5-10:オーレリウムの花
かわいい子だなあ。
うらやましくなる。
わたしなんて『イモ娘』だし。
それはともかく、ギュスターヴさんはどういう反応をするだろう。
わたしとミントが仲良くなるのを快く思っていないかも。
お前など我が妹の友人にふさわしくない――とか言われるのをわたしは覚悟した。
「ルゥ・ルーグ」
ひえ……。
さっそく来た。
わたしは身構える。
ところがギュスターヴさんは思いもよらぬことを言った。
「妹と仲良くしてやってくれ」
「えっ? う、うん。もちろん」
この人やっぱりいい人なんじゃ。
ミントもレオンに言う。
「レオンさんも、どうぞよしなに」
「これはこれはごていねいに。僕のほうこそよろしくお願いいたします」
それからわたしたちはオーレリウムの花を咲かせるため、中庭へとやってきた。
「ルゥさん。オーレリウムのことはもうあきらめたので無理はなさらないでくださいまし」
ミントが心配そうな面持ちをしている。
「だいじょうぶ。今度は秘策があるんだよ」
わたしは自信たっぷりに胸を張ってみせる。
それでもミントはまだ不安げな顔。
わたしのことを気にかけてくれているんだ。
「わたしを信じて」
信じてもらえるよう、ミントをまっすぐ見つめる。
「……はい」
ミントがにこりと微笑んだ。
「あ、ところでミント。わたしのことも『ルゥ』って呼んで。『さん』はいらないよ」
「ですけど、わたくしのほうが年下ですわ」
「友達だもん。関係ないよ」
「で、では……、ルゥ。どうかオーレリウムの花を咲かせてください」
「うんっ」
オーレリウムの前に立つ。
オーレリウムはまだつぼみのままだ。
前は失敗したけど、今度こそ花を咲かせてみせる。
左手で魔宝石を握る。
精神を集中させる。
魔宝石から魔力が流れ込んでくるのがわかる。
感じる。
たくさんの魔力がわたしの身体をめぐっている。
身体の内側が温かい。
魔力の流れを操ってステッキの先端に魔力を集め、オーレリウムにかざして唱えた。
「時間よ――『進め』!」
まばゆい光がステッキの先端から発せられる。
魔力がオーレリウムに流れ込んでいく。
そのとき、思いもよらない事態が起きた。
片手で握っていた魔宝石が手の中で砕けた。
その次の瞬間、身体の魔力が一気に奪われていくのを感じた。
まずい。
わたしはとっさにステッキをかざすのをやめた。
急激な脱力。
足がふらつく。
倒れそうになったところレオンが抱き留めてくれた。
「ルゥさま!」
「あ、ありがとうレオン」
「ルゥ!?」
「イモ娘! ケガはないか!?」
「一応なんともないみたい」
魔宝石を握っていた手を開いてみる。
魔宝石は粉々に砕けていた。
たぶん、魔力を使い切ったのだ。




