432.獣人族の王 part2
間違えて2話公開したでゴザル(>_<)
楽しんでもらえると嬉しいです(*‘ω‘ *)
432.獣人族の王 part2
いきなりのドーガ王子の知らせにより、オレは今 メイドの後ろに付いて、王の私室へと向かっている。
こんな夜更けに王の私室に招かれるなんて……まるで男娼みたいじゃないか!
前を歩くメイドも急な話だったのだろう。口元にパンくずが付いていたのは黙っていようと思う。
暫く歩いた後、メイドは他の部屋より少し豪華な扉の前に泊まり、澄ました声を上げた。
『お客様をお連れしました』
『入れろ』
返事があると、メイドは直ぐにオレへと向き直り、丁重な言葉で入室を促してくる……パンくずを付けたままで。
『許可を頂きました。どうぞ、お入りください』
『はい、ありがとうございます』
粗暴に見えないよう、ゆっくり扉を開けると、中にはドーガ王子と中年の男が座り、護衛の騎士が2人、背後を守るかのように立っていた。
恐らくは、この座っている男がグレートフェンリルの王なのだろう。
オレはフォスターク式の礼をしながら、なるべく優雅に口上を述べ始める。
『始めてお目にかかります。私はアルド=ブルーリングと申します。陛下におかれましては、このような身の私に、謁見の機会を頂け…………』
『あー、そう言うのは良い。今は正式な場じゃ無ぇ。楽にしろ』
お前もか! 王子が王子なら王も王だ。お前等、絶対に親子だよ!
『立ち話ではオレも落ち着かん。そこに座れ』
『あ、は、はい……失礼します……』
王はオレを興味深そうに見つめながら、近所のオッサンのように話しかけてきた。
『しかし、お前はとても強そうには見えんな。ドーガからの言葉が無かったら、とても信じられんぞ……』
『だろ? でもコイツは凄ぇんだ。本当に見えない速さで動くんだぜ。オレも多少は腕に自信があったが、コイツには勝てるイメージが沸かねぇよ。多分、獣人族の中で、コイツに勝てるヤツはいねぇと思う』
『だ、そうだ。流石はドラゴンスレイヤーと言った所か』
『そ、そのようなお言葉、大変 勿体なく……陛下の寛大な…………』
『だ・か・ら、そう言うのはヤメロって言ってるだろ。ただでさえ、王なんて堅苦しい事をやらされてるんだ。オフの時にもそれを演じろってのか? お前は』
『い、いえ、そんな事は……』
『ふぅ、まぁ良い。で、何でオレに会いたかったんだ? シャリと結婚する気が無いのに、オレと会う理由なんか無いだろ。わざわざ地竜なんて大層なモンまで倒して、オレにどうしても会いたいって言うから、てっきりそう言う事かと思ったんだが……』
『そ、それについては大変申し訳なく思っております……私としては、本当に王と面識を得たいと思っておりまして……』
『本当にオレと会いたかっただけだって言うのか、お前は……人族のお前が? 獣人族の王であるオレと? 何で? おかしいだろ、どう考えても。何を隠してる、言って見ろ』
この場には騎士が2人いるわけで……王と王子だけだったなら、使徒の件を打ち明ける絶好の機会ではあるのだが……
後ろの騎士をチラっと覗き見てから、丁寧に返事を返す。
『いえ、本当にお目にかかりたかっただけです。他意はありません』
王は小さく溜息を吐いたと思ったら、いきなり騎士達へ話しかけた。
『お前等、部屋の外で待て。どうやらコイツはお前等の前では話せないそうだ』
『お、お待ちを。それでは何かあった場合、お守りする事ができません! お考え直しを!』
『ハッ、コイツはドラゴンを殺したんだぞ? お前等が2,3人いても止められるわけねぇだろが。それに、コイツの身元は割れてる。フォスタークの貴族の倅が、オレを殺せるわけねぇだろ。そんな事をしてみろ、どんなに軽く見ても戦争だ。今更 種属間の戦争なんざあるわきゃねぇだろが……分かったらサッサと出てけ。ほら』
結局、騎士は王の命令に逆らう事ができず、渋々ながら出ていってしまった。
『これで良いだろ。オレはもう眠いんだ。サッサと本当の事を話せ』
これは……どう判断すれば良い。信頼関係なんて微塵も築けていない今、使徒の件を話せるのか?
しかし、人払いまでしてもらって、尚も何も語らないなど……そんな事をすれば、このオッサンは二度とオレにこんな場をくれる事は無いだろう。
で、あれば……オレは賭けに近い思いで口を開く。
『分かりました……私の目的をお話します……』
オレの雰囲気が変わってのが分かったのだろう。王と王子は少し緊張の面持ちで居住まいを正した。
『私はドラゴンスレイヤーとして、グレートフェンリルと友誼を結びにやってきました。しかし、それは王が言われたように表向きの理由です。本来の私の目的は将来に備える事。この世界の危機に立ち向かうために、同盟の打診をするためにやってきました』
『お前は何を言っている……将来の危機? 同盟の打診だと? お前の実家、ブルーリングだったか? フォスタークと戦争でもするつもりなのか? そんな事にオレの国を巻き込むな! 話にならん……』
『おっしゃる通り、フォスターク王国と戦争になる可能性は否定できません……しかし、世界の危機と言うのは、マナスポットの汚染に端を発した世界の終焉です。私の使命は、かつて始祖ギギ様が成した事と同じ、マナスポットの解放です』
『は? ぎ、ギギ様と同じ……だと……お、お前は何を……ま、まさか……』
王は何かに思い至ったようだが、「そんな事、あり得ない……」と零している。
困惑が支配する空気の中、オレは居住まいを正し、真剣な顔で次の言葉を口にした。
『はい、お察しの通り、私は今代の使徒を務めさせております。しかし、言葉だけでは信用できないでしょう。証拠を示すため、私の精霊を呼ぶ事をお許し下さい』
驚いた顔のまま、何も言葉を発さない2人を尻目に、オレは指輪へ魔力を送りアオを呼び出した。
直ぐに指輪からアオが現れ、いきなり呼び出した文句を告げてくる。
「何だよ、アルド。いきなり呼び出して。今、丁度マナスポットの調整をしてて忙しいんだよ」
「すまない、アオ。グレトーフェンリル王と謁見してるんだ。悪いが少しだけ相手をしてもらえないか?」
わざと人族語を使い、王に聞かれる事を防いでから、アオへ簡単な説明だけさせてもらった。
アオはこちらの意図を理解したのか、嫌そうな顔をしながらも王へ話しかけてくれる。
「アルドの精霊アオだよ。君達も大変だね。僕もアルドに振り回されてばかりだよ」
『あ、ぁ、ぁ…………』『こ、これは……え?』
王と王子は椅子に浅く腰掛けてずり落ちそうになっている。しかも、まともに声を出す事すら出来なさそうだ。
実際にアオと話した方が、信じてくれると思ったのだが……これでは忙しいと言うアオには帰ってもらった方が良いだろう。
「アオ、ありがとう。帰ってもらっても構わない。もしかしてまた呼ぶ事になるかもしれないけど、その時は頼むな」
「ハァ……分かったよ。じゃあ、帰る事にする。でもその前に1つだけ。アルド、気付いてるか分からないけど、ここは領域の中だ。この近くにマナスポットがある。かなり大きなヤツだよ」
「は? ここにもマナスポットがあるのか? マジで?」
「ああ。この感じ……多分、主不在のマナスポットだね」
「マジか……使徒ギギもマナスポットに王都を作ったって事か……分かった。その件も王と話してみる……」
「何でだよ。直ぐに解放すれば良いじゃ無いか」
「お前には分からないだろうけどな。ここはグレートフェンリルの王都だ。他国の者が自由に飛べるってのは色々とマズイ事があるんだよ。王の許可が無いと流石に開放は出来ない」
「もぅ、なんだよ……ハァ、本当に人は……僕に人の世の事は分からないからね。アルドに任せるよ」
「それと、主不在のマナスポットは、オレには感知 出来ないからな。解放する事になったら場所を教えてほしい」
「分かったよ。じゃあ、今度こそ僕は行くよ」
そう言ってアオは消えてしまった。この場には、オレとどうして良いのかわからず、挙動不審になった2人だけが残されている。
先ずはオレから声を発するのが礼儀だろう。
『今のが私の精霊アオです。どうでしょう、私が使徒であると信じてもらえましたか?』
未だに2人は混乱の中にいるが、流石は王と言うべきだろうか。何とか居住まいを正し、礼を持って話しかけてきた。
『さ、先ほどの無礼は平にご容赦頂きたく……わ、私はこの国の王、ゲイン=ロワ=グレートフェンリル。使徒様にはおかれましては、大変ご苦労をおかけしました事、改めて謝罪致します』
『止めて下さい。私は使徒ではあっても一介の平民です。王が頭を下げる必要なんてありません』
『そうは言われましても……使徒様と言う事は、世界を救う救世主と同義。我等にも使徒様の重責は伝わっております。例え王とは言え、この世界を救う使命をお持ちのアナタ様に、頭を下げるのは当然の事です』
『それこそ買い被りです。私のチカラなど小さな物です。誰かの助けが無ければ、満足に休息を取る事すら出来ないのですから』
こう告げた後、やっと王は少しの笑みを浮かべてくれた。
そこからは、改めて使徒の使命を話していく。マナの汚染にマナスポット、マナスポットの主に魔瘴石、話は数時間にも及び、騎士からは何度も確認の声がかかったほどだ。
全てに「問題無い」と返して、話を続けていった。
『そうですか……世界の半分のマナスポットが汚染され、放置すれば数百年後に世界が滅びるのですか……我らの伝承通りです……』
『はい。私の使命は世界の崩壊を食い止める事。そして新しい種族の国を作る事です』
『なるほど、先ほどのお言葉……新しい種族のためにフォスタークより独立されるおつもりですか……』
『はい、その通りです。獣人族である御身に、新しい種族がどうなろうと関係無いのかもしれません。しかし子孫が理不尽に扱われるのであれば、私は世界を愛せない。世界を救う大義が無くなってしまう……』
『良く分かる話です……』
『ですので、ここからは使徒では無く、新しい種族の始祖として話します。どうかブルーリングと同盟を結んではもらえませんか? 詳しくは言えませんが、幾つかの国とは既に話は出来ています。グレートフェンリルにも、是非その一翼を担って頂きたいのです。お願いします』
王は軽はずみな事は口にせず、ただ黙って何かを考えている。それは王子も同様で、事の大きさに ただ王を見つめるだけだ。
そうして、どれほどの時間が過ぎたのだろう。王はゆっくりと口を開いた。
『今この場で返事をする事は出来ません……但し、使徒様のおっしゃる事は、このグレートフェンリルにとっても無関係ではありません。国として真剣に考えて返事をさせて頂きたい。如何ですか?』
『分かりました。ブルーリングへ帰って、そう弟と父へ伝えます。真摯な対応、誠にありがとうございます』
こうして、取り敢えずの話を終えたのである。
結局、オレが部屋を出たのは、空が薄っすらと白くなり始めた頃だったのは特筆しておく。




