6-13:オリオンオークション
「わかってる。わかってるっての」
口うるさい母親に叱られたかのように肩をすくめるゼロ。
「アジトに戻る前にルゥをアトリエに送ってやってくれ」
「ま、待って!」
「へ?」
わたしが声を上げると、ゼロはぽかんと目をまんまるにした。
「わたしをあなたたちのアジトに連れてって」
「えっと、どうしてだ?」
「……わからないのですか、ゼロ」
リーゼロッテさんがわたしをにらむ。
「我々のアジトの場所を把握して、憲兵に通報するつもりなのですよ」
「ち、違うよ!」
「なら、どうしてついてくる気になったのです。あなたはさらわれたのですよ」
「それは……」
わからない。
ただ、ゼロたちのことをもっと知りたいと思ったからだ。
手段はいけないとはいえ、貧しい人たちのために行動するこの人のことを。
ゼロがキザな笑みを浮かべる。
「ははーん。さては俺に惚れたな?」
「それは違う」
「それは違いますね」
「即答かよっ。しかも二人同時にっ」
がっくりと肩を落とすゼロ。
「ま、いいぜ。好奇心旺盛な年ごろなんだろ」
「本当にいいのですか?」
「無理やり連れてきた詫びにお茶でも出してやらないとな」
リーゼロッテさんは明らかに否定的な表情。
けれど、ため息をついてからこう答えた。
「わかりました。リーダーの命令なら従いましょう。その代わり――」
リーゼロッテさんはポケットから包帯のような白い布を出す。
「アジトに着くまでは目隠ししてもらいます。アジトの場所は教えられませんので」
有無も言わさず目隠しをされて馬車に乗せられた。
ごめんね、レオン。すぐに帰るから。
そしてわたしはゼロたちのアジトに招かれた。
やわらかいソファーに座らされて、そこでようやく目隠しが解かれた。
見る限り、内装は普通の貴族の屋敷の応接室だ。
別段変わったところはない。
「ようこそ、俺のアジトへ」
「ゼロって貴族だったの?」
「まあ、一応な」
応接室の扉が開き、メイドがティーセットを載せたカートを押して入ってくる。
そしてわたしとゼロの前までくると、てきぱきとした動きで紅茶を淹れてくれた。
って、このメイド!
「えっと、リーゼロッテさんですか?」
「そうです」
リーゼロッテさん、メイドだったんだ。
「リーゼロッテは俺の右腕兼メイドだ。不愛想だがなんでもできるんだぜ」
「不愛想は余計です」
今度は小さな子供たちが現れた。
「ゼロー、おかえりー」
「おかえりなさーい」
「お宝手に入れたー?」
ゼロのところに駆け寄ろうとしたところでわたしの存在に気付いて驚く。
「おねえちゃん、誰?」
「知らない人だー」
「お客さんだ。ちゃんとあいさつしろよ」




