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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
刻のアトリエ
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2-10:刻のアトリエ

「ギュスターヴさん」

「むっ、きさまらは!」


 ギュスターヴさんがわたしとレオンに気づくと、目をかっと見開いた。

 それからあからさまに敵意を含んだ目でにらみつけてくる。

 そ、そんな顔しなくていいのに……。わたしたち悪者じゃないんだから。


「きさまら、なんの用でここに来ている」

「剣を買いにきたんです」


 月のかけらを手に入れにアシロマ山に行くことをギュスターヴさんに話す。


「アシロマ山だと。そんな危険な場所に行くのか。無謀と言わざるをえんな」

「レオンが剣術で戦えるんだけど、わたしたち剣を持ってなくて」

「だから剣を買いに鍛冶屋まで来たわけか」

「でも、高くて買えなくて……」

「ふん。なるほど。事情は把握した」


 するとギュスターヴさんは意外なことを口にした。


「剣なら俺がいくつかか持っている」

「もしかして譲ってくれるんですか!?」

「ただし、条件がある」


 ギュスターヴさんはにやりと笑う。

 なんか、イヤな予感がする。

 ギュスターヴさんの視線がレオンに向く。


「銀髪の召使い。確かレオンとか言ったな」

「僕になにか?」

「きさま、俺と剣術で勝負しろ。俺に勝ったら好きな剣をくれてやる」


 勝負!?

 それって、レオンとギュスターヴさんの決闘ってこと!?


「だっ、ダメ!」


 わたしは即座に拒否する。


「魔物とならともかく、人と人が戦うなんてダメだよ」


 するとギュスターヴさんは不愉快そうに眉をひそめる。


「腰抜けめ。人とは戦うことで望むものを勝ち取れるのだ」

「で、でも」


 レオンに決闘なんてさせたくない。

 彼が王子だというのももちろんあるけど、それ以前にレオンはわたしの大切な人だ。

 レオンにもしものことがあったらわたし……。


「どうする? 銀髪。俺は絶好の機会だと思うがな」


 ギュスターヴさんが挑発してくる。

 レオンは黙って考え込んでいる。

 わたしが「やめよう」というとしたそのとき、レオンが先に口を開いた。


「いいでしょう。その戦い、受けて立ちます」

「レオン! ダメだよ」

「ご安心ください。こんな嫌味な男に僕は敗北しません」


 レオンがにこりと笑った。

 嫌味な男と言われたギュスターヴさんが怒りの表情に変わる。


「銀髪。覚悟はできているだろうな」

「それはこちらのセリフです」

「ならば表に出ろ!」


 路地裏にあった鍛冶屋を出て表通り。

 レオンとギュスターヴさんが少し距離を置いて対峙する。

 なにごとかと人だかりができ、人の輪がわたしたちを囲っていた。


「なんだなんだ」

「決闘だって!」

「あいつ、王国騎士団のギュスターヴじゃないか」

「銀髪の人は誰だ?」

「『刻のアトリエ』のお嬢ちゃんもいるぞ」


 人々がざわざと話し合っている。


「剣を取れ」


 ギュスターヴさんが剣を投げる。

 レオンはそれを手にする。


「逃げるなら今のうちだぞ」

「あなたこそ逃げても結構ですよ」

「ふざけやがって!」


 剣を構える二人。

 じりじりと少しずつ互いににじり寄る。

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