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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
オリオンオークション
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6-4:オリオンオークション

「帰るぞ、ミント」

「そうですね。おいしいお茶をありがとう、レオンさん」

「どういたしまして」


 にこりと笑うレオン。

 さっきのレオンも笑っていたけれど、静かな怒りを感じたな。

 わたしのために怒ってくれたんだよね。


 わたしはそのことが少しうれしかった。

 これがもし、レオンなりのやきもちだったのなら――なんて考えてしまう。

 レオンが主人であるわたしへの忠節以上感情を持っているだとしたら、とてもうれしい。


 具体的には――恋愛感情。


「オーレリウムの花が咲くのを楽しみに待っていますわ」

「うげっ」

「ルゥ?」


 思わず変な声を出してしまった。

 そういえば大事なことを忘れていた。


「そ、それなんだけど、ミント……」


 わたしはオリオンオークションでの一件を二人に話した。


「というわけで、オーレリウムの花は咲かせそうにないんだ。期待させてごめんね」

「いいのですわ。怪盗を捕まえるなんて無理難題ですもの」


 苦笑するミント。


「ここまでがんばってくれた気持ちだけでうれしいですわ」


 ミントは本当にいい子だな。

 ギュスターヴさんと兄妹だなんて信じられない。


「似てなくて悪かったな、イモ娘」

「心の声、聞こえてた!?」



 ギュスターヴさんとミントさんが帰るのを店先から見送る。

 外は夕焼けでオレンジ色に染まっている。

 お店の扉にかけてある札を『営業中』から『本日閉店』に裏返した。


 そして夕食をレオンと二人で食べる。

 今日の夕食はハンバーグ。

 分厚いハンバーグを切ると、断面からじわって肉汁があふれ出てくる。


 フォークで突き刺して口に入れると、よく焼けたお肉がほろほろと崩れる。

 お肉の味わいとソースの甘酸っぱさがたまらない。

 さすがレオンだ。


 レオンのお嫁さんになれる人はしあわせだろうな。

 ……わたしがなっちゃダメかな?

 レオンが結婚のことで珍しく怒っていたので、わたしはかすかな期待を抱いていた。


「わたしも料理を勉強したほうがいいかな」

「僕では不満でしょうか」

「違うよ。花嫁修業」

「結婚されるのですか」


 レオンがぽろりとフォークを落とす。


「ち、違うって!」

「そ、そうでしたか……」


 レオンは冷静さを装ってフォークを拾うけれど、動揺しているのがわたしにもわかった。


 レオンはわたしと結婚したい?

 ……とは、勇気が無くてきけなかった。

 答えによっては『刻のアトリエ』での二人の生活が終わってしまう気がして、こわくて。


 主従関係にわたしは甘んじている。

 それ以外の、それ以上の関係になるのを本当は望んでいる。

 でも、それができるだろうか。『イモ娘』のわたしに。

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