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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
対決ガルアーノ
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7-11:対決ガルアーノ

 ガルアーノ大臣が日なたにさらされたアイスクリームみたいに溶けていく。

 わたしは怖くなってレオンのうしろに隠れた。


「カシマール先生、これは一体」

「黒魔石は邪悪なるものを退ける力を持っている。それをガルアーノ大臣に渡したんだ」


 邪悪なるものを苦しめる魔法道具って、黒魔石のことだったんだ。


「黒魔石にそんな力があったなんて……」


 つまり、ガルアーノ大臣は人間じゃなくて……。


「グオオオオ……」


 ガルアーノ大臣だったものは溶け、泥になってしまった。

 しん、と静まり返る。

 国王陛下がカシマール先生の肩に手を置く。


「カシマール。やはりガルアーノは」

「ああ、魔物が化けていたんだ。イモ娘ちゃんが最初に気づいたんだぜ」

「さすがは聖女」


 なんかカシマール先生、やけになれなれしく国王陛下と話してない……?

 友達同士の会話みたいだ。

 どういう関係なのかすごく興味がある。


「みなさん、まだ終わりではありません!」


 泥だまりが盛り上がって立体になっていく。

 粘土をこねるみたいに徐々に形が定まっていって、ついには太った悪魔の姿になった。

 一目で貪欲な魔物だとわかる。


「今だ! 出てこい!」


 国王陛下が命じると、柱の陰から槍を持った兵士たちが次々と現れて、悪魔と化したガルアーノ大臣を包囲した。


「よくもワガハイの正体を暴いてくれたな。人間どもからたんまりと税をいただいていたのに」

「観念しろ、悪魔め」

「ワガハイの正体を見たものは生かしておけん!」


 おたけびを上げるガルアーノ大臣。

 ガルアーノ大臣を中心に黒い風が巻き起こる。

 大臣を包囲していた兵士たちは木の葉みたいに吹き飛ばされてしまった。


「悪あがきはよせ。みっともないぞ」

「人間ごときが悪魔に勝てるとでも思ったのか」


 ずしん、ずしん、と巨体で床を響かせながら国王陛下に近づいていくガルアーノ大臣。

 その行く手を阻むようにレオンとカシマール先生が立ちふさがった。


「カシマール先生、戦いの心得は」

「20年くらい前に訓練したっけな」


 苦笑いで冷や汗を垂らすカシマール先生。


「僕のうしろに隠れていてください」


 レオンが床に落ちていた槍を拾ってガルアーノ大臣の腹を突く。

 でも、弾力性のある腹は先端が鋭い槍すら跳ね返してしまった。


「気かぬわ!」


 口をすぼめて息を吹き付けるガルアーノ大臣。

 吹き飛ばされたレオンは柱に背中を打ち付け、カシマール先生は床を転がっていった。

 レオンですら勝てないなんて……。


「あなたを守る者はもういませんぞ」


 それでも国王陛下は少しも動じず、逃げようとはしない。


「陛下。あなたを食らい、ワガハイがこの国の王になろうぞ」

「俺も人のことは言えんが、きさまのような下品な者などに君主が務まるか」


 命の危機だというのに国王陛下は堂々としている。

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