3-1:禁じられた魔法
「夕方までに列車が直らなければ僕たちが助けましょう」
わたしとレオンは夕方まで列車が直るのを待った。
そして夕刻。
地平線に太陽が沈みかけたころ、わたしたちは列車の修理のようすを見にいった。
機関室というものがある先頭車両に行くと車掌に止められた。
「お客さま、ここは立ち入り禁止でございます。席にお戻りください」
「あの、列車直りそうですか?」
「も、もう少々お待ちを……」
申し訳なさそうに車掌が答える。
その口調から、修理にてこずっているのがわかった。
「列車の修理、手伝わせてください」
「えっ」
驚く車掌。
当たり前だ。車掌からすればわたしたちは貴族の娘とその召使いにしか見えないだろうから。
「わたしの魔法で直せるかもしれないんです」
「魔法が使えるのですか?」
「たぶんですけど、直せるはずです」
車掌は考え込む。
乗客であるわたしたちの力を借りるべきか悩んでいる。
――と、そのときだった。
「大変だ! 魔物が現れた!」
もう一人の車掌が慌てて駆け込んできたのは。
窓から顔を出して外を見る。
すると、列車の近くに3体のオオカミが群れていた。
オオカミにしては大きい。
「ブラッドハウンドでございます」
レオンがオオカミ型の魔物の名前を口にする。
ブラッドハウンドの群れを威嚇するように車掌たちが猟銃の先を向けている。
うなり声をあげるブラッドハウンド。
パンッ!
銃声。
恐怖に耐えかねた車掌の一人が発砲した。
しかし、ブラッドハウンドたちは逃げようとしない。
「助けにいかなくては」
レオンが扉を開けて外に飛び出した。
わたしもそれに続いた。
外に出るの同時にブラッドハウンドが車掌たちに攻撃をしかけてきた。
車掌の一人が押し倒される。
喉にブラッドハウンドが食らいつこうとした寸前、レオンの剣がブラッドハウンドの背中に突き刺さった。
1体倒した。
残りの2体がレオンめがけて襲いかかる。
わたしはステッキを前にかざし、呪文を唱えた。
「光の矢よ!」
かざしたステッキの先から細い光の矢が放たれる。
それは緩やかな曲線を描いて敵を追尾し、今まさに飛びかかろうとするブラッドハウンドの横腹を貫いた。
よかった。成功した……。
レオンが振り向きざまに剣を振る。
彼に襲い来る最後の1体のブラッドハウンドを斬って倒した。
魔物の群れは全滅した。
「ルゥさま!」
レオンがわたしのもとまで駆け寄ってくる。
すごく心配そうな顔をしている。
「お怪我はありませんか」
「だいじょうぶだよ。レオンこそ怪我はない?」




