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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
禁じられた魔法
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3-5:禁じられた魔法

「えっと、ひとりごと……」


 わたしは勝手に落ち込んでしまった。


 しばらく待つと食事が運ばれてきた。

 おいしそうなお肉! お皿の上でジュージュー言ってる!

 レオンの魚料理もおいしそう。


「ねえ、レオン。半分こしない?」

「ルゥさまも魚料理をご所望なら、追加で注文しましょうか?」

「わ、わたしそこまでくいしんぼうじゃないよ!?」


 わたしのお肉を半分レオンにあげ、レオンの魚料理を半分もらった。

 フォークとナイフを使ってお肉を口に運ぶ。

 ちょっと固いけど、食べ応えがあっておいしい。

 魚料理も我が家のシェフが作るものに負けてない。


「とってもおいしいね、レオン」

「驚きました。王都のレストランで出てもおかしくない味です」

「ほめてくれてありがと」


 通りかかった店員の女性がそう言ってウィンクした。

 二人の料理はあっという間に食べてなくなってしまった。

 空腹を満たして、しあわせな気分になる。

 少し前まで落ち込んでいたことなどすっかり忘れてしまっていた。


「アシロマ山まであとどのくらいかな」

「僕たちのいる町はここにありますので――」


 レオンは地図を広げて町のある場所を指さし、そこから指を北に動かす。


「明日の朝に列車が発車すれば、夕方には到着するかと」

「あともうちょっとだね」


 アシロマ山で月のかけらを手にいれる。

 そしてカシーマル先生にペンダントに加工してもらう。

 そうすれば代償を払うことなく『刻星術』を使えるようになる。


「……ルゥさま。『刻星術』を使って列車を直しましたが、お身体のほうに変化は」

「今のところ実感はないかな」


 寿命を代償に『刻星術』を使うのだとカシマール先生は言っていた。

 とはいうものの、本当に寿命が縮んだのか実感できていない。

 わたしはぴんぴんしている。

 本当に代償を支払っているのだろうか。


「『刻星術』を使うのはこれきりにしてください」

「うん。わかってる」


 そう言ったけれど、きっとわたしはまた使うだろう――レオンに危機が訪れたときは、ためらいなく。

 わたしはレオンの為ならいくらでも寿命を支払ってもいい。

 レオンは誰よりも大切な人だから。


「でも、レオンより年上になるくらい使うならいいよね?」

「ルゥさま……。本当に使わないと約束してくださいね」


 わたしの冗談にレオンは困った顔をしていた。


「あなたたち、アシロマ山に行くの?」


 さっきの店員の女性が話しかけてきた。


「あっ、ごめんなさい。お客さんに料理を運ぶとき、二人の席のそばを通ったから聞こえちゃったの」

「いえいえ、かまいません。わたしたち、アシロマ山に行くんです」

「月のかけらを採取しに向かうのです」

「そうなの……」


 店員の女性は心配そうな面持ちをしながらこう言う。

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