3-4:禁じられた魔法
二人でいっしょに寝よう。
――なんて言えるほどわたしは子供ではない。
「ありがと」
だから彼にお礼を言った。
荷物を部屋に置いた後、食事をしに外へ出た。
向かったのは酒場。
酒場は仕事が終わった町の大人たちと列車の乗客たちで賑わっていた。
いろんな料理のにおいが混ざって漂ってくる。
それと、お酒のにおいも。
大人の世界だな、とわたしは少し緊張していた。
「いらっしゃーい。お好きな席にどうぞ」
店員の女性に促されてわたしとレオンは隅の空いているテーブルに着いた。
「注文するときは呼んでちょうだい。ふふっ、かわいいお嬢ちゃんね」
「えっ、わたし、かわいいですか?」
「とてもかわいいわ」
メニューをテーブルに置くと店員の女性はカウンターのほうに戻っていった。
酒場には初めて来たけど、こんな感じなんだ。
きょろきょろと周囲を見渡す。
みんなごきげんな様子で食事を食べてお酒を飲んでいる。
お祭りみたいだ。
今更だけど、子供だけで来てよかったのかな。
子供という年齢ではないけれど、それでも未成年の16歳と17歳だ。
ここってお酒を飲むところだからつまり、わたしたちは入っちゃいけない年齢である。
そこで理解した。
さっきの店員さんの『かわいい』って、わたしが子供という意味だったのを。
容姿をほめられたと勘違いしていた。
ううっ、はずかしい……。
「ルゥさま、肩の力を抜いてください。今夜はおいしい料理を楽しみましょう」
にこりとやさしく微笑むレオン。
赤面して縮こまっていたわたしは、彼の笑顔に助けられて落ち着くことができた。
落ち着くと、自分が空腹であるのを思い出した。
「わたし、お肉が食べたいな」
「お肉ですね。かしこまりました。では僕は魚料理を頼みましょう」
店員を呼んで料理を注文する。
さっきの女性が再びやってきた。
「お酒はいらないの? お嬢ちゃんはまだ飲めない歳に見えるけど、そちらの美男子のお兄さんは?」
「僕もまだ17ですので」
「あら、そうだったの。わかったわ。なら、ジュースね」
店員の女性が「ステーキと鮭のムニエル!」と厨房に叫びながら去っていった。
「レオン、美男子かー」
「おせじですよ」
ふと思う。
主従関係ではわたしが主でレオンが従者だけど、他の人からは逆に見えるのではないか。
レオンは美男子で正体は王子さま。
一方、わたしは田舎の小さな貴族のあか抜けない娘。
「レオンに勝ち目がない……」
がっくりとうなだれてしまう。
レオンが「どうしました?」とふしぎそうに顔をのぞきこんでくる。
「『勝ち目』とは?」




