4-2:竜の問いかけ
「ルゥさま!」
がくんっ、と視界が揺れる。
一瞬、なにが起こったのかわからなかった。
レオンがわたしを抱いて飛び退いてくれたのだと、少し遅れて気付いた。
レオンがかばってくれなかったら今頃、スティールホーンの突進が直撃していた。
危ないところだった。
そのスティールホーンは勢い余って後ろに通り過ぎていた。
もう一度!
わたしは再び集中し、魔力を凝縮させる。
そして唱えた。
「光の矢よ、敵を射抜け!」
わたしの手から光の矢が放たれた。
一直線に飛んでいったそれはスティールホーンの胴体に突き刺さった。
衝撃で吹き飛ぶスティールホーン。
スティールホーンは倒れて動かなくなった。
やっつけたのかな……?
「ルゥさまはそこでお待ちください」
剣を握りしめたレオンがゆっくりと近づいていく。
そしてスティールホーンの身体に触れ、死んでいるのを確かめた。
「見事でございます。ルゥさま」
「やった!」
魔物を倒した!
わたしの魔法が役に立ったんだ。
「どう? レオン。わたしだって戦えるんだよ」
「まさに戦女神のごとき戦いぶりでした」
とはいえ、たった一体の魔物相手にここまで苦戦していたら身体がもたない。
魔物との戦いはできるだけ避けるべきだろう。
けれど、わたしたちにできることは魔物と遭遇しないのを祈るくらいだった。
魔物を倒したわたしとレオンは再び山を登りだした。
ごつごつした岩山は歩くだけで大きな負担がかかる。
休憩をこまめに取りつつ山道を登っていく。
「『刻のアトリエ』を再開できたら、繁盛できるようにがんばるね」
「このレオン、微力ながらお手伝いいたします」
「レオンといっしょならわたし、きっとうまくいく気がする」
「ふふっ。そうですね。僕たち二人で『刻のアトリエ』を王都一のお店にしましょう」
僕たち二人で。
その言葉がとても心地よく耳に残った。
「そういえば、月のかけらってどんな形してるんだろう」
カシマール先生に見せてもらったのは加工後のものだった。
他の石と見分けがつかなかったらどうしよう。
「ねえ、わたしの声、聞こえる?」
「聞こえますよ」
「あっ、レオンじゃなくて大樹に話しかけてみたの」
大樹なら月のかけらについて詳しく知っているかもしれない。
――どうしました、ルゥ・ルーグ。
大樹の声が心に届いた。
「月のかけらってどんな形をしてるの? わたしたちが見てわかるものなのかな」
――月のかけらは純白の石です。一見しただけで判別できるでしょうし、あなたなら月のかけらが持つ特殊な魔力を感じ取れるでしょう。
「ルゥさま。大樹はなんと言ってますか?」




