106.撲殺少女 part1
106.撲殺少女 part1
母さんやアシェラが到着した日の夜に“明日はルイス達と依頼に行く約束がある”と言うと付いて行く。と即答された。勿論、母さんとアシェラ両方からだ。
ついでにナーガさんの事を話すと待ち合わせよりかなり早目に出ると言われた。きっとナーガさんと積もる話があるのだろう。
久しぶりの対面を邪魔する程、オレは野暮じゃない。
オレとエルは予定通りの時間に家を出る事にした。アシェラは母さんに付いて行くそうだ…オレとエルには判らない師弟の何かがあるのだろう。
次の日の朝--------
寝ぼけながら歩いているとアシェラに会った。昨日の事を思い出し一気に眼が覚める。
「おはよう。アルド」
少しの笑みを浮かべながら“おはよう”の挨拶をされた。
こんな毎日が続くならオレは死んでも良い・・やっぱり死んだらアシェラに会えないから死にたくない!
「おはよう、アシェラ。キレイだ…」
こんな事言うつもりは無かったのに最後の部分をボソッと呟いてしまう…
アシェラは恥ずかしそうにしながらも嬉しい様で上目遣いでオレを見て来る・・可愛い。
まるで光に引き寄せられる虫の様にフラフラとアシェラに近づいて行く…ああ、、歯を磨いていな…と頭を過るが、抗いがたい引力を感じアシェラへと引っ張られて行く。
昔はアシェラの方が高かった身長もいつの間にか同じぐらいになっていた。
ゆっくりとお互いの顔が近づいて行く…
「あー、ゴホン!」
現実に引き戻される。
周りを見ると爺さん、父さん、母さん、エル、クララ、マール、ファリステア、ユーリ、アンナ先生、がこちらを見ている。
当然だろう。オレは歯を磨きに洗面所に来た所だったのだ。洗面所は水汲みの関係から1階の厨房の近くにある。
これから支度をする人や朝食を摂る人がいるのは当たり前なのだ。
「あー、アル、アシェラ。婚約してるとは言え節度を持つ様に…後、なるべく人前では…その…控えて貰えると助かる」
父さんが代表して明後日の方を見ながら注意してくる。
「「す、すみませんでした」」
オレはすぐに洗面所に向かい、アシェラは顔を真っ赤にして空間蹴りでどこかに逃げてしまう。
何故アシェラを見るとこうなるのか…解せぬ。
オレが朝食を摂り終わる頃には母さんとアシェラは既にギルドに向かっていた。
そろそろ出かける準備をするか。っと自室へと向かう。
鎧に短剣二刀、予備のナイフにリュックを背負った。厨房に行って干し肉を補充したら準備完了だ。
居間でお茶を飲んでるとエルがやってくる。
「兄さま、お待たせしました」
「待ってない。エルもお茶を貰うか?」
「僕は大丈夫です」
「そうか、じゃあ行くか」
「判りました」
オレとエルで冒険者ギルドへ向かうのだが何か胸騒ぎがする。
「エル。何か胸騒ぎがするんだが、母様やアシェラ大丈夫と思うか?」
「母様とアシェラ姉…大丈夫じゃないと思います…」
「だよなぁ。お爺様や父様がオレを見るのってこんな気持ちなんだろうな」
「…そうですね」
「屋根の上を通るぞ」
「はい」
そこからは壁走りと空間蹴りを使い最速、最短でギルドへ向かう。
ギルドの前には沢山の冒険者が転がっていた…誰がやったかは想像できても、何でこうなったか全く想像出来ない。
ギルド前には母さんらしき人が片手に飲み物を持ち冒険者を見下ろしている。
そして転がった冒険者の中心にアシェラらしき少女がたった1人立ち尽くしていた。
オレとエルは爺さんに空間蹴りの禁止を言われているので建物の影で地上へ降り、アシェラの横まで走り寄る。
「アシェラ…これはお前が?」
「半分はお師匠がやった」
「母様が?」
「アルドが夏に帰った時に使ってたウィンドバレット(非殺傷型)。あの魔法を使って倒してた」
「お茶を飲みながら?」
「飲みながら」
あの状態から魔法を発動して蹂躙していた様だ・・何か強くなってないか??
良く見ると2人の装備が変わっている。
「その装備…」
「アルド達がワイバーンを倒したって聞いたお師匠が、ワイバーン以上の装備じゃないと嫌って言い出して…」
「そうか、ちなみに何の皮なんだ?」
「レッサードラゴン」
「どらごん…ちなみにお幾ら?」
「神銀貨3枚…」
「か、神銀貨だと!!」
「うん」
なんてお高い物を買うんだ。まあリバーシの利益もかなりの物だと聞くし大した影響は無いのだろうが…
しかし冒険者をこのまま寝かせておくわけにもいかない。
「アシェラ、エルと2人で回復して端にどかしてくれ」
「判った」
「判りました。兄さま」
この場の処理をアシェラとエルに任せて、優雅にお茶を飲んでる“氷結さん”に向かって歩き出す。
「母様、何をやってるんですか」
「あら、私達がギルドに入ろうとしたら絡んで来たのよ。だから軽く遊んであげただけ」
オレは普段のルイスやナーガさん、爺さん、父さんの気持ちが痛い程に判った。
「はぁ、判りましたから。もうじっとしてて下さい」
そう絞り出すのが限界だ。ナーガさん…ギルドの良心ナーガさん助けてください。
オレは心の中で叫んでいた。
「これはどういう事ですか」
ナーガさんの声が後ろから聞こえる。振り向くとナーガさん、ジョー、ノエルの3人がこちらに歩いてくる所だった。
「ナーガさんとジョーとノエルが一緒?」
オレの言葉に3人が答える。
「学園の長期連休にアルド君が“爪牙の迷宮”に入れるように根回しをしていたんです」
「ジョーとノエルも?」
「オレは相談役みたいな物だな」
「私はバルザ様から“調整しろ”と言われたからここに来た」
「2人と一緒にギルドマスターに会って来たんですよ」
影で色々な人に迷惑をかけていた様だ。
「それで、この騒ぎはまたアルド君が何かしたんですね…」
「あ、いや、これは、オレじゃ無くて、、」
オレが責められていると母さんが声をかけてくる。
「久しぶりね、ナーガ。隣は確かジョグナ君…だったかしら?」
声の方向を見たナーガさんとジョーは眼を見開き口をポカンと開け呆けていた…
「何よ。久しぶりの再会なのに。もしかして忘れちゃったかしら?」
母さんの少し拗ねた言葉にナーガさんが走りだす。
ナーガさんは母さんを抱きしめポツリ、ポツリと話しだした。
「ラフィーナ…」
「久しぶりね。ナーガ」
「満腹亭…」
「え?」
「酒浴の館…酒屋:飲兵衛…服屋:ゴージャス…服屋:成金…装飾店:悪趣味…」
「な、何を言ってるのかしら・・」
何故か母さんは冷や汗をダラダラと流し始める。
「もう離さない…」
「ナーガ、ちょっと…一回離してくれる?」
「代わりに払ったツケを返すまで絶対に離さない!!」
「わ、私、ツケなんてあった?もう10年以上前で覚えてないわぁ…」
そこにジョーがトドメを刺す。
「アルド達には関係ないからと言わなかったんですが…オレが貸した金も返して貰えると…」
オレ、こいつの息子なの本気で嫌になりそうだわ。
オレとエル、アシェラで“氷結さん”を完全に拘束した。最悪はコンデンスレイも…親殺しの十字架を背負う覚悟は出来てる。
こいつは金を借り逃げした犯罪者だ。半端は許されない。
オレはギルドの酒場の机に“氷結さん”を座らせてライトの魔法の光を当てる。
「もう、吐いちゃあどうですか…アンタがツケを踏み倒そうとしたネタは上がってるんだ!」
オレの刑事役に“氷結さん”が飄々としながら話す。
「あっしゃ、覚えがねぇですねぇ。何か証拠でもあるんですけぇ?」
オレと母さんの小芝居にナーガさんが切れて大爆発する。
「お前等いい加減にしろよ。親子でふざけやがって…」
オレと母さんはあまりの剣幕に2人で抱き合い謝罪の言葉を述べだした。
「すみませんでした。ナーガさん」
「私が悪かったわ。ナーガ。お金はきっちりアルドが払うから」
「え?」
「え?」
ナーガさんが怖い…もうふざけるのは止めねば。
「ナーガさん、それで幾らになるんでしょうか?」
不機嫌顔でナーガさんが答える。
「いらない…」
「え?お幾ら?万円??」
「もう昔の事だしいらない。急にいなくなった、ラフィーナに嫌がらせをしたかっただけよ…」
「…一応、金額だけでも教えて貰っても?」
「…アルド君、本当に聞く?」
「…やっぱり止めておきます」
「それがいいわ」
「すみません…」
オレがナーガさんと話していると張本人の“氷結さん”がお茶を飲んでくつろいでいた。
「それにしてもジョグナ君、大きくなったわねぇ」
「い、いえ、ラフィーナさんにはお世話になって…」
まるで近所のおばちゃんである。男は子供の頃を知られている近所のおばちゃんには弱いのだ。
そうこうしているとルイスとネロがやってきた。もう収拾つかないぞ…これ。
オレ、エル、アシェラ、母さん、ルイス、ネロで挨拶を交わしなんとか場を落ち着ける。
ルイスとネロがオレに“アシェラ綺麗になってないか?”と耳打ちしてきた。
オレは“風呂の効果だ”と小声で言ったらアシェラに脇腹を殴られてしまう。その拳に毒も追加効果で付いてたのは秘密だ。
その様子を冒険者達が見て驚愕の声を上げている。
ジョーなど“あの娘がお前より強いのか…”としみじみと囁かれた。
オレはやけになって叫ぶ。
「お前等!ブルーリングの女は最高だが最強なんだ!」
何故か拍手が起こったのは謎だ。
オレ達は依頼の約束があったので母さんと別れて依頼に向かう。アシェラはこっちに付いてくる様でルイス、ネロと久しぶりの挨拶をしていた。
朝から色々とあったが気を取り直して行こうと思おう。
次話は毎日8:00に掲載の予定です。
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誠に勝手ながら11/10~12/20の間の更新を休ませてもらいます。
すみませぬ…ストックが尽きました…orz
必死で書きますゆえ何卒、ご勘弁を。




