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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
エピローグ
96/96

9-2:エピローグ

 今日はレオンとのデート!

 一番お気に入りの服を着て、鏡の前に立つ。


 うん、かわいいよ、わたし。

 決してイモ娘なんかじゃない。

 イモ娘なんかじゃないんだから……。


 頭に浮かぶ二人の顔。

 親切だけど基本は意地悪なカシマール先生。

 いい人だけどプライドが山より高いギュスターヴさん。


 二人も今のわたしをイモ娘とは決して呼ぶまい。

 ……たぶん。


「お似合いですよ、ルゥさま」


 にこにことわたしをほめるレオン。

 恋人にほめられるのは悪い気分じゃないけれど……。



 支度が出来たので食卓へ。


「女神かと見まがうばかりの美貌です」


 レオン、わたしがなにをしてもほめるからな……。

 仮にわたしがカシマール先生みたいなだらしのない服装でもむりやりほめるだろう。

 わたしはテーブルに目をやる。


「レオンのサンドイッチもおいしそうだね」

「鶏肉の皮がパリパリでおいしいですよ」


 本当はデートのお弁当はわたしが作りたかったのだけれど、料理の腕はどうあがいてもレオンのほうが上だからね。

 ついこの前、クッキーでやらかしてしまったから「わたしが作るよ」とは言いだせなかったのだ。

 この分だとデートの主導権も彼に握られそうだ。


「って、レオン!」


 とても残念なことに気付いたわたしはつい声を上げてしまった。

 びしっとレオンを指さす。

 彼の服装は――いつもの執事の制服。


「今日はデートするんだよ!」

「もちろん、承知していますが」


 ふしぎそうに首をかしげるレオン。

 とぼけているわけではなさそうだ。

 わたしは心から叫ぶ。


「デートなんだから私服を着てよー」

「いえ、大事な恋人とのデートなのですから、この衣装でないと」


 そうだった。レオンは執事であることに誇りを持っているんだった。

 わたしたちは恋人同士になったけれど、相変わらずレオンはわたしをご主人さま扱いする。

 本当は「ルゥ」って呼び捨てし欲しかったのだけれど、レオンは頑なにそうしなかった。


「僕はルゥさまの恋人であり、そして執事でもあるのです」


 レオンがそのことに誇りを持っているから、執事をやめろとは言えなかった。

 見てみたかったな、レオンの私服。



 支度が整ったわたしとレオンはデートに出かけた。

 繁華街に並ぶお店を回って、いろんなものを二人で見たり買ったりした。

 途中、公園に寄って二人で噴水の縁に腰かけてランチをとる。


 日が暮れるころになると、さすがに歩き疲れたわたしたちは帰路に着いた。

 ……これ、恋人になる前からもやってるよね。

 デートって言えるのかな……。


 あ、一つだけ、恋人になったあかしがあった。

 ……キスをしたんだった。

 てへへ。

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