7-9:対決ガルアーノ
「は、はい……」
つい、うなずいてしまったけれど、本当はそこまで覚悟も理解もしていなかった。
ガルアーノ大臣の正体を暴くことばかりに気がいって、そこから先のことまでは考えていなかったのだ。
ガルアーノ大臣が魔物だとしたら、正体を暴いたわたしたちを襲ってくるかもしれない。
「そのときは僕が戦いましょう」
「できるのか? 執事が」
「できますよ。執事ですので」
カシマール先生は悩んだ末に「わかったよ」と言った。
「『ガルアーノ大臣の正体を暴く作戦』に加担してやる。ただし」
「ただし?」
「イモ娘ちゃんと執事と、それと俺の三人で実行するのが条件だ」
「カシマール先生も加わってくれるんですか!」
「こんな危ないこと、子供だけに任せるわけにはいかないだろ。大人として」
「ありがとうございますっ」
「感謝いたします」
「ったく、面倒なやつらだぜ」
あきらめなくちゃいけないと思っていたけれど、なんとかなった。
あとは作戦を成功させるだけ。
もしかするとわたしたち、スラムの子供たちを助けられるかもしれない。
「作戦の実行はいつになさいますか? ルゥさま」
「待った。それは俺が決める」
カシマール先生が手のひらを突き出してそう言う。
「もう一人、協力者になりそうなやつに声をかけておく。実行はそれからだ」
「協力者って誰ですか?」
「それは会ってからのお楽しみだ」
「教えてくれたっていいじゃないですか!」
わたしが問い詰めてもカシマール先生は誰なのか教えてくれなかった。
「心強い協力者なのは保証するぜ」
カシマール先生は悪だくみをする子供みたいな笑みを浮かべていた。
ちょっと心配になる。
こわい人じゃないといいんだけど。
「ところでカシマール先生。黒魔石の加工は終わりました?」
「もう少しだ。完成は近い。そっちも楽しみに待ってろ」
「怪盗ゼロからオークションを守るなんて思いもよりませんでしたよ。最初に教えてください」
「教えたら、そっちの過保護な執事が承知しないと思ったからな。それに結果としてうまくいっただろ?」
「失礼ながら、結果論でございます」
「黒魔石の加工は無償でしてやるんだから、終わったことをぐちぐち言うなって」
カシマール先生が商品棚に目をやる。
「へー、このおもちゃ、かわいいじゃないか」
先生が目をつけたのは手のひらに乗る大きさの、竜のおもちゃ。
わたしが『刻星術』の練習で、がらくただった状態から新品になるまで時間を戻して商品にしたのだ。
「いくらだ? 子供のみやげに買ってくぜ」
レオンが値段を言うと、カシマール先生は目を丸くした。
「ぼったくりだろ」




