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第39話 随分と怪しい奴だな

「よかった。見つかった」


 魔法袋を発見して、俺は安堵の息を吐く。

 中にはエクストラボスの攻略報酬である装備類が入っていた。


 今のところ俺以外には誰も装備できないとはいえ、他では手に入らない貴重なものだからな。

 もう一度獲得するのも難しいだろうし。


 ちなみに毒の方は放っておいたら勝手に消えた。

 効果時間がそれほど長いものではなかったようだ。


 それからリュナさんと協力し、両腕を失ったお姉さんを含め、幹部っぽい連中を抱え上げ、キンチャン商会へと運んだ。


「おお、小森殿にリュナ殿! 戻ったでござるか!」


 金ちゃんが出迎えてくれる。


「拙者のせいで、迷惑をかけたでござる。申し訳ない」

「いや、気にするなって。それよりもずっと世話になってるしな」


 頭を下げて謝ってくる金ちゃんだが、今まで色々と助けてもらったことを思えば、このくらい大したことではない。


「いやいや、それを言うなら、拙者の方が世話になっているでござるよ」

「そんなことないって。俺の方が世話になってるって」

「それは違うでござる。拙者の方が……」

「ごほん」


 どちらも引き下がらない俺たちを見かねてか、リュナさんが咳払いと共に割り込んできた。


「そこはもうお互い様ということでよろしいのでは?」

「「……」」


 確かに不毛なやり取りだったなと、苦笑する俺と金ちゃん。


「それよりこの者たちをいかがいたしましょう?」

「後のことは金ちゃんに任せるよ」

「こやつらが小森殿を……しっかり背後関係を聞き出さねばならぬでござるな」


 不敵な笑みを浮かべる金ちゃん。

 どんな手を使うのか気になるが、怖いので聞かないことにしよう。







「さて。少し中断しちゃったが……次のダンジョンに行ってみるか」


 ここ王都の近くにあるダンジョンは全部で五つ。

 今までにDランクの『コボルトの鉱窟』と『ゴブリンの巣穴』、Cランクの『オークの暗森』と『魔蟲の樹洞』を攻略し、すべてエクストラボスも倒して貴重な攻略報酬をゲットしてきた。


 そして最後の一つが、Bランクに定められている『猛牛の層塔』である。


 クラスメイトたちも現在レベル上げに利用しているダンジョンらしく、かなり難度が高いようだ。

 今の俺でも通用するのか分からないが、他のダンジョンは攻略済みだし、挑戦してみようと思う。


 最悪、死んだところで問題ないしな。


 王都を出て、しばらく南に進むこと小一時間。

 荒野のど真ん中に、ぽつんと聳え立つ巨大な塔が見えてくる。


「あれが目的地である『猛牛の層塔』だな。ん? あいつらは……」


 塔の麓の方から、こちらに向かって歩いてくる集団の姿があった。

 恐らくダンジョン探索を終えて、王都に戻るところなのだろうが、その中に見知った顔が幾つか交じっていたのである。


「それにしても、二人が加わってくれて本当に助かってるわ。さすがは異世界人ね」

「ほんと、このBランクのダンジョンでも楽に探索ができるようになったし」

「はは、俺たちなんて他の連中に比べたら全然だけどな」

「特に勇者は桁違いだったぜ」

「確か雷霆の勇者だったわよね? 他国に買われていっちゃったって聞いたけど。一目見たかったなぁ。ねぇねぇ、どんな人だったの?」


 この世界で俺が知っている顔と言ったら、クラスメイトしかいない。

 といっても、不登校だったのであまり覚えてはいないのだが。


 どうやら彼らは冒険者になったようだ。

 しかも女性ばかりのパーティに加わったらしく、鼻を伸ばしながら楽しそうに話をしている。


 ……お世辞にも顔が良い連中ではないが、異世界人というだけでモテるのだろう。


「ん?」


 そんな彼らの一人が、俺に気づいてこっちを見てきた。


 だ、大丈夫だ。

 今の俺は仮面をつけているし、バレないはず。


「仮面に黒い外套……なんか随分と怪しい奴だな……冒険者か?」

「もう近いうちに陽が沈むぞ? まさか、こんな時間からダンジョンに挑むのかよ。しかもソロで。ますます怪しいな……」

「しっ、聞こえるわよ」


 よし、俺だとは感づいていないようだな。


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ひきこもり
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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ怪しいわな
[一言] 再開待っていました。
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