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第21話 外に出てみるか

 アバターの方に意識を移した状態だと、本体の俺の方は動けなくなってしまうらしい。

 その場に突っ立ったままの本体の身体を、アバターの俺は抱えてベッドの上に移動させた。


「これでよし、と。……さて、外に出てみるか」


 アバターを操り、俺は玄関へと近づいていく。

 ドアを開けた。


「……ごくり」


 ゆうに300日ぶりの外。

 眩しい日差しが空から降り注ぎ、俺は玄関から最初の一歩を踏み出すのに躊躇してしまう。


 一年近くもずっと部屋に引き籠り続けたのだ。

 明るい外の世界を前に、戸惑うのも当然のことだろう。


 だがこれはアバター。

 本物の俺は相変わらず部屋に引き籠ったままで、アバターが外に出るだけである。


 リアル度は違うが、要するにゲームと同じ。

 それなら慣れたものだった。


 俺は玄関から外へと出た。

 柔らかい土の感触……マジでリアルだな。


 ドアを閉めてアパートの敷地を出る。

 振り返ってみると、相変わらずボロボロのアパートで、よくこんなところに300日も居続けたなと思う。


 俺は異世界の街を歩き回ってみることにした。

 王宮からほとんど一直線に引き籠ったので、街の様子もほとんど知らないのだ。


 街の中心に王宮があって、周囲は城壁で囲まれている。

 道行く人たちは大半が西洋風の顔立ちだが、異国から来たのか、時々、東洋風の人が交っていた。


 リュナさんと同じエルフの血が混じっていそうな人も見かけた。

 あのずんぐりとした身体つきの男性はドワーフだろうか。


「あそこ、随分と立派な建物があるな。随分と忙しなく従業員っぽい人たちが出入りしてるし……何かのお店か?」


 でかでかと目立つ看板が掲げられていた。

 文字を読んでみる。


『キンチャン商会』


「ぶふっ!?」


 金ちゃん!?

 まさかあれ、金ちゃんが設立した商会の建物なのか……?


 いやいや、金ちゃんの商会はまだ一年も経ってないはず。

 幾らなんでもあそこまで……。


「あの……すいません」

「へえ、いらっしゃい!」


 恐る恐る従業員らしき人に声をかけると、めちゃくちゃ元気な返事が返ってきた。


「この商会って、もしかして異世界人が立ち上げた……?」

「ええ、そうです! 商会長のキンチャン様は異世界からいらっしゃった方ですよ!」


 マジか。

 やっぱり金ちゃんだった。


「異世界からって……まだ一年も経ってないはずですよね?」

「実はそうなんですよ! キンチャン様はご自身で立ち上げたこの商会を、その素晴らしい手腕によって僅か一年足らずでこの街有数のものへと発展させてしまわれたのです!」


 俺が引き籠っている間に、金ちゃんは一体どこまで行ってしまったのだろう……。


「あれ? その顔つき……もしかして、あなた様も異世界人では……?」

「え? あ、はい……一応……」

「なんと!? ということは、キンチャン様のお友達ですか!?」

「ま、まぁ、友達といえば、友達ですが……」

「失礼いたしました! 少々お待ちください!」

「あ、いや! 忙しいと思うんで大じょ…………行っちゃった」


 俺が止める間もなく、その従業員は奥へと走っていってしまう。

 どうやら金ちゃんを呼びに行ってくれたようだ。


 しばらくして、本当に金ちゃんがやってくる。

 リュナさんも一緒だ。


「小森殿!? どうしたでござるか!?」

「や、やあ、金ちゃん」


 俺は商会長室へと案内された。

 そこで新しいユニークスキルのことについて話す。


「なんと……ということは、これからは自由に外を歩き回れるということでござるか?」

「そういうこと。……それで、実は頼みたいことがあるんだが」

「何でござろう?」


 偶然だったが、どのみち金ちゃんのところに来るつもりではあったのだ。

 ちょうどいいと思って、俺はあることをお願いする。


「俺に武器とか防具を売ってくれないか? せっかくだし、ダンジョンとかにでも行ってみたいと思ってるんだ」

「なるほどでござる。それくらいお安い御用でござるよ」


 このアバターのステータスは、本体と同じらしい。

 レベルを考えると弱すぎるし、戦闘スキルもまったく持ってはいないが、一応それなりには戦えるようになっているはずだった。


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ひきこもり
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― 新着の感想 ―
[一言] さすがに異世界で引きこもりは限界がありましたか。 通販も地球のものだしね。
[一言] えぇ、、、 もはやひきこもりですらないし何でもアリですか
[一言] もはや引きこもりではない……
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