7-13:対決ガルアーノ
あんな大きな炎の球体、障壁で打ち消せるかわからない。
「ルゥさま!」
気絶していたレオンが起き上がる。
そしてわたしとゼロのもとまで駆けてくる。
「今こそ『刻星術』を使うときです」
レオンがどんどん膨れ上がっていく炎の球体を指さす。
「あの炎を『戻す』のです」
「も、戻す……?」
「はい、やつが僕たちにくれるというのなら、返してさしあげるのです」
レオンの言っている意味がわかった。
成功させる自信はない。
でも、やらなくちゃいけない。
「骨も残さず焼き尽くしてくれるわ!」
ガルアーノ大臣が炎の球体を放り投げてきた。
めらめらと燃え盛る炎の球体がわたしたちめがけて飛んでくる。
わたしは目をそらさず、それをじっと見つめながら心を集中させる。
そして、直撃する寸前に唱えた。
「戻れ!」
ぴたり。
炎の球体が空中で制止する。
そして、ここまで飛んできた軌跡をなぞるように逆戻りしてガルアーノ大臣に向かって飛んでいった。
「なっ!? わわわわっ!」
慌てふためくガルアーノ大臣。
迫りくる炎の球体から逃げようとするも、太っちょの身体では俊敏に動くことができない。
戻ってきた炎の球体が直撃し、ガルアーノ大臣は火だるまになった。
「ぐおおおおおおっ!」
おぞましい叫び声を上げる。
めらめらと燃える炎。
レオンがわたしを抱き寄せる。
わたしとレオン、ゼロ、国王陛下は燃える悪魔をただただ見ていた。
やがて炎が収まると、残ったのは黒焦げになった悪魔の残骸だった。
その残骸も紫色の霧になっ散った。
人間に化けていた悪魔・ガルアーノは、跡形もなく消滅したのだった。
こうしてわたしたちは王国の危機を救ったのだった。
レオンはこの事件は内密に処理されるだろう思っていたらしい。
けれど後日、国王陛下は、悪魔が大臣に化けて国のお金を横領していた事実を新聞で公表したのであった。
誠実な人なんだな。
ただ、そこに『聖女ルゥ・ルーグが悪魔を成敗した』という一文も載せられてしまっていた。
怪盗からお宝を取り返した次は、魔物退治。
うーん、お手柄の連続。
文句なしの救国の聖女さまだ。
わたしはぜんぜん実感ないんだけどね……。
「ゼロ。お前には謝罪の言葉が必要だな。国を代表して詫びよう」
玉座の間。
国王陛下の前にわたしとレオン、ゼロはひざまずいている。
「貧困層居住区の救済を担当する大臣には、俺が確かな人間を新たに選んだ。そこに関しては安心してほしい」
「期待はしねえよ」
ゼロはあざ笑いながら肩をすくめる。




