4-7:竜の問いかけ
「嫌ではありません。むしろ逆に――いえ、なんでもありません」
と、とにかく、これで『刻のアトリエ』を続けられる。
さっそく月のかけらをさがそう。
「月のかけらはどれでしょうか……」
レオンが足元にあった石ころを拾う。
「僕に魔法の才能はありませんから魔力を感じ取れません。ルゥさま、どうでしょうか」
「えっとね」
困った。
実を言うと、わたしにもどれが月のかけらか判別がつかなかった。
魔力を感じられないわけではない。
逆に魔力を感じすぎているのだ。
この山頂一帯から霧のように立ち込める魔力のせいで、石ころか月のかけらかわからない。
色で見分けをつける方法があるけれど、やっぱり魔力で判別するほうが正確だと思う。
せっかく持ち帰ったのに、ただの石だったなんてあんまりだもんね。
「アルタイル。どれが月のかけらなんですか?」
「『どれ』と言われても、そこら中に転がっているからの」
「ただの石も混じっているんですよね?」
「さよう」
「一番いいのを選んでください――っていうのは、ダメ?」
「おぬしの運命に関わるものだぞ。他人に選ばせてよいのか?」
「そ、それはたしかに……」
「大いに悩むがいい。少女よ」
わたしたちが悩んでいるのをアルタイルは楽しんでいるような感じだった。
「うーん」
レオンは真剣な顔をして石を選別している。
手のひらに収まる大きさのものをわたしに見せてくる。
「ルゥさま、これなんてどうでしょう」
「えっと、いいと思う」
「では、こちらはいかがでしょうか」
「それもいいんじゃないかな」
「それはただの石ころだぞ」
「うぐっ」
適当に相づちを打っているのをアルタイルにバラされてしまった。
「無理を承知でカシマール先生に同行をお願いするべきでしたね」
「それはダメだよっ」
反射的に声を上げてしまった。
案の定、レオンはぽかんとしている。
し、しまった。つい……。
「ど、どうしてでしょうか……?」
「それは……」
目線をそらしてうつむく。
レオンの顔を正面から見られない……。
わたしは小声でぼそっとこう答えた。
「レオンと二人きりで冒険したかったから」
「ルゥさま……」
レオンはどんな表情をしているのだろう。
気になるけれど、見ることができなかった。
――と、そのとき、足元に落ちている石に気付いた。
手のひらに収まるくらいの手ごろな石だ。
色は白い。
「こっ、これとかどうかな!?」
わたしは話題を変えようとそれをレオンに見せた。
「僕には判別できませんが、ルゥさまが選んだのですからきっとよいものなのでしょう」
「アルタイル。これって――」
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