出来、部屋の中は快適な温度に保たれていた。


「聞いていた話では、お湯を沸かしたり部屋を暖めたりと、産後は忙しいはずなのですが……」


こう話すのはオリビアである。今回のアシェラの出産に関して、準備に一番尽力していたための言葉だ。


「あー、まぁ、楽なのは良いことじゃないかな? ははは……」


オレは乾いた笑いで誤魔化す事しか出来なかった。

そもそも、この世界で部屋を暖めるには、火を使うしか無いわけで。


そんな事をすれば、部屋の中は煤で汚れるし最悪は一酸化炭素中毒とか……オソロシス。

すきま風が入るような あばら家なら兎も角、我が家はそれなりにお金をかけた邸宅だ。


本当に室内で火をたくと言うなら、最低でも2時間おきに換気をしなければいけなくなってくる。

その度に真冬の空気を部屋に入れるのはちょっと……赤ちゃんが風邪をひいてしまうじゃないか。


ここは是非オリビアには、我が家の住環境を満喫してほしい所である。






出産から暫くの時間が過ぎ、今はオリビアとライラに仮眠を取ってもらい、オレは自室で赤ちゃんを眺めている所だ。


「あー、かわいいなぁ……」


オレの言葉に反応したのはハルヴァだ。既に医者と看護婦は帰っており、アシェラは自室で眠っている。

この部屋にはオレ、ハルヴァ、ルーシェさん、クリスさんしかおらず、オレと同じように目尻を下げながら口を開いた。


「そうですなぁ……おぉぉ、私の手を必死に握って……おじいちゃんでちゅよぉ。元気に生まれて良かったでちゅねぇ」


え? ハルヴァ、お前、そんなキャラだったか? こんな姿、初めて見たんだけど……

驚愕した顔でハルヴァを見てると、ルーシェさんが呆れた顔で話し出す。


「ハルヴァ、アルド君も。そんなに触ったら、この子が眠れないでしょ。アシェラと一緒で、この子も一生懸命 生まれてきたの。今はそっとしておいてあげて」

「はい、すみません……」

「スマン、ルーシェ……」


「はぁ……2人も徹夜だったのだから、先ずは軽く食事をして仮眠を取ると良いわ。この子は私が責任を持って見ています」

「え、いや、だったら僕が見てますので、ルーシェさんは休んでください」


オレの言葉にルーシェさんは悪戯っ子のように口を開く。


「アルド君、生まれたばかりの赤ちゃんよ? 本当に1人で大丈夫?」


新生児の扱いなどオレに分かるはずも無い。

結果、ルーシェさんの言葉通り、休ませてもらう事にした。


「うっ……すみません。仮眠を取らせてもらいます……」

「それが良いわ。子育てはずっと続くんだもの。休める時に休んでおかないと潰れちゃうわよ?」


「そうなんですか……分かりました」

「じゃあ、アルド君。ハルヴァとクリス兄様の部屋を用意してくれる?」


「え? クリスさんもですか?」

「ああ。この子はアシェラの娘。であれば我等グラン家の希望だ。万が一が無いように、私も暫くは付いていようと思う」


「本当にありがとうございます。じゃあ、部屋に案内しますので、付いて来てください」


そうしてハルヴァとクリスさんを部屋に案内してから、3人で軽い夜食兼、朝食を摂ったのであった。






赤ちゃんが生まれて既に2日が経った。

この2日間に、父さんや母さん、エルやマール、更に子供が生まれた事を知った爺さんとクララも王都から駆け付けてくれ、忙しく過ごしている。


そんな中、全員から言われたのが、「名前は?」の言葉であった。

実は幾つかの候補は考えてあったものの、名付けは実際に生まれてからにしようと決めていなかったのである。


アシェラにも了承を貰っていたので問題無いと思っていたが、この世界では生まれる前に決めておくのが一般的なようだ。


「アル? 名前なんてちゃちゃっと決めれば良いのよ。いつまでも名無しじゃ可哀そうでしょ。ねぇ、シャロンちゃん」


こう話すのは母さんだ。地竜の巣に行った際、空いた時間で「女の子ならシャロンが良い」と、母さん、ライラ、オレで決めた事から勝手にシャロンと呼んでいる。

確かにオレも良い名前だと思う。勿論 候補の中にも入っているのは事実だ。


しかし、アシェラがいない場で決めた名前を、そのまま使っても良いのだろうか?

当のアシェラは嬉しそうにシャロン……いやいや、赤ちゃんを抱いている。


「アシェラ、皆から言われたし、確かに名前が無いと可哀そうだ。そろそろ正式に決めようか」


言われたアシェラはキョトンとした顔でオレを見つめてくる。


「どうした? オレ、おかしな事 言ったか?」

「この子の名前はシャロンじゃないの? お師匠が呼んでたからシャロンだと思ってた」


「いやいや、ちょっと待て。確かに良い名前だと思うし、オレも不満は無いけどお前が自分で決めないと嫌だろ?」

「何で?」


「何でって……」

「お師匠から聞いた。アルドが一生懸命 考えた名前だって。だったらボクはシャロンが良い。きっとこの子も気に入るはず」


「いや、確かに一生懸命考えたけど……本当にシャロンで良いのか? 他に気に入った名前があるならそっちでも良いんだぞ?」

「ううん。ボクはシャロンが良い。アルドからこの子への最初の贈り物……この子も喜んでる」


シャロンの名前を聞いて、アシェラの腕の中の赤ちゃんは嬉しそうに笑っている。


「本当に良いのか? 無理してないか?」

「アルドが真剣に考えた名前。笑うヤツがいたらボクがぶっ飛ばす!」


何と言って良いのか……こんな簡単に決めて良いの?

まぁ、日本でもオレの爺さんは5男の五郎さんだったのだが……


アシェラが気に入っているのなら、オレに文句は無いわけで。元々、オレが気に入った名前を母さんやライラが賛成してくれたのだ。

であれば、この子の名前はシャロンが良いのだろう。


「分かったよ。この子の名前はシャロン……シャロン=ブルーリングだ。きっと飛び切り美人に育つぞー! シャロンちゃん、パパでちゅよー。早く大きくなってくだちゃいねー」


アシェラの腕の中のシャロンに話しかけると、母さんは呆れた顔で口を開いた。


「だから言ったでしょ。アンタが決めた名前ならアシェラも気に入るって。ねぇー、シャロンちゃん。パパはおバカでちゅねー」


母さんの言葉に、シャロンはキャッキャッと嬉しそうに笑っている。

そうして、シャロンが疲れて眠り始めた頃、母さんは居住まいを正して、一転 真剣な顔で口を開いた。


「元気な子で本当に良かったわ。ただ、サナリスと同じで、この子の額にも青い石があるのね……」


そう、母さんの言葉の通り、シャロンの額にはサナリスと同じように、小さな青い石が輝いている。


「アル、なるべく早く、アオにチカラを封じてもらうのよ。何か事故でも起こったら、この子のためにならないわ」

「そうですね、分かりました。確かに無秩序にチカラを振るって誰かを傷つけでもしたら……物心が付いた後、シャロンが悲しみますね……」


「ええ。きっとこの子が成長して子を産む際には、シャロン自身が子供のチカラを封じるはずよ。ただ私達にマナが感じられない以上、アオに封じてもらうしか方法は無いわ」

「そうですね。分かりました。直ぐにでもアオを呼んでチカラを封じてもらいます」


「それが良いわね」


早速、証である指輪へ魔力を流し、アオを呼び出した。


「どうしたんだい?」

「アオ、見てくれ。アシェラが元気な子を産んでくれた。名前はシャロン。2人目の妖精族だ」


「妖精族?」


アオは怪訝な顔でオレに聞き返してくる。

あ、そう言えば、新しい種族の名前を「妖精族」と決めてから、コイツに何も話していなかった。


「あ、そう言えば何も言って無かったな。実は………………」


エルと一緒に種族の名前を決めた件を話していくと、アオは嬉しそうに口を開いた。


「なるほどね。妖精族。良い名じゃないか。精霊と人の架け橋になる種族に相応しい名前だ。アルドのくせに、たまには良い仕事をするじゃないか」

「「アルドのくせに」は余計だよ。種族の名前は良いんだ。それより、シャロンの周りにも下級精霊はいるのか?」


「この子はシャロンって言うのか。うん、かわいらしい良い名だね。アルドが言うように、この子の周りにも沢山の下級精霊が集まって、楽しそうに遊んでいる。みんな、シャロンが大好きで集まってるんだ」

「そうなのか……」


アオはシャロンに向き直ると、何も無い空間をキョロキョロと見つめている。

恐らく下級精霊を見ているのだろうが、あいにくオレには見る事も感じることすら出来ないわけで……


「アオ、悪いけどサナリスの時と同じように、シャロンの周りの下級精霊にも言う事を聞かないように話してほしい。分別の付かない内に大切な誰かを傷つけるような事故は防ぎたいんだ」

「分かったよ。下級精霊には僕から言い聞かせておくよ。期限はサナリスと同じ10歳までで良いんだよね?」


「ああ、それで頼む。尤も10歳になっても不安が残るようなら、延長を頼むかもしれないけどな」


アオは肩を竦めて、返してくる。


「じゃあ、僕は行くよ。グリムの件で、次は光の上位精霊に会ってくる。アイツはグリムと対になる存在だからね。上手く説得してくれると良いんだけど……」

「分かった。忙しい所、悪かったな。今度シャーベットを作ってお礼をするよ」


オレの言葉に、アオは嬉しそうな顔で消えていった。

ふぅ……これで当面は問題無いはずだ。後はマールにも頼んである、新たなチカラの代償が分かれば……


幸せそうにシャロンを抱くアシェラを見ると、非常に言い難い。

しかし、これを言うのは、オレの仕事なのだろう……


「……アシェラ、今から聞きたく無い事を言うぞ……でも、シャロンの将来にとっても大切な事なんだ。マールにも頼んであるけど、シャロンを注意深く見ててほしい。たぶん、精霊と会話ができる代わりに、何処か劣った部分があるんじゃないかと思う。シャロンやサナリスのためにも、種族の特性として早めに知っておきたい。頼めないか?」


アシェラは幸せそうな顔から一転、渋い表情を隠しもせず口を開いた。


「……分かった。身体能力が劣るならボクがしっかり鍛えるし、魔力量が少ないなら魔力操作と魔力変化を鍛え上げる!」


おま……それは本末転倒なんじゃ……

脳筋……喉まで出かかった言葉を、オレは必死に飲み込むのであった。





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筋肉は嘘をつかない!って、事にならないよね……
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