表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
オリオンオークション
60/96

6-5:オリオンオークション

 翌日、わたしとレオンは依頼を断ろうとオリオンオークションに足を運んだ。

 ……ところが。


「おお! 竜を討伐せし聖女さま! ようこそお越しになりました!」


 支配人のオリオンさんがかなり大げさに出迎えてくれた。

 こ、断りづらい!

 わたしとレオンは目配せしあう。


「ルゥさんがいれば怪盗ゼロなど恐れるに足りません。こざかしき悪党など、聖女さまの御威光に焼かれて灰となるでしょう!」


 わたしの手を取ってぶんぶん上下に振る。

 演劇めいた大仰なセリフだ。

 この状況で「すみません、やっぱりやめます」と誰が言えるだろうか。


「ま、まかせてください……。あはは……」


 泥棒を捕まえるなんて無理だよ!

 心の中で叫んだ。


 それからわたしたちはオリオンさんに保管庫に案内された。

 分厚い扉を開けた先にはオークションに出品する美術品の数々が置かれていた。


「こちらが怪盗ゼロの狙う絵画、マーガレット・ノキアの『花畑』です」


 豪華な額縁にその油絵『花畑』は飾られていた。

 その題名どおり、美しい花畑が色鮮やかに描かれている。

 芸術の価値なんてろくにわからないわたしでも、その美しさに見とれてしまった。


「これが『花畑』……。間近で見ると本当に美しいですね」


 レオンが小声で言う。

 この『花畑』はとある貴族が所有しているもので、近々オークションにかけられるという。


 マーガレット・ノキアはわたしでも知っている有名な画家。

 彼女の描いた絵画はどれもとんでもない価値がついている。

 有名な作品では、それ一枚で一国の財産に匹敵するとまで言われている。


「ちなみに、この絵画の所有者は?」

「イステル卿です」

「イステル卿……」


 レオンが眉間にしわを寄せる。


「悪い人なの?」


 彼の耳元でささやく。


「あまり評判はよろしくありませんね」


 イステル卿は法外な税を課して領民から財産を根こそぎ奪い取り、私腹を肥やしている貴族だとレオンは説明する。

 私的な兵士も多数抱えており、不満を持つ領民を平気で罰するとのこと。

 そのため領民のみならず、諸侯からの評判は最悪なのであった。


 レオンは『あまり評判はよろしくない』と言ったが、かなり控えめな言いかただ。

 これじゃどっちが悪党かわからない。


「怪盗ゼロが狙うのも当然ですね」

「もしかして、盗まれたほうがよろこばれたりするのかな」

「そうでしょうね」


 間接的に、わたしはそんな人間のために戦おうとしているのか。

 ますます気が進まなくなった。


「お客さまは皆、平等です。人となりは関係ありません」


 わたしの心情を見抜いたオリオンさんがそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ