2-1:刻のアトリエ
わたしとレオンの『刻のアトリエ』開店初日が終わった。
まだ胸がどきどきしている。
でも、この高揚感は心地よくもあった。
今日、仕事というものをはじめてした。
せいいっぱいがんばったつもりだけど、他人からすればあたふたしているだけだったかもしれない。
でも、こうして店じまいしてバルコニーで夜空を眺めていると、気持ちのいい達成感がわいてきてた。
「ルゥさま、まだ起きていらしたのですね」
レオンがやってくる。
わたしのとなりに立つ。
「わたし、うまくやれてたかな?」
「はい、それはもう完璧と言っても過言ではないでしょう。その証拠に『刻のアトリエ』は開店初日から大繁盛でした」
レオンの言うとおり『刻のアトリエ』には驚くほどのお客さんが足を運んでくれた。
記念すべき最初の依頼の相手は小さな女の子だった。
何年も経ってぼろぼろになったぬいぐるみを元通りにしてほしい、という依頼だったので、わたしの力でぬいぐるみの時間を戻し、作りたての状態に戻した。
そこから一気にうわさが広まり、王都中の人々が押し寄せてきたのだ。
たった一日で『刻のアトリエ』は王都中に知れ渡ったのだ。
「星、きれいだね」
「美しいですね。近くで見るとでこぼこの岩というのに」
「えっ、そうなの?」
「望遠鏡で見られます」
「よーし、お金がたまったら最初に望遠鏡を買おう!」
満天の星。
心細くなるほどの暗い夜空に、星たちはいっしょうけんめい輝いている。
その輝きがわたしに元気と勇気をくれた。
「『刻のアトリエ』をいつか王都で一番おっきなお店にしようね」
「ルゥさまならきっとできます」
「『わたしとレオンなら』だよ」
「はいっ。そうですね。僕たちなら、です」
お店が順調にいきそうなのもうれしいけど、なによりうれしかったのが、レオンといっしょに暮らせること。
偽聖女扱いされてみんなから嫌われていたわたしを、唯一慕ってくれていた彼。
わたしが誰よりも大切にしたい人。
吹雪の夜、彼がわたしのイヤリングをさがしてくれなければ、わたしは聖女としての力に目覚めることはなかった。
彼の想いにわたしは応えたい。
それが今、わたしが彼にできること。
レオンはわたしにとっての星だった。
「ですが、僕は――」




