24.魔法使い part2
24.魔法使い part2
アシェラは水の玉を作り上下左右……自由に動かしている。
傍から見ると水の玉が空中を踊るように駆け巡っていた。
「アシェラ」
母さんが声を掛けるとアシェラがこちらに振り向くが、水の玉は制御を離れ落ちたりせず、その場でフワフワと浮いている。
「アルドに先輩の腕を見せてやって」
アシェラは母さんの言葉にニチャと笑いながら頷く……師弟 揃ってとーーーっても悪い顔をしているんですが。
まずは水の玉が氷の玉になった。
次には氷の玉が形を変え鳥の形になる。
氷の鳥が空中を飛び回っていると、いつの間にか火の蝶が飛んできた。
氷と火がお互いに近づき離れていく……幻想的な光景にオレは見惚れてしまっていた。
どれ程時間が経っただろうか、しばらくすると鳥も蝶もゆっくりと空気に溶けるように消えていく……
「アルド、どう?」
アシェラがドヤ顔でオレに尋ねてくる。
「綺麗だった……パーティの時のアシェラみたいだった」
オレの渾身の一撃に、アシェラは顔を真っ赤にして、俯いてしまう。
「はいはい。真面目に修行しましょうね~」
母さんがニヤニヤしながら会話に入ってくる。
「母様、ここは何の魔法を練習してもいいんですか?」
「良いわよ……やっぱりダメよ!」
「何故ですか!」
「周りに影響が出るような魔法は禁止よ。あと危険な物も!」
「危険な魔法はどこで修行すればいいですか?」
「だ~か~ら~危険な魔法は使うなっつってんのよ!」
「……」
「絶対にダメよ!」
「分かりました……」
「本当にダメだからね」
「お師匠、あの“分かった”は絶対に分かってない」
オレは2人に全く信用されていないようだ……解せぬ。
気を取り直して早速、魔法の修行を始める。
まずは異世界転生で鉄板の火魔法を試そうと思う。
魔力の量は握りコブシ程、形はどうせなら銃の弾だ。当然、回転はマシマシ。それを火の魔力に変化させる。なるべく温度は高めに……
(温度は原子の振動とイコールだよな……原子ちゃん動き回れ~なんちゃって)
炎の色が赤から白、白から青に変わっていく……
(狙いはあの木だ。よし、行くぞ!)
「ファイア!」
オレは火の魔法にファイアと名付け、超高速で撃ちだした。
ファイアは狙い通りに木に当たったと思った瞬間、木の幹が焼失し残りの木の残骸も盛大に燃え始めた。
木を貫通した先で大爆発が起こり炎が辺りを蹂躙していく……
「なに……これ……」
自分で撃った魔法の被害の大きさに、呆然と立ち尽くしてしまう……
母さんが叫んだ。
「火を消さないと!水を出して!」
「分かりました!お師匠」
母さんとアシェラが水を出し、必死になって炎を消している。
オレは先程から魔力を操作しようとしているが、魔力がカラッポの感じがして体がだるくてしょうがない。
チカラを抜くと倒れてしまいそうだ。
2人の頑張りのお陰で、なんとか火は消せた。
その2人だが魔力の使い過ぎなのか、青い顔をして座っている。
「アル……何したの……」
「普通の魔法を……」
オレはダルイ体を何とか立たせて、2人に謝ろうとしたが……
あ、世界が回る……これ、アカンヤツや……
オレは母さんとアシェラの目の前で意識を失った。
どれぐらい眠っていたのか、起きた時には自室のベッドの中だった。
外を見ると真っ暗だ。いったいどれだけの間、気を失っていたのか見当もつかない。
昼間の失態を思い出し、重い足取りで居間へ向かう。
屋敷の中は静か過ぎて不気味なくらいだ……
居間に着くと珍しく、母さんと父さんがお酒を飲んでいた。
父さんは兎も角、母さんが酒を飲むのは初めて見るかもしれない。
「母様、すみませんでした」
オレが声をかけると2人は驚いた顔で振り向いた。
「アル!体は大丈夫なの?」
母さんは立ち上がり、オレの体をペタペタと触る。
「大丈夫です」
オレの言葉でやっと席に座ってくれた。
「お腹は空いてない?」
「そういえば、ちょっとだけ空きました」
「そう、軽くスープとパンだけ頂きましょう。ローランドお願いできる?」
「かしこまりました」
どうやら軽く食事を取れそうだ。
「母様、僕はどれぐらい気を失っていたのでしょう?」
「今が23:00頃だから9時間ぐらいかしら?」
「そうですか……何で気を失ったんでしょう」
「魔力枯渇ね……」
「魔力枯渇?」
「人間は生きてるだけで魔力を使ってるの。体の中の魔力があまりに減ると、強制的に意識を失って眠りに入る。それが魔力枯渇よ」
「僕は魔法1発しか撃ってませんよ……」
「その1発が問題だったわね……あんな大魔法、私でも撃てないわ」
「大魔法ですか……」
「アンタをベッドで寝かした後に現場に戻ったら地面に大穴が開いてたわ。しかも、どんな高温かガラス化してた……」
母さんと話していると、ローランドが食事を持ってきてくれた。メイドは既に休んだのだろう……ローランドは明日は休みだな。
「アル、どんな魔法を使ったの?きっちり話してもらうわ」
「普通に火魔法を撃っただけですよ……」
「あれが普通なら、人間はとっくに滅んでるわよ!」
「うーん……魔力はコブシ程度、形はこんな形(テーブルに指で形を描く)、これを高速で回転させて、火の魔力に変えただけです」
「色は?火の色が明らかにおかしかったじゃない」
「あー、火の温度を上げました」
「温度?色の話をしてるのよ?」
「あー、なんて言うか火って温度が上がると赤から黄、黄から白、白から青って色が変わるんです」
「アンタ……なんでそんな事、知ってるのよ……」
「僕にも分かりません……」
「分かりませんって……」
「……」
「……」
「……」
「ハァ、まあいいわ。魔力枯渇した原因が分かったわ」
「なぜですか?」
母さんがジト目でオレを見てくる。
「普通は魔力を火にしたら、すぐに発射するわ」
「そうなんですか?」
「それを回転させたり、信じられない程の高温にしたり、高速で発射したり、そこで魔力を使っちゃったのね」
「母様が撃っても魔力は枯渇するんですか?」
「私なら枯渇しないと思うわ」
「僕だけ、何故?」
「アルの魔力量が私より少ないからよ」
「魔力量はどうやって増やすんですか?」
「増えないわ」
「え?増やし方ですけど」
「増えないの。人は生まれた時に魔力量が決まってるの。何をしてもそれは変わらないわ」
「え?じゃあ僕はこれから、魔法1発で魔力切れになるんですか?」
「あの魔法は例外よ。私でも2発は撃てるかどうか……」
「そうなんですか……」
「アルの魔力量は普通の魔法使いと同じぐらい。私の半分ぐらいだと思う」
「普通の魔法使い……母様の半分……」
「アシェラと私の魔力量が同じぐらいよ」
「アシェラの半分……ですか……」
「聞いて、魔力の量で魔法使いの価値は決まらない。同じ魔法でも練度で使う魔力量は変わってくるの」
「練度で変わる」
「そう!腐らずに続ける事が一番大切なの」
「なるほど」
「アナタには才能がある。それは保証する。魔力の使い方を覚えればきっと素晴らしい魔法使いになれるわ」
「放出系は抑えて、やっぱり近接を重視するか……まぁ、最初のコンセプト通りだな。さっきの魔法も凝縮すれば良い……頭をふっとばさなくても1cmの穴でどんな生物も死ぬんだから」
「あ、アル?聞いてる?」
「え?あ?何の話でしたっけ?」
「気を落とさないで、素晴らしいまh……」
「あ、僕は気にしてませんよ。それよりも、さっきの魔法を改良してより洗練させないと」
「あ、そう……気にしないんだ……そう……そうなんだ……」
「今の魔力量でも出来る事は沢山ありますから!」
「そうね……」
「では僕はそろそろ寝ますね!おやすみなさい。父様、母様」
「おやすみ……アル」
「おやすみ」
起きたばかりだが10歳で夜更かしはよろしくない。せめてベッドの中に入るためにオレは自室へと向かった。
残された居間での会話。
「ローランド、後は大丈夫だ。もう休んでくれ。明日は1日ゆっくりしてほしい」
「分かりました。ありがとうございます。ヨシュア様」
ローランドが退出してヨシュアとラフィーナだけになる。
グラスにワインを注ぎゆっくりと味わう。
「ラフィ、アルはしなやかに育ってるね」
「そうね……」
「どこまで行くんだろうね、僕達の息子サマは」
「本当に……すぐに見えなくなっちゃいそう」
「使徒……」
ヨシュアの言葉、にラフィーナが反応し本気で睨みつける。
「決まった訳じゃないわ」
「そうだ。そうだね。ごめんよ、僕のラフィ……」
「指輪なんか見せなきゃ良かった……」
「……」
ブルーリングの夜はゆっくりと更けていった。




