表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
オリオンオークション
61/96

6-6:オリオンオークション

 オリオンさんはこう言う。

 顧客から預かった商品が盗難に遭えばオリオンオークションの評判に傷がつく。

 しかし、逆に、あの有名な怪盗ゼロから商品を守ったのならオリオンオークションはますます評判がよくなるだろう。


 それでもわたしは納得のいかない顔をしていたから、オリオンさんはこんな提案をしてきた。


「わかりました。それではルゥさん、こうしましょう。『花畑』のオークションでは、競り落とされた金額の2割が手数料として我がオリオンオークションの物になります。その手数料を今回は孤児院に寄付いたします。全額」


 わたしは思わず「えっ!?」と驚いてしまった。


「そ、それだとオリオンオークションの利益はなくなっちゃうんじゃ……」


 わたしも仮にもお店の経営者。

 利益を得るのがどれだけ大変かは知っている。

 けれど、オリオンさんはにこにこしている。


「確かに、お金としては銅貨の一枚もいただけませんが、有名な絵画を取り扱ったという実績と、怪盗ゼロからそれを守ったという事実はオリオンオークションの名を上げてくれます。むろん、寄付もただの善意ではありませんよ。わたくしも商売人ですので」

「寄付をすれば税がいくらか免除されるのです。ルゥさま」


 そういうことか。

 めぐまれない孤児にお金がいくのなら納得できる。

 レオンもわたしにうなずいている。


 怪盗ゼロから絵画を守ることは結果としてみんなの利益になる。

 わたしは決心した。

 怪盗ゼロを捕まえよう。



 そして『刻のアトリエ』に帰ってきた。


「レオン。わたし、がんばるよ」

「その意気です、ルゥさま。ちなみに僕も泥棒退治なら心得ていますので」

「あ、そうなんだ」


 レオン、ほんとになんでもできるんだね……。

 またわたし、足手まといにならなければいんだけど。


「では、僕は夕食の食材を買いに行ってきます。お一人で店番できますか?」

「もー、子供じゃないんだよー。それくらいできるって」

「そうでしたね。では、行ってきます」


 レオンが出かけた。

 店がしんと静まり返る。

 わたしはカウンターの前に座って店番をすることになった。


 お客さん来るかな。

 まもなく日が暮れる時刻。

 この時間はあまりお客さんはこない。


 ところがしばらく待っていると、入口の扉ががちゃりと開いた。

 わたしはあくびをして思いきり開いていた口を慌てて抑える。


「い、いらっしゃいませっ」

「やあ」


 入ってきたのは若い男性。

 年齢は20歳前半くらい。

 とても背が高く、顔立ちも端正な美青年だ。


「へー、ここがウワサの『刻のアトリエ』かー」


 お客さんは店を物色しだす。

 陳列棚に置かれた小物をひとつひとつ見ている。

 実は最近、お店では小物を売るようになったのだ。


 わたし『刻星術』の訓練がてら、壊れた状態から元通りに時間を『戻した』小物を売るようにしたのだ。

 ぜんぜん売れないし、わたしも売れるとは思っていない。

 単にお店っぽい装飾になるかなと思って並べているのだ。


 ちなみに『刻星術』で素材の状態から時間を『進めて』作ったパンも売っている。

 こっちは近所の顔なじみの人が買ってくれている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ