7-4:対決ガルアーノ
「諜報活動は執事のたしなみですので」
さらりとレオンは答えた。
なんとなくそんな感じの返事をされると思った。
「……ねえ、レオン」
「とても悲しい話ですが、民の生活をないがしろにして己の利益のみ考える官僚は少なからずいます。ガルアーノほどではないにしろ」
わたしが言おうとしたことを察したレオンがそう先に言った。
わかってる。
田舎貴族のわたしじゃ国の政治に口出しできないし、他国の王族であるレオンを巻き込むわけにもいかない。
でも、くやしい。
ゼロが怪盗になった原因はガルアーノにあると言っても過言じゃない。
それを知りながらどうにもできないなんて……。
お店のチャイムが鳴る。
やってきたのはミントとギュスターヴさんだった。
「すばらしいですわ! 怪盗ゼロから絵画を取り戻すなんて!」
ミントも新聞を読んだらしい。
ミントは興奮気味にわたしに詳細を尋ねてきた。
ゼロにさらわれたり、アジトに乗り込んで絵画『花畑』を取り返したりしたことを話すと、ミントは大喜びしてくれた。
ギュスターヴさんはというと、終始呆れた面持ちをしていた。
大冒険を聞いてはしゃぐ妹に対してか、度が過ぎたおてんば娘のわたしに対してか、あるいは両方か。
「さすがは時を操る聖女ですわね」
「執事もさぞ肝を冷やしたろうな」
「ええ。驚きました」
「お前には同情を禁じ得ない。無理無謀をしょっちゅうしでかす主人を持って」
「いえ、まったく苦労していませんよ」
レオンはにこにこしながら首を横に振る。
「むしろ光栄です。ルゥさまという主人のもとで働かせていただいて」
わたしは複雑な心境になってしまった。
レオンは本当は大国の王子さま。
立場はレオンのほうがよっぽど上なのにもかかわらず、田舎貴族の娘であるわたしに仕えている。
「ルゥさま。顔色が悪いように見えますが」
「な、なんでもないよ。あはは……」
レオンが顔を覗き込んできたので笑ってごまかした。
あっ、そうだ!
「ギュスターヴさん。ガルアーノ大臣って知ってる?」
王城で騎士として働くギュスターヴさんならガルアーノ大臣について詳しいかも。
ギュスターヴさんは怪訝な面持ちになる。
「ガルアーノ? 知っているに決まっているだろ。なにをやぶからぼうに」
「どんな人なの?」
「私利私欲で政治に関わる、ろくでもない人間だ。貴族の風上にも置けん」
「実はね」
わたしは怪盗ゼロが怪盗になった事情をギュスターヴさんに教える。
「貧困層居住区救済の予算を横領か。あいつならやっていてもおかしくない」
「ぜったいやってるんだって! ガルアーノ大臣の悪事を暴いてよ!」




