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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
オーレリウムの花
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5-9:オーレリウムの花

 光が収まる。

 机に置いてあった釣り竿は時間を逆戻りし、折れる前に戻っていた。

 今度こそ『刻星術』成功だ。


「やったぜ! 俺の愛しの釣り竿よ!」


 カシマール先生は釣り竿を抱きしめた。

 男の人って、大人になっても子供なのかな……。


「釣り竿が大事なら、今度は家族といっしょに釣りに行ってくださいね」

「わかってるって」


 カシマール先生の依頼を解決した報酬として、わたしたちは魔宝石を譲ってもらった。

 わたしは魔宝石をまじまじと眺める。

 透き通る赤のきれいな宝石だ。


「カシマール先生。魔宝石はどのように使用すればよろしいのでしょうか」

「身に着けていればそれだけでだいじょうぶだ。ポケットにでも入れておけ」

「ありがとうございますっ。ところで――」

「あん?」

「カシマール先生って、どうしてここまでわたしたちを助けてくれるんですか?」


 どちらかというとカシマール先生は人助けは好まない性格に感じる。

 にもかかわらず、わたしとレオンを何度も助けてくれた。

 この人が親身になってくれる理由がわからなかった。


「別に大した理由なんてないさ。聖女さまとその執事の奮闘する姿が見てて面白いだけだ」

「面白いですか?」

「ああ。若いっていいなーってうらやましくなるぜ」

「カシマール先生、そんな年齢じゃないでしょ」

「うれしいこと言ってくれるじゃねえか」


 カシマール先生は苦笑する。

 それからわたしの頭に手を乗せてなでてきた。

 ぶっきらぼうななでかただ。


「ルゥ・ルーグ。その純粋さを失くすんじゃないぞ」

「は、はい……」


 いきなり真剣な声で言われて驚いた。

 今の言葉にどんな意味があったのだろう。



 それからわたしとレオンはギュスターヴさんのお屋敷を尋ねた。

 わたしたちの来訪を知ったミントさんが玄関まで迎えにきてくれた。


「ルゥさん! よかった……。目が覚めてくれて」

「すみません、ミントさん。オーレリウムの花を咲かせられなくて」

「いいのですわ。ルゥさんがご無事なら」


 ミントさんの背後にはギュスターヴさんが立っていた。

 腕を組んでわたしをにらみつけている。


「ところでルゥさん。わたくしのことはどうぞ『ミント』と呼んでくださいまし。わたくしのほうが年下なのですから」

「えっ……」


 それはうれしいんだけど……。

 ギュスターヴさんの形相が怖い。

 返事次第ではとんでもないことになりそうだ。


「じゃ、じゃあ……、ミントって呼ばせてもらうね」

「はいっ。これでわたくしたち、お友だちですわ」


 ミントがわたしの手をぎゅっと握った。

 指の細い、精巧な人形みたいなきれいな手だ。

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