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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
オーレリウムの花
55/96

5-14:オーレリウムの花

「こちらの方は?」


 オリオンさんの視線がレオンを向く。


「この人はわたしの――」


 そこまで言って言葉に詰まる。

 わたしの執事。

 そう言えばいいのに、なぜか言葉に出せなかった。


「ああ、パートナーのレオンさんですね。『刻のアトリエ』は若い男女で経営していると聞きました」

「はい。ルゥさまの執事をしております」


 代わりにレオン自身があいさつした。

 わたしは気まずくなって二人から視線をそらした。


 レオンはわたしの……。

 なんて言えばよかったんだろう。

 やっぱり――パートナー?


 それからオリオンさんの支配人室に案内された。

 ルーグ家の書斎よりひと回り大きな部屋だ。

 ここで取引先と商談をしているのだろう。執務机の他にテーブルとソファもある。

 わたしとレオンは並んでソファに座り、テーブル越しにオリオンさんが座った。


「事情はカシマール先生の手紙で知っております。黒魔石をご所望とのこと」

「どうしても必要なんです」

「オリオンさまは黒魔石を持っていらっしゃるのですか?」

「ええ。我がオリオンオークションの所有物に黒魔石があります。本来は競売にかけるのですが、よろこんでお譲りいたしますよ」

「本当ですか!?」


 すごい!

 カシマール先生、どんな手紙を書いたのかしらないけど、譲ってもらえるなんて!

 と、ぬかよろこびも束の間、オリオンさんはこう続けた。


「依頼解決のあかつきには」


 ……依頼?

 なんの話だろう。

 機嫌がよさそうな笑顔のオリオンさん。


「『怪盗ゼロ』を捕まえていただけるなんて、本当に『刻のアトリエ』はなんでも解決していただけるのですね」

「……えっと」


 わたしとレオンはあ然としながら顔を見合わせる。


 オリオンさんはこう言う。

 近々、オリオンオークションで目玉商品である、とある絵画が競売にかけられる。

 それを『怪盗ゼロ』という泥棒が盗みにくると予告状が送られてきたのだ。


 怪盗ゼロは資産家の間では有名で、裕福な者たちから財産を盗み、それをお金に換えて貧しい人たちに分け与えている義賊なのだ。

 どれだけ厳重な警備であっても怪盗ゼロは苦も無くすり抜け、お宝を盗んでいく。

 オリオンオークションもついに今回、目をつけられた。


 そんなとき、オリオンさんの古い友人であるカシマール先生が、黒魔石の譲渡を条件に助っ人をよこしてきた。

 それがどうやらわたしとレオンらしい。


「竜と倒したというお二人がいればもう安心です。『怪盗ゼロ』の悪行もこれまでですね」


 竜は倒してないんだけどな……。


「レオン」


 わたしはレオンに顔を近づけてひそひそと話す。


「なんか、とんでもない話になってない?」

「カシマール先生が手紙に書いたのですね」

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[良い点] いても楽しく読んでます! 一番悪い先生代表『カシマール先生』(笑) 説明が毎回少ない!
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