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第26話 床から生えてきたぞ

 そこは広大な空間だった。

 足を踏み入れると、扉が勝手に閉まってしまう。


「ボスを倒すまで出られないパターンか」


 となると、ダンジョンボスというのは、通常、十分な安全マージンと攻略情報を得てから望むべき相手なのだろう。


 空間の向こうにそれらしき魔物がいた。


 通常のコボルトより二回り以上も巨大な体躯。

 体毛の上からでも分かるくらい全身の筋肉が隆起し、手にしているのは刃渡り一メートルを超す大きな鉈だ。


 これは後から知ったことだが、ここ『コボルトの鉱窟』のボスモンスターは、エルダーコボルトというコボルトの上位種らしい。


 そのエルダーコボルトは、五体ものコボルトを侍らせ、侵入者である俺の存在を察知したのか、顔を跳ね上げて雄叫びを轟かせた。


「ワオオオオオオオオオオンッ!!」


 それを合図に、手下のコボルトたちが一斉に襲い掛かってくる。


「「「ギャンッ!?」」」


 だが並みのコボルトなど一撃でキルできるので、何の障害にもならなかった。

 五体がほぼ同時に地面に倒れ、そのまま動かなくなる。


 手下をやられたことがトリガーとなったのか、エルダーコボルトが再び咆哮を響かせると、灰色だったその体毛が赤く染まっていく。


「いきなり怒りモードかよ」


 身体の割に俊敏な動きで迫ってくると、巨大鉈を豪快に振り回しての一撃を繰り出してきた。


 ガァンッ!!


 まともに喰らった俺は、二、三メートルほど吹っ飛ばされた。


---------------------------------------------------------------

 HP:2949

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「今ので50くらいか」


 だが受けたダメージは思いのほか低かった。

 ボスならもうちょっとくらい頑張ってほしかったところである。


「こっちから行くぞ」

「~~~~ッ!?」


 距離を詰め、胴を斬りつける。

 それだけで巨体が弾き飛び、激しい血飛沫が舞った。


「ガルァッ……」


 さすがに一撃では倒せなかったようだが、かなりのダメージを与えてしまったらしい。

 さらに追撃を連続で見舞っていくと、エルダーコボルトはひと際大きな叫び声とともに地面へ倒れ伏してしまった。


「――ダンジョンボス:エルダーコボルトを倒しました」

「――おめでとうございます。ダンジョン『コボルトの鉱窟』クリアです」


 そんな声がダンジョン内に響く。

 いつも頭の中に聞こえるアナウンス音に近いが、今のは実際に耳で聞こえる音だった。


「もう終わったのか。呆気なかったな。……ん? 宝箱が出現したぞ」


 攻略報酬だろうか。

 開けてみると、入ってきたのは鉱物らしき物体だった。


「ダンジョンの攻略報酬だし、それなりに良い物だろう、たぶん。後で金ちゃんに鑑定してもらおう」


 そう思いながら魔法の袋の中に仕舞っておく。

 ちなみにエルダーコボルトからのドロップは、「金鉱石」だった。


 と、そのときである。


「――特定条件『ソロでダンジョンボスを初見攻略する』の達成が確認されました」

「――エクストラボスに挑戦することができます。挑戦しますか?」


 また別の声が響いた。


「え? 何だって? エクストラボス?」


 確かに俺は、単身でダンジョンボスを初見攻略した。

 どうやらエクストラボスとやらに挑戦するための条件を、偶然にも達成していたようだ。


「初見攻略っていう条件から考えて、今回を逃したらもう戦えなくなるってことか。だったら挑戦一択だろ」


 どんなボスが現れるのか分からないが、ここで「いいえ」を選ぶわけがない。


 ちなみにHPは時間経過で少しずつ回復していくため、現在は2964/3000である。

 満タンではないが十分だろう。


「もちろん挑戦する」

「――エクストラボスが出現します」


 どこから現れるのだろうと思っていたら、地面が急に盛り上がり始めた。


「おいおい、床から生えてきたぞ」


 もしかしたらダンジョンの魔物はこんなふうに生まれてくるのかもしれない。


 それにしてもやたらと巨大な魔物だ。

 先ほどのエルダーコボルトよりも、さらに二回り以上は大きいだろうか。


 やはり犬頭なので、こいつもコボルト種なのだろう。


「ガルアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 そうして特大の咆哮とともに顕現したのは、コボルトの最上位種、キングコボルトだった。


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[気になる点] 地面から生えてくるなら、先制攻撃で頭を攻撃出来ないのでしょうか?
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