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第24話 右の道を進もう

「……ヤバい」


 コボルトが敵ではないことが分かって、順調にダンジョン内を探索していたはずの俺だったが、大きな問題にぶつかってしまった。


 迷ってしまったのである。


「思っていたより広大だったな。ゲームだとどんなにリアルなやつでも、せいぜい一時間もあれば踏破し尽くせたのに」


 技術的には幾らでも広いダンジョンを作れたのだろうが、そんなプレイヤー泣かせのゲームは流行らないからな。


 だが異世界は違う。

 迷子になってしまうと最後、永遠に出られなくなるようなダンジョンが存在していてもおかしくない。


「このまま行き当たりばったりで進んでいるとマジでそうなりかねない。こうなったらスキルを取得しかないか。確か、役に立ちそうなやつがあったはず……」


---------------------------------------------------------------

マッピング 100

方向感覚 100

探索 200

---------------------------------------------------------------


「この辺りか」


 どれも要求されるスキルポイントが多い。

 引き籠りには不要なスキルだからだろう。


 幸い2000ポイント残っているので、どれも取得することは可能だが……。


「どのスキルがどんな効果を持つのか、取得するまで分からないから困るよな」


 実は王宮に残っていたら、スキルについての授業を受けることになっていたらしい。


 もっとも、俺が取得するようなスキルは特殊なものばかり。

 なので、どのみち王宮でも分からないだろうと思っていたのだが、まさかここにきて一般的なスキルの知識が必要になるとは。


 せめてそれだけ聞いてから王宮を出ればよかった。


「仕方ない。困ったときの金ちゃんだな」


 リモート通話スキルを使うと、すぐに応答があった。


『なるほど、それなら探索スキルが一番おススメでござるよ。何かを探すときに役立つスキルでござるが、ダンジョンなどで正しいルートを見つける際にも使えると習ったでござる』


 やはり探索スキルの効果は、王宮で教えてもらっていたようだ。


「じゃあ探索を取得しよう」


 200ポイントを消費し、探索スキルを取得する。


---------------------------------------------------------------

探索LV2 400

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 レベルを上げるには、さらに400が必要らしい。


「ひとまずレベル1でどこまで使えるのか確かめてみないと」


 そうしてダンジョンの攻略を再開する。


「分かれ道だな。ん? これは……」


 前方に現れた分かれ道。

 それをよくよく見ていると、視界に文字が浮かび上がってくる。


 右の道:63%

 左の道:28%


「なるほど。金ちゃんが言っていた通りだ」


 探索スキルを取得していれば、行くべき方向に迷った際、どちらに行けば目的地に辿り着けることができるのかを、確率で表示してくれるというのである。


 あくまで確率なので、必ず当たるというわけではない。

 それでも完全な二択を直感頼りに進んでいくよりは遥かにマシだ。


「右の道を進もう」


 俺はとにかく確率の高い方を選んでいくことにした。

 万一、間違っても構わないから気にせずどんどん進む方が、結果的には早くゴールに辿り着くことができるだろう。


「お、縦穴だ」


 やがて発見したのは、縦方向の穴だ。

 簡易な梯子がかかっている。


「下へ行くのが88%か。つまり下に行けってことだな」


 俺は迷うことなく梯子を下りていく。

 と、そのときだった。


「痛っ? ……何だ? 今、何かが顔に当たったような……」


 確かに何かが俺の顔に当たった感触があったのだが、周囲を見回してみてもここには俺しかいない。

 どこかから石が飛んできたというわけでもないだろう。


『ごはん!』

「ぶごっ!? 今度は腹……?」


 しかも今、声がしたような……。


「ああ、もしかして本体の方か」


 ハッとして、謎の声の正体に思い至る。

 今の俺は、俺と瓜二つに作られたアバターを操作しているだけで、本当の俺は部屋に引き籠っているのだ。


「……仕方ないな。この陰にアバターを隠して……」


 近くにあった窪みに入り込んだ俺は、アバターから本体へと意識を戻す。


「ごーはーん! ごはん!」

「分かった。分かったからお腹から退いてくれ」

「っ! おきた!」


 するとベッドで横になる俺の腹の上に乗っかり、レーニャが喚いていた。


「ごはん! たべる!」


 どうやらお腹が空いたらしい。


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