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第3話 常に経験値が入り続けます

 高い才能を持つという異世界人だが、レベル1の現状ではひ弱な子供でしかない。

 命を狙われる危険性もあることから、しばらくは王宮の庇護のもと、レベル上げなどのサポートを行ってくれるらしかった。


 ただ、俺はそれを辞退することにした。


 なにせ俺の職業は「ひきこもり」である。

 前例のない職業だということで詳しくは分からないが、恐らく部屋に引き籠ってこそ真価を発揮するはずだ。


 ……発揮すると信じたい。


 そこで俺は王宮を出て、街のどこかで部屋を借りてそこに引き籠ることにしたのである。

 王宮内の部屋に引き籠るという手もあっただろうが、さすがにそこまで面の顔は厚くないし、何よりクラスメイト達の近くにはいたくなかった。


「100万ゴールド……金貨十枚か。数年は暮らしていける金額だというが……まぁ、これで何の役にも立ちそうにない奴を追い出せるというなら安いってことか」


 王宮からは引き止められるどころか、すんなり認められ、しかもお金まで貰うことができた。

 このお金は非常にありがたい。


 ちなみに神野勇気は別格だったが、他の連中の初期ステータスも俺より遥かに高かった。

 各数値がだいたい5~10くらいで、オール1の俺は断トツで雑魚。

 そりゃ王宮に居られたところで困るだろう。


「ここか」


 不動産に王宮から貰った紹介状を見せると、その日のうちに部屋を貸してもらうことができた。


 今にも崩れそうなボロアパートだ。

 腐りかけた木製のドアを開けて中に入ると、そこは六畳ほどのワンルーム。


 部屋には風呂もトイレも付いていない。

 トイレだけは共用だが、風呂は近くの大衆浴場を使う必要があった。


「さすがに安いところにし過ぎたかもな……」


 稼ぐ当てがないので、できるだけ家賃の安いところにしたのだが、失敗だったかもしれない。

 まぁでも、住めば都と言うし、そのうち慣れるだろう。


 そうして部屋の中に足を踏み入れたときだった。


〈この部屋を自室に指定しますか?〉


 そんな声が頭の中に響いた。


「ん、何だ?」

〈自室に指定することで、ユニークスキル:部屋の主が発動します〉

「ユニークスキル……部屋の主。ステータスにあったやつか」


 ユニークスキルというのは、その名の通り、唯一無二の特別なスキルだ。


 必ずしも世界で一人しか所有していない、というものではないそうだが、それでも非常に希少であることは間違いない。

 そして強力なものが多いという。


 どんなものか分からないが……ひとまず許可してみるか。


〈この部屋を自室に指定しました。ユニークスキル:部屋の主が発動しました〉

〈自室にいる限り、常に経験値が入り続けます。ただし、それ以外では経験値を獲得することができません。連続して自室にいる時間が長くなればなるほど、獲得できる経験値が多くなります〉


 ……え?


「自室にいる限り、経験値が入り続ける……?」


 つまり引き籠っていれば、それだけでレベルが上がっていくということ?

 それってかなり強力なのでは?


 ただ、他の方法では経験値が獲得できなくなるデメリットもあるようだし、どうなのだろうか……。


「良いのか悪いのか、実際の獲得量を比べてみないと分からないな。連続して引き籠っていると経験値が多くなるみたいだし、それにもよるか」


 ちなみに経験値はステータスから確認することができるようだった。


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 経験値 0/100

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 0が現在の経験値で、100が次のレベルに必要な経験値らしい。

 まだ1も入っていないようだ。


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 経験値 1/100

---------------------------------------------------------------


「……あっ、増えた」


 何もしていないのに経験値が本当に入ってきた。

 ユニークスキルが発動してから、だいたい十分、いや、十五分くらいか。


「このペースで経験値が入り続けると仮定したら……一日で100になってレベルアップする感じだろう」


 それが早いのか遅いのか、この世界の相場を知らない俺にはまったく分からない。


「ともかく今は引き籠り続けるしかないな。何もすることないし……寝るか」


 俺は床に寝転がった。


「布団が欲しいな……」


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ひきこもり
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