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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
刻のアトリエ
16/96

2-14:刻のアトリエ

「ヒミツです」

「えーっ!?」


 まさかの答えに、逆にわたしが驚かされてしまった。

 レオンらしからぬ答えだ。

 それとも前の意趣返し?


 この瞬間を見計らったかのように汽笛が鳴る。

 ベルがやかましく鳴りだす。

 窓に映る景色がゆっくりと横に流れていく。


 いよいよ出発だ。

 景色の流れがだんだんと速くなっていく。

 駅を出るころには列車は怖いくらいの速度で線路を走っていた。


 すごい。こんなに速いんだ。

 目が回りそうな速さで景色が流れていく。

 わたしはその光景に釘づけになっていた。


「すごいね、レオン」

「どうぞ心ゆくまでご堪能ください」


 王都を去った列車は今、郊外の穀倉地帯を走っている。

 黄金色の麦畑が一面に広がっている。

 牧歌的な景色。


「どういう原理で列車は走ってるの? 魔法?」

「蒸気の力で走っているのです」


 あ、レオンってば、わたしが無知だからってからかってる。

 蒸気って、お湯を沸かしたときにでる湯気じゃない。

 そんなものでこんな大きな列車が走るわけがない。


「もう、まじめに答えてよ」

「えっ。い、いえ、僕はしごく真面目に答えたつもりですが……」


 頬をふくらませて憤慨するわたしにレオンは戸惑っていた。


「それはともかくルゥさま、お弁当を食べましょう」


 レオンがひざの上に置いたお弁当箱を開ける。

 中にはサンドイッチが敷き詰められていた。

 その一つをレオンがわたしに手渡す。


 サンドイッチにかじりつく。

 うん、おいしい。

 レオンもサンドイッチを上品に食べる。

 そして満足げにうなずいた。


「さすがルゥさまのつくったサンドイッチ。とてもおいしいです」

「野菜やお肉をはさんだだけなんだけどね」


 ハムもチーズも買ってきたものだし、わたしはそれを切ってはさんだだけだ。

 レオンってば、やっぱりなにをしてもわたしをほめてくれる。


 いつかもっと本格的な料理をおぼえよう。

 そしてレオンをあっと驚かせてやろう。

 今のところ家事は全部レオンにまかせっぱなしだから。


「わっ」


 突然、列車の中が真っ暗闇になる。

 窓の外の景色も真っ暗でなにも見えない。


「トンネルに入ったのですね」


 レオンが説明してくれる。


「トンネルって?」

「山にあけた横穴です。僕らは今、山の中を通っているのです」

「山に穴をあけるって、大変じゃない?」

「ええ。何年にもわたる大工事だったと聞きます。しかし、そのおかげで山を迂回せずに済み、となりの都市へ短時間で行けるようになったのです」


 それにしてもこう真っ暗だと不便だ。

 よし、いい機会だ。魔法の練習をしよう。


「――光よ」

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