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お…おはようございます…
身じろぎした拍子にふと目が覚めた。
寝起きの霞んだ眼には薄暗い天蓋しか見えない。
嗚呼また夜が明けきらない内に目が覚めてしまった。
もう一度眠れないものかと掛布を頭まで引き上げて、もぞりもぞりと寝床の中で蠢く。
駄目だ!眠れん!
昼近くまで寝床で過ごす私の立場は、人によってはひどく羨ましいものだろう。
日の登りきらないこんな早朝から起き出して働く下働きの者達からしたら、絹の敷布の上で過ごすなど夢のように幸せな時間だろう。
でも私にとってはとても嫌な時間だ。
やりたい事が一杯有るのに、やるべき事だって有るのに私は布の檻に閉じ込められる。
一国の姫たる私は下々の者達のように早起きしてはいけないのだ。
別に早起きしたからと誰かに叱責されるわけでは無い。
だが[起床した姫君]をほったらかしにした侍女達は確実に咎められる。
身繕いを手伝い、朝食を用意して、退屈させないよう心配りetc.山積みの仕事を放り出して私の世話を焼かせるのは気の毒過ぎる。




