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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
対決ガルアーノ
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7-10:対決ガルアーノ

「適正価格でーすっ」


 わたしは胸を張った。

 カシマール先生は悩んだ末、代金を支払った。

 先生はおこづかいより子供を選んだのだった。



 後日、わたしとレオンは王城に呼ばれた。

 国王陛下がわたしに一度会ってみたいとおっしゃったらしく、とても驚いた。

 王城に入るとカシマール先生に連れられて玉座の間へと入った。


「お前が『刻のアトリエ』のルゥ・ルーグか」

「はい。本日は陛下にお目にかかれて大変うれしくございます」


 玉座には国王陛下が座っている。

 意外にも見た目は若い。

 浅黒い肌で、肩に触れるくらいの金色の長い髪。


 玉座よりも酒場のイスが似合うだろう。

 なんて言ったら処刑されちゃうね。

 そばには――ガルアーノ大臣もいる。


「そんなにかしこまらなくてもいいぞ。俺は堅苦しいのが苦手なんだ」

「わっ、わかりました」


 国王陛下が気さくに笑う。

 本当に酒場でお酒を飲んでいるお兄さんって印象だ。

 実は船乗りです、と言われたらぜったいに信じてしまう。


「民の話を聞くに、時間を自在に操れる魔法が使えるとか」

「ぜんぜんまだまだ未熟なんですがね」

「それが謙遜に過ぎないことくらい人々の評判でわかる。もっと威張ればいい」

「あはは……」

「しかし、竜を倒したというのはにわかに信じがたいな。その細い腕で」


 国王陛下は前のめりになってわたしをまじまじと見た。


「美しい娘だ」

「えっ、ありがとうございます」

「聖女と呼ばれるだけはある」

「てへへ」

「おい、カシマール。ぜんぜん『イモ娘』じゃないじゃないか。どんな田舎娘が来るかと思いきや」


 イモ娘!?

 カシマール先生、王さまにもわたしのあだ名を言ったの!?

 ひどいよ……。


「そうですか? 畑で採れるイモによく似てますがね」


 ははっと笑う先生。

 ここが陛下の御前じゃなかったら炎の魔法で前髪を焼いてあげたのに。

 横目でカシマール先生を恨めしげににらむも、先生はわざとらしく目をそらしていた。


「ときに陛下。このイモ娘が陛下に献上したいものがあるとのことです」

「土産を持参してくるとは気が利くな」

「こちらにございます」


 カシマール先生がさっきからずっと持っていた箱を開ける。

 中に入っていたのは――黒魔石だった。


「うむ、見事な宝石だ」

「お気に召していただけたでしょうか」


 黒魔石、国王陛下にあげちゃうの……?

 わたしがもらうはずだったのに。

 わたしが目でうったえると、カシマール先生は口元に指を添えて「黙って見てろ」としぐさで言った。


「もっと近くで見てみたいな。ガルアーノ、もってこい」

「承知しました」


 ガルアーノ大臣が黒魔石を受け取る。

 異変はそのとき起きた。


「ぐおおおおおっ!」


 ガルアーノ大臣は突然苦悶の叫びをあげた。

 毒を飲んだみたいに顔面蒼白になって白目をむき、のどをかきむしる。

 ついにはもんどりうってのたうち回った。


 動揺するわたしとレオン。

 国王陛下とカシマール先生は苦しみもだえるガルアーノ大臣のようすを離れた距離から見ている。不気味なくらい冷静に。

 まるでこの展開を予想していたかのように。

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