3-7:禁じられた魔法
「ご用件ですか?」
「なっ、なんでもないよ。いい加減寝るね」
「はい」
わたしはレオンがそばにいるのを意識してしまってちっとも寝付けない。
カーテンの隙間から見える夜空をぼーっと眺めていた。
満天の星。
くっきりとした輪郭の三日月。
きれいな夜空だ。
レオン、まだ起きてるのかな。
ためしにもう一度呼んでみようと思ってやめた。
レオンのことだから、たとえ眠っていたとしてもわたしの声を聞いた瞬間、即座に起きて「はい、起きています」と言うに決まっているから。
わたしの気まぐれで起こすのはかわいそうだ。
……と、そのときだった。
わたしの心の中に女性の声が聞こえてきた。
――ルゥ。私の声が聞こえますか。
大樹の声だ。
わたしの『刻星術』で若返らせた大樹。
彼女はなぜかわたしの心に声を届けることができる。
――外へ出て、あなたの声を聞かせてください。
レオンを起こさないよう、そっと部屋を抜け出す。
外に出る。
夜の空気は少し肌寒い。
月明かりが世界を青白く照らしている。
「大樹さん。あなたに言いたいことがあったんだよ」
――なんでしょう。
「『刻星術』に代償が伴う、ってどうして隠してたの?」
――すみません。それを話せば、あなたは時を操るのをためらうと思ったからです。
「危うくわたし、おばあちゃんになっちゃうところだったよ」
――安心してください。『刻星術』で代償となる寿命は微々たるものです。今のところあなたは本来の年齢からは逸脱しておりません。
寿命を代償とするのは間違いなかったのが大樹の話で判明した。
――ルゥ・ルーグ。あなたは救いをもたらす聖女。『刻星術』を正しく使い、人々を導くのです。
「わ、わたし、そんな大それたことするつもりはないよ。レオンと二人でお店を続けていくつもり」
――あなたがそれを望んでも、運命はやがてめぐります。いつの日か大いなる試練があなたに立ちはだかるでしょう。
「こ、こわがらせないでよ……」
――恐れる必要はありません。あなたには試練を乗り越える力があるのですから。月のかけらを手に入れ、『刻星術』を使いこなすのです。聖女ルゥ・ルーグよ。
その言葉を最後に大樹の声は聞こえなくなった。
聞こえるのはフクロウの鳴き声。
「ルゥさま」
夜の暗闇からレオンが現れる。
「レオン、起きてたんだ」
「ルゥさまをお守りするのが執事たる僕の役目ですので」
うやうやしくおじぎするレオン。
結局レオンに気をつかわせてしまった。
「大樹の声が聞こえたのですか」
「そうだったんだけど、一方的に話すだけ話して聞こえなくなっちゃった」
「きまぐれで語りかけてきたとは思えません。なにかの前触れかもしれませんね」
「も、もしかして悪い予兆?」
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