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第10話 引き籠ってただけなんだが

「あれからずっとここに住んでいるでござるか?」

「ああ。一度たりとも外に出てない。元の世界にいた頃より遥かに上級な引き籠りだな」

「……一度も、でござるか?」

「そうしないとレベルが上がらないんだよ」


 俺は金ちゃんにこれまでのことを話すことにした。

 金ちゃんのことはよく知っているし、信頼できるから大丈夫だろう。


「なんと、『ひきこもり』という職業にそんなユニークスキルが……」

「部屋から一歩でも外に出たら最後、経験値の獲得速度がリセットされちまうんだ」

「それで、今のレベルはどれくらいでござるか?」

「一日一つずつレベルが上がっていって、今は124だ」

「124!?」


 金ちゃんが目を剥いて叫んだ。


「そんなに驚くようなものか?」

「驚くに決まっているでござるよ! 拙者なんて、まだたったの15でござるよ!」

「それは戦闘系じゃないからだろ?」

「バリバリ魔物と戦ってるクラスメイトたちでも、せいぜい20を超えたぐらいでござるよ! 124なんて、この世界に生まれて、ずっとレベルを上げ続けているような人でも到達できない領域でござる!」

「そうなのか? 引き籠ってただけなんだが……」


 どうやら俺は異常な早さでレベルが上がっていたらしい。


「と言っても、レベルの割にステータスは低すぎだけどな。なにせ1ずつしか上がっていかないんだ。だから各能力値はたったの124だよ」

「ふむ……確かに、レベル20のクラスメイトは、平均200ぐらいにはなっているでござるが……」

「そうだろ。レベルが上がったところで、成長率が低いから雑魚のままなんだよ。ま、『ひきこもり』なんだから仕方ないが」


 ていうか、レベル20でも俺より強いのか……。

 悲しい現実だ。


「でも、待つでござるよ、小森殿。レベルというのは、上がれば上がるほど要求される経験値が多くなっていくでござる。つまりみんなの成長は鈍化していくでござるよ。一方で、小森殿は毎日必ず一つずつレベルアップしていく……どう考えてもいずれ逆転するはずでござる」

「その法則が変わらなければ、だろ? それに……」


 そもそも俺の場合、根本的な問題があった。


「さっきも言ったけど、外に出た時点で獲得速度がリセットされてしまうんだ。つまり、俺はずっと引き籠っていないといけない。どんなに強くなったところで、何の意味もないだろ?」

「むう……そうかもしれぬでござるが……」


 強くなっても部屋を出れないんじゃ、宝の持ち腐れでしかない。


「それよりも、ぜひ金ちゃんに頼みたいことがあるんだ」

「何でござろう?」

「その前に、これを見てくれ」


 俺はそう言って、隠していた漫画本を差し出す。


「こ、これは……っ!? き、『鬼滅の八重歯』の最新巻ではござらんか!? な、なぜこんなところに!?」


 超人気漫画『鬼滅の八重歯』。

 節分の豆まきが野球やサッカーに並ぶ国民的なプロスポーツになった世界で、八重歯の可愛い女の子主人公がトップ選手を目指して頑張る青春スポ根作品である。


 俺たちがこっちの世界に来る前には、まだこの最新巻は発売されていなかった。

 どうやらこちらの時間経過に合わせて、向こうの世界でも時間が進んでいるらしく、通販スキルで購入できる商品が徐々に追加されていくのである。


「これも『ひきこもり』のユニークスキルだ。通販で向こうの世界の商品を買うことができる」

「なっ……それは夢のスキルではござらんか!? と、いうことは、『呪術海鮮』の最新巻も……?」

「そこにあるぞ」

「うおおおおおおっ! 読みたかったでござるううううっ!」


『呪術海鮮』も大人気作だ。

 海の幸をモチーフにした可愛い女の子たちが、呪術を駆使して敵の魚介類と戦うお話なのだが、敗北するとお寿司にされて食べられてしまうという、絵柄の割に残酷なストーリー展開が特徴的だった。


「『PAI×FAMILY』は!?」

「あるよ」

「小森殿おおおおおっ! 貴殿は神でござるかああああああっ!?」


 ちなみに『PAI×FAMILY』は、ラッキースケベ体質の主人公が、両親の再婚をきっかけに巨乳の三姉妹と一つ屋根の下で暮らすことになって……という、ちょっとエッチなラブコメ漫画である。


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ひきこもり
peepにて配信開始!!
― 新着の感想 ―
[一言] 鬼滅の八重歯ってオナホやないかい!笑
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