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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
対決ガルアーノ
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7-2:対決ガルアーノ

「ルゥさま。怪盗ゼロにひどいことはされませんでしたか?」

「んーん。丁重にもてなされたよ」

「よかった」


 ほっとするレオン。


「僕はあなたがさらわれてから気が気ではありませんでした」

「心配かけてごめんね」

「まだ胸が早鐘を打っています」


 レオンがわたしの手を取り、自分の胸にあてる。

 レオンの胸の鼓動が伝わってくる。


「ある意味、怪盗ゼロには感謝しなくてはいけませんね。ルゥさまと過ごす日々が当たり前すぎて、ルゥさまが僕にとってかけがえのない存在であるのを忘れかけていました」

「もー。あいかわらず大げさだよ」


 でも、うれしい。

 誰かにここまで慕われるなんて。

 しかもその『誰か』がわたしの大切な人なんだから。



 それからオリオンオークションに戻り、オリオンさんに絵画『花畑』を返却した。

 本物のオリオンさんは商品の保管庫に閉じ込められていたらしい。

 無事でよかった。


「さすがは聖女さま。見事に怪盗ゼロをこらしめるとは!」

「いえ、怪盗ゼロには逃げられちゃったんです」

「『花畑』さえ取り返せたのならそれでじゅうぶんです。お約束どおり黒魔石をお譲りしましょう」

「いいんですか!?」


 怪盗ゼロをつかまえるのが依頼だったはず。

 わたしたちはその依頼を失敗してしまったのだ。


「オリオンオークションに損害さえなければそれで結構。むしろよい宣伝になりましたよ」


 わたしたちの疑問は翌朝、解決した。

 昨夜の怪盗ゼロの騒動が新聞の記事になっていたのだ。

 これまでどんな警備も潜り抜けてお宝を盗んできた怪盗ゼロから『花畑』を取り返した。

 という内容が大々的に報じられていた。


「『刻のアトリエ』の聖女さま、大手柄――だそうです」

「思い返すとわたし、別になんにもしてないんだけど」


 お手柄なのはレオンだ。


「これで『オリオンオークションは怪盗からも商品を守れる』と宣伝になりましたね」

「あっ、宣伝ってそういう意味だったんだね」

「オリオンさま、見かけによらずしたたかなお方です」


 怪盗ゼロを宣伝に利用するなんて、さすがだ。

 ゼロはこの記事を読んでどう思うだろう。

 今頃、利用されたとわかってくやしがってるのかな。


「朝食を終えたら、さっそくカシマール先生のもとへ行きましょうか」

「うん。やっと手に入れたんだもんね」


 テーブルの真ん中に置かれている黒い宝石。

 膨大な魔力が凝縮された『黒魔石』だ。

 これさえあればわたしの『刻星術』の効果をさらに高め、オーレリウムの花を咲かせられる。

 

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