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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
刻のアトリエ
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2-12:刻のアトリエ

 人だかりがさっと割れて、そこを歩いてわたしとレオンの前から去っていった。

 釈然としないけど、剣は手に入った。

 これでアシロマ山を探索できる。


「ではルゥさま、冒険の支度をしましょうか」


 それからわたしとレオンは街をめぐって冒険に必要な道具を買いにいった。

 多すぎても少なすぎてもいけない。

 リュックサックに入るちょうどいい量を用意する。

 レオンは品定めをしつつ、てきぱきと道具をそろえていった。


 そして『刻のアトリエ』に帰る。

 いよいよ冒険のときが近づいてきた。

 胸がどきどきする。

 不安というよりも、未知の世界に飛び出す期待の高鳴り。


「がんばって月のかけらを見つけようね」

「おまかせください。執事の威信にかけて見つけてみせましょう」


 きっと怖い思いもするだろうけど、レオンがいるからきっと乗り越えられる。



 夜。食事と入浴を済ませて自分の部屋に入る。

 ベッドに寝そべり、本を開く。

 カシマール先生から借りた魔法書。


 初歩的な魔法が書かれていると言っていたけれど、魔法を習ったことのないわたしには本の内容を理解するのかなり苦戦した。

 読んでいると頭がくらくらしてくる……。

 カシマール先生に直接教わればよかったな、と今更後悔する。


「えーっと、これは照明の魔法かな……?」


 ステッキを手にして、本に書かれている呪文を詠唱する。

 そして最後にこう唱えた。


「光よ」


 ステッキの先から小さな光の球が出現する。

 光の球は白く発光しながら空中をふわふわと浮遊しだした。

 やった! 成功だ……たぶん。


 よし、レオンに自慢しにいこう!

 自分の部屋を出てレオンの部屋に行く。

 扉をノックするとレオンが出てきた。


「見て見て。わたし、魔法に成功したよ」

「お見事です、ルゥさま」


 ほめてくれているけれど、レオンは苦笑いを浮かべている。

 もしかすると、わたしが戦うことに気乗りしないのかな。


「レオン。わたし、やるときは結構やるんだよ」

「ですが」

「守られてばかりのお姫さまじゃないところ、見せてあげるから」

「くれぐれも無茶はなさらないでくださいね」



 そして冒険の日になった。

 わたしとレオンは今、王都の駅にいる。

 目の前に大きな列車が止まっている。


 列車を間近で見るのは初めてだったから、わたしはその迫力に驚いていた。

 車両がいくつも連なっていて、車輪もたくさんついている。

 先頭車両には煙突のようなものがある。

 どういう仕組みで走るんだろう。こんな大きなものが。


「僕たちの席はあちらの車両にあるようですね」

「レオンは列車に乗ったことある?」

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