かき氷
かき氷を口にしながら彼女の背中を眺める。夏祭りの田舎道、虫の声だけが響き渡っていた。
片手には帰り際に買ったハワイアンブルーのかき氷。好きじゃないが時間稼ぎに仕方なく買ってしまった。煌々と燃えるコンビニの光、彼女との時間は彼女の一歩に削られていく。
「靴紐、解けてるよ」
彼女はぼくのかき氷をとる。ぼくはそのまましゃがみ込んで紐を結ぶ。
ありがとう、お礼に一口どう?なんていってしまいたかった。でも出来なかった。かき氷のシロップは色が違うだけらしい。並んでいるときにそう教えてくれた。
何ごともなくコンビニまで着いてしまう。看板の明かりでやっと彼女の顔が鮮明におがめる。
「かき氷、ごちそうさま」
彼女はちろりと青い舌を出す。そしてそのまま踵を返して暗闇に消えていく。
ぼくはただ呆然とそれを見届ける。振り返らないか期待して。
彼女の姿が完全に消えて、ぼくはやっとかき氷を口にする。
イチゴの味が口に広がった。




