6-1:オリオンオークション
ううう……。カシマール先生ってばなんてことを……。
そういうなりゆきでわたしとレオンは怪盗ゼロを捕まえることになったのだった。
捕まえたら報酬として黒魔石がもらえるけど、無理に決まってる。
わたしたちはただの貧乏貴族とその執事。悪党を捕まえるなんてむちゃもはなはだしい。
断ろうにもオリオンさんがわたしたちに期待しているのがありありと伝わってきて、結局断れずにオリオンオークションを後にしたのだった。
「どうしよう! レオン!」
アトリエに帰ってくるなり、わたしはレオンにすがりついた。
レオンも難題を前にした面持ちをしている。
「残念ですが、オーレリウムの花を咲かせるのはあきらめたほうがよろしいかと」
やっぱりそうか。そうなるよね。
ギュスターヴさんを見返すという目的はあるにせよ、そこまでこだわる必要はない。
彼と妹のミントには失望されるだろうけど、それだけだ。
これは単なるわたしのプライドの問題。
ミントに安請け合いした報い。
胸にもやもやは残るけど、今回は諦めよう。
オリオンさんのところに戻って依頼を断ってこよう。
……としたとき、アトリエに来客。
「ルゥ、遊びにきましたわ」
それは思いもよらぬ来客だった。
「狭くて小汚い店だ」
ギュスターヴさんとミントがやってきたのだ。
「汚くありませんわよ、お兄さま。とっても掃除が行き届いていますわ」
「恐縮です」
うやうやしく礼をするレオン。
ミントは興味津々といったようすで店内を見て回っている。
ギュスターヴさんはつまらなそうにしている。
「おい、なにをぼーっとつっ立っている。俺たちは客だ」
「あっ、えっと、いらっしゃいませ……」
「あ、あいさつではないっ。もてなせと言っているのだ!」
わたしは戸惑いつつも二人を応接室に案内した。
「ミントがわざわざお前に会いにきてやったのだ。ありがたく思え」
紅茶の入ったカップを口にあてて傾けるギュスターヴさん。
一口飲んで、口の端をつり上げる。
「ほう、紅茶の淹れかたがわかっているな」
「お褒めにあずかり光栄です」
「無能な主人と違って執事のほうはできている」
「お言葉ですが、ルゥさまはとても有能なお方です。お間違えの無きよう」
「レオンさん。お兄さまはすなおじゃない人ですの。気にしなくて結構ですのよ」
「承知しました」
「ふんっ」
わたしもレオンの淹れてくれた紅茶を飲む。
うーん、おいしい。
とっても上品な味わい。……紅茶の味とかよくわかんないけど。
「ミント、今日はどんな要件で来たの?」
「あら、友達の家に遊びにいくのに理由がいりまして?」
ミントはわたしにウインクしてみせた。




