表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/29

25話「教室にて」


 教室は活気を取り戻した。

 淀ある空気を吹き飛ばしたのは、ほかでもなく――


「き、きさま……一体、なんのつもりだ……!?」


「はっ、ちょっとは貴族らしい口調になったではないか」


 俺の煽りに、激昂するルド。


 家柄とか知るか。

 ルシアンがこの場にいないのであれば、代行するまで。

 そして彼の本音は、昨夜のお泊まり会で聴取済みだッ!


「これまでの日々、大変楽しめたぞ。

 だがもうやめだ、こんな茶番はな」


 振る舞いは強気に、大袈裟に。

 俺さえも他人なのだから、遠慮はいらないだろう。

 不敵に笑ってしまえばいい。


 ルシアンにも許可は得ている。

 ほどほどに、とも言われたが。

 

「お、俺に逆らえば……どうなるかわかっているのかァ! 俺はクロイツ家の長――」


「知らんといったはずだ!

 お前の親とやらに、再教育してもらって出直してこい」


 ルドに隙は与えない。

 とにかく抵抗の意思を見せる。

 大勢が見ている、という環境を活用せざるを得ない。


「その怒りよう、小物っぽく見えてきたぞ?」


「……ッ! よくも吠えたなルシアン……!

 たかが弱小貴族の分際で――ッ!」


 ルドは自分の手を、俺に向けてきた。


 微かに帯びたその光は……魔力か?

 コイツ魔法を使う気だ。

 上等だ、撃ってくるといい。


 いくら上級貴族とはいえ、それは御法度ときく。

 お前は、しばらくの停学処分――


「あはは! あはははっ!」


「ん?」


 俺の背後で笑い声がした。

 

 振り返ると、さっきの青髪の女学生がいた。

 腹を抱え、盛大に肩を揺らしている。


「君最高だよ、すごいすごい!」


「えっと……なにが?」


 青髪女学生は手を叩くほど笑っていた。

 そのあどけなさは無邪気だが、同時に異質だ。


「クロイツ家って、あのクロイツ家でしょう? それを相手にあんな……あはははっ!」


 どのクロイツ家?

 そりゃあ、ルシアンが逆らえないほどには上級だろうけど……。


 彼女は俺の横に並び立った。

 笑い疲れたのか、深く息を吐く。


「ふぅー。でも、これくらいにしておいた方がいいよ。君たちふたりともね」


「なんだ貴様は……邪魔をするなッ!」


 ルドの矛先が彼女にも分散された。

 

「今すぐそこをどけ、どちらにつく方が賢いのか、よく考えることだ……!」


 青髪女学生は平然としている。

 脅し文句そのものを突きつけられた上で。

 

「んー? じゃあ、おもしろかったからシュタイン君の味方で!」


「ちょ――」


 教室はさらにざわついた。

 青髪女学生は突然、俺の腕に抱きついてくる。

 

 う、動けないから離れて。

 魔法飛んできたとき避けれないから!

 というか、この子はどこの誰!?


 その様子を眺めていたルドの顔を見てみる。

 額に血管が浮き出るほど、怒っていた。


「そうか……その女が原因か? ではもろとも焼かれることだなッ!」


 ルドの手の先に、魔法陣が浮かび上がった。

 

 やばい。なにか撃ってくる。

 この変な子を突き飛ばしてでも、回避を……!


「《アル――」


「《エルダ・ダーク・バインド》」


 その瞬間、廊下から声が聞こえてきた。

 ルドの詠唱をかき消し、上書きするような声。

 

「ぐ……なにッ!?」


 ルドの右手全体が、闇に覆われた?

 俺が出す黒霧とは違う、渦巻く闇だ。

 発動寸前だった魔法陣は姿を消す。


 コツコツと、足音が鳴る。

 俺は音がした廊下の方へ顔を向けた。

 

「朝から元気なことだ。クロイツ家のルド君」


「べ、ベルマン学年主任……!」


 ベルマンと呼ばれた、ハンサムな男がいた。

 彼は教室に入ってきて、ルドの前まで歩いていく。


「だが忘れたかい。学園内で許可なく魔法を使うのは、懲罰ものの禁止事項」


「それは――」


 学年主任……ということは、それなりの立場なのか。

 あのルドが歯噛みするような面持ちになっている。

 

 いいぞ。

 もっと叱ってやってくれ。

 あとルシアンをいじめていた事実も――


「そしてシュタイン君。君のあの啖呵は、少々度が過ぎていたと自覚したまえ」


「え? あぁ、はい」


 ベルマンは微笑み、俺にも注意をしてきた。


 廊下からでも聞こえていたらしい。

 自分なりに、正論を放ったつもりだ。

 後悔はないが……やりすぎだっただろうか。


「ホームルームを始める。早く席に座るといい、2人はできるだけ離れた距離でね」


「だって。ほらいこう?」


「あ、ああ」


 名も知らない青髪女学生に手を引っ張られる。

 

 この子は、本当にルシアンの友達か?

 にしても距離が近い。


 彼女に流されるまま、席に連れていかれた。


「……覚えていろ」


 俺とのすれ違い様、ルドにそうつぶやかれた。


 謹慎処分で汚い部分を曝け出させる。

 簡単にはいかないか、貴族の調子煽って失脚作戦。


「では改めて、私はベルマン。みんなご存知の通り、魔法学を担当している」


 ベルマンは教壇に立って自己紹介した。

 背が高く、声も優しい。

 男女問わずモテそうな印象を持っているな。


「初回授業なので、軽く概要を説明して終わろうとおもう」


 するとベルマンは、俺の方をチラリと一瞥してくる。

 彼はすぐに目線を外すと、声のトーンを落とした。


「新学期は始まったばかりだ。くれぐれも……トラブルは起こさないように」


 十中八九、さっきの俺たちだな。

 トラブルは好きで起こしているわけじゃない。


 俺の目的は、魔神の眷属を見つけること。

 そして、その途中で障害となるクラスメイトとの問題は、早めに取り除くべきだろう。

 

 本物のルシアンが学園に戻った時。

 彼が安心して過ごせるようにするためにも。

 張り切って学園生活を謳歌する。

 

 偽装している間は……そうやって心を強く保てる。

 実に、不思議なものだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ