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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
対決ガルアーノ
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7-1:対決ガルアーノ

「犬かお前はっ」


 ゼロがそう叫んだ。

 わたしも同じことを思っていて苦笑いを隠せなかった。

 レオンはほこらしげな表情をしている。

 レオン、毎回思うけどすごすぎるよ……。


「さて、それでは掃除をしましょうか」


 レオンが唐突に言う。

 掃除? この屋敷を?

 わけがわからず首をかしげていると、レオンは胸元から短剣を取り出して構えた。


「ルゥさまをさらった悪党どもを」


 リーゼロッテさんが飛びのき、隠し持っていた短剣を手にして対峙する。

 ゼロも腰の拳銃を抜き、おびえる子供たちをかばうように立った。

 とんでもないことになった!


「おいおいおい、穏やかじゃねえな、執事さんよ」

「主をさらわれて穏やかでいられる執事がいるとでも?」

「ゼロ。この者の排除の許可を」

「み、みんな待って!」


 わたしは慌ててみんなの前に出て、両手を広げて戦いをやめるよううったえる。


「レオン、武器をしまって」

「ですが」

「ゼロは悪い人じゃないの。お願い。それに、小さな子供もいるし」

「……ルゥさまがそうおっしゃるなら」


 レオンはにこりと笑って短剣を鞘に納めた。

 ゼロも拳銃をしまい、額に浮かんだ冷や汗をぬぐって息をつく。


「リーゼロッテ。もういいぞ」

「承知しました」


 リーゼロッテさんも戦いの構えを解いてくれた。

 子供たちが泣きながらリーゼロッテさんに抱きつく。

 リーゼロッテさんはやさしい笑顔で子供たちをあやした。

 この人、こういう顔もできるんだ……。


「俺は助かったんだが、よかったのか? ルゥ。俺をつかまえたら、オリオンオークションからごほうびがもらえるんだろ?」

「それはしかたないよ。悪くもない人をつかまえるなんてできないもの」


 するとゼロはキザに笑う。


「俺はお前が思うほど善人じゃないぜ」


 その笑みは自嘲にも見えた。


「しかし、怪盗ゼロ。盗んだ絵画は返してもらいます」

「はいよ。そこに置いてあるから勝手にもってけ」

「はい。では、帰りましょうか、ルゥさま」

「うん」

「待ってください。あなたがたには目隠しを――」

「それはもういいだろ、リーゼロッテ。この執事が自力で来ちまったんだから」


 そういうわけでわたしとレオンは絵画『花畑』を回収して屋敷を後にした。

 外に出ると、周囲は木々が生い茂る森だった。


「街から離れた森の中にこのゼロの屋敷はあるのです」


 隠れ家にはうってつけだ。


「と、ところでレオン。わたし、そんなににおう……?」


 わたしはおずおずと尋ねる。


「においます」

「がーんっ」

「おひさまのような、とてもぽかぽかとしたにおいです」


 そ、それっていいにおいって意味だよね……?

 好意的に受け取っておこう……。

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