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第25話 もぐもぐもぐ

 気づいたら五時間くらいアバターを操作していたらしい。

 いつもならとっくに夕食の時間だった。


「ごはん! ごはん!」


 お腹が空いたらしいレーニャは御立腹の様子だ。


「すぐ作るから待ってろ」


 レーニャがあまり待てそうにないし、冷凍食品でいいな。

 最近は質のいい冷凍食品が沢山あって、向こうの世界での引き籠り生活でも非常に重宝していた。


 俺は冷凍庫に入れておいたやつを適当に見繕い、レンジで温めていく。


「食べ終わったら容器ごとこのゴミ袋に捨てておくんだぞ」

「もぐもぐもぐ」

「聞いちゃいねぇ」


 食べることに夢中なレーニャを放っておいて、俺は再び意識をアバターの方へと戻すのだった。



    ◇ ◇ ◇



「なぁ、あれ、人の足じゃねぇか?」

「えっ? うわっ……ほんとだ……」


 ちょうど地上に帰還しようとしていたときだった。

 ダンジョン『コボルトの鉱窟』に挑んでいたその新米冒険者たちのパーティは、梯子のところまで戻ってきたところで、人の足らしきものが岩壁の陰から飛び出しているのを発見してしまう。


 身体の方は見えないが、足を投げ出すようにして座っているのか、あるいは倒れているのか。

 いずれにしても、あまり好ましい状態ではないだろう。


「負傷者かも……」

「し、死んでる可能性もあるぜ」


 恐る恐るその足の方へと近づいていく。

 気づいてしまった以上、さすがにこのまま放置していくのは後味が悪かった。


「っ……この人は……」


 やがて全貌が見える位置までやってきたとき、彼らはハッとする。

 そこに座り込んでいたのは、ダンジョンの入り口で見かけた、あの高性能装備で身を固めた仮面の人物だったのである。


 こんな重装備なのに、コボルトしかいないこのダンジョンで、負傷により動けなくなったのだろうか。

 本体どれだけ弱いんだと、思わず笑ってしまいそうになるのを何とか堪えて、恐る恐る声をかけてみる。


「ええと……大丈夫ですか……?」

「返事がない……ただの屍?」

「その割には装備も身体も綺麗な気がするけど……」


 見たところ確かに外傷はない。


「……寝てるとか?」

「ダンジョンで? ソロで?」

「だとしたらめちゃくちゃヤバい奴じゃん……」


 声をかけても反応がないので、軽く揺すってみることに。

 だがそれでも起きる気配はない。


「……仮面、外してみる?」

「そ、そうだな」


 と、そのとき。

 今までウンともスンとも言わなかった謎の仮面が、いきなり身体を起こしたのである。


「「「うおっ!?」」」


 思わず悲鳴を上げて仰け反ってしまう。


「い、生きてた……」

「あ、いや、俺たち、たまたまここに倒れてるの見つけて、大丈夫かなと……」


 突然ことに狼狽える彼ら。

 一方、仮面は無言のままゆっくりと彼らに背を向けると、


 ダダダダダダダダダッ!!


 猛スピードで去っていってしまったのだった。


「な……何だったんだ、あの人……」

「……たぶん、あまり関わってはいけない相手だと思う」



    ◇ ◇ ◇



 マジでビビった。


 アバターに意識を移したと思ったら、すぐ目の前に人がいたのだ。

 驚きのあまり思わず無言で逃げてしまったよ。


「もうちょっとちゃんとしたところに隠れておけばよかった。今後は気を付けないとな……」


 その後も探索スキルを頼りにダンジョンを進み続け、やがて辿り着いたのは仰々しい装飾が施された両開きの扉だった。


「いかにもボス部屋への扉って感じだな」


 どうやら最深部にまで来てしまったらしい。


 結局ここまで俺は、ほとんど魔物からダメージを受けずに済んでいた。

 コボルトリーダーと呼ばれるコボルトの上位種とも何度か遭遇したが、大したことなかったしな。


「ボスはどうだ?」


 事前情報はゼロだが、もちろん引き返すという選択肢はない。

 他の連中にとってはリアル世界だが、アバター越しの俺からすればこれはゲームと同じ。


 たとえ死んだところで再びアバターを作ればいいだけで、何のリスクもない。


「……装備はその場に放置されるかもしれんが」


 デスペナルティの可能性に少し怯えつつも、俺は勢いよく扉を開けた。


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ひきこもり
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― 新着の感想 ―
[一言] アバターでは面白く無い、緊張感の欠片も無い、所詮引きこもり、この先もこのままアバターを出すとVR物と変わらない微妙な感じに思えてしまうので自分はここまで。
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